ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのレビュー・感想・評価
全68件中、1~20件目を表示
やがて血に染まる
映画タイトル自体が旧約聖書の出エジプト記に出てくる「やがて血に染まる」の意味であり、それが何とも示唆に富んでいる。
本作が製作されたのが2007年、それまでにアメリカは世界の、特に中東の石油利権確保のためにきな臭いことを行ってきた。
イランの石油利権を狙いCIAを使って傀儡政権のパーレビ朝を樹立させてコントロールしようとしたがイスラム革命が起きて失敗、その後の湾岸戦争でもあえてイラクのクェート侵攻を黙認して頃合いを見計らい攻撃して中東における石油利権の主導権を握ろうとした。また2003年の大量破壊兵器というでっち上げによるイラク侵攻もその石油利権を目的としたものだったと言われている。
常に世界の石油利権を狙って来たアメリカのその姿は本作の主人公ダニエルの姿と被る。彼もまた他人の土地から所有者たちをうまく騙しては根こそぎ石油を奪い取り富を築いていった。
ダニエルの石油掘削事業は20世紀初頭のオイルラッシュに行われたものだが、その後のアメリカは国内の石油だけに飽き足らず世界の石油利権確保に向けた戦略を積み重ねていく。
ダニエルは彼の事業によりあたかもその土地に暮らす人々の生活が潤うかのような宣伝文句を並べたてる。
井戸を掘ることで麦を育ててパンをみんなが食べられるようにしよう。子供のために学校も作ろう。自分の石油事業で土地の住人達もさぞ潤うかのように話をするがその後村人たちがその恩恵を受けた様子は見られない。
これもアメリカがイスラム圏の国々を世俗化して操ろうとしてきた手口だ。民主化という飴をぶら下げて独裁政権を崩壊させるが、その後のアフガンやイラクはまさにパンドラの箱を開けてしまったかのような混迷ぶりで、結局米軍は撤退を余儀なくされる。
アメリカが民主主義のための戦いと銘打って行われた戦争で住人たちの多くが命を失われ生活を奪われた。まさにアメリカの行くところすべてが血に染まった。
かたや、怪しい説教で村人を操る牧師のイーライもダニエルと同じだった。彼にはアイデアや金はないが権威でもって人々を操った。
ダニエルが自分の事業のためにイーライと手を組む場面がある。いやいやながらも彼の宗教の洗礼を受けてパイプラインのための土地を借りることに成功する。それはあたかもアメリカの資本主義と宗教の権威が結びついて国を支配しているさまを表しているかのようだ。
イーライも牧師でありながら欲にくらみ投資に手を出すが世界恐慌のあおりを受けて失敗し破滅する。ダニエルに泣きつくが、息子からも見捨てられて孤独の中で酒におぼれていたダニエルに殺されてしまう。似た者同士の二人はともに血に染まり破滅的な結末を迎える。
自国優先の利益優先の腐敗した資本主義社会のアメリカを象徴するダニエル、かたや怪しい説教で人心を操り自らの欲望をかなえようとしたイーライ。二人のその姿はともに今のアメリカの姿を象徴した姿だと言える。
イーライはキリスト教原理主義者を彷彿とさせるし、息をするように噓をつくダニエルの姿は現在のアメリカ大統領の誰かさんそっくりだ。富だけを追い求め、結局家族への愛も抱けず孤独の中破滅に向かうダニエルのその姿はまさに誰かさんの今後の行く末を暗示してるかのようだ。
当時は出馬の意思さえ表明してなかった誰かさんのことをここまで予測して本作を製作したポール・トーマス・アンダーソンの先見の明には驚かされる。
とても見ごたえがある大作だった。そしてやはりポール・ダノは裏切らない。
劇場で観たかったです。。。
権力好き?
ずっと気になっていたが158分と長いので中々見る機会がなかった映画。
名前やジャケ写的に戦争のお話かと思っていた。
石油の話であまり序盤に惹き込まれなかったため、集中できずよく分からないまま終わってしまった、、。
義理の息子ってことも、弟との関係もよく分からず大事なとこが楽しめなかった。
ポール・ダノはイロモノやキワモノ役が似合う。今回も似合ってた。
ラストのポール・ダノとダニエルの争いだけ楽しめた。
たぶん私の好きそうな部類のストーリーだから、ちゃんと見たら楽しいと思うかも。気が向いたらまた見よっかな、、
「家族経営」を掲げるダニエルの孤独
ダニエル・デイ=ルイスがとにかく凄く、女性が一切関わらない設定に監督の意図を感じました。音楽とてもよかったです。ポール・ダノ、20代半ばで既に素晴らしかったです。内容は重くて辛くて悲しかったです。
一匹狼で銀を採掘していたのを仲間と共同の原油採掘に変えてからのダニエルの働きぶりは見事だった。勘の良さ、頑強な身体と体で覚えた技術、リーダーシップ、相手を見抜く眼力、謙遜しながら実はとても巧みな詐欺的話術。彼は能力と野心の両方、本来の意味でも比喩的意味でも真の山師の才覚を与えられた人間だ。本人も言っているように自ら採掘するから凄いのだ、地面師よりも!「家族、子ども」「(カルトであれ)信仰」「お金、投機、土地」、これらは「アメリカ合衆国」にとって欠かせない要素だろう。それぞれを上手く利用してのし上がっていくダニエル。H.W.は父の「腹違いの弟」であるヘンリーの日記を読んで何かを感じたから火をつけたんだろう、「父」を守るため、または取り戻すために。結婚したH.W.が妻とメキシコへ行く、これはダニエルにとっては聞きたくないことだった。自分から離れる?自分と同じ仕事をする?もう全部言ってやる!その合間に映る幼く可愛らしいH.W.と若いダニエルの微笑ましいシーンが胸に痛かった。
最後は胡散臭い者同士の対決。ダニエルが落とし前をつける、自分が教会でやられたのと同じやり方で。ボウリング場が2レーンもある豪邸の中で酒に溺れる彼の孤独はこれ以上ないほど深く深く、水も油も血もあるものか。後からこの映画を思い出すたび悲しくなる。
おまけ(2024.10.2.)
たった一人のダニエル祭り。5本目の上記映画を見て3日後の今日:ダニエル・デイ=ルイスが俳優として銀幕復帰というニュース!夢のよう💕
ごめんなさい 好みではない
骨太濃厚オヤジオヤジ系マシマシ作品
主人公と結婚したいよ
欲望にまみれた男の人生??私には、ダニエルは最期までまともな、普通の父親に見えたよ。自分の息子が好き過ぎて、自分の息子を信奉し過ぎて。だから息子以外の他人は死のうがクソどうでもいいってだけで。最期に、幸せになった息子をわざと突き放してから 陰で別離の寂しさに苦しむ彼を見て自分は泣きじゃくったよ。ダニエルは、ごく普通の父親。
アメリカの血(家族・oil・宗教)の物語
世界最高の演技‼️
やがて血が流れる
何を狂信するか
エンドロールに、ロバートアルトマンに捧ぐ
また、carbon neutral production
100% carbon emission offset とある。2007年の作品、ガツガツとアメリカが石油採掘しいまもと栄えるオイル大企業が自然破壊、人権侵害しながら大儲けしていく時代をゴリゴリに描いた作品ならでは、というアンダーソン作品。
やはり一人一人のキャラクターが突き出ていてよい。
石油掘削により得ることができる利益か
親族か
または疑似親族か
腹心の仕事仲間か
神か
神に帰依するフリの自分か
なにを狂信して拠り所にして罪を重ねていくのか。人は生きる中で罪を犯し重ね反省し赦しをこいたりさらに罪を重ねていくよ。
アンダーソン監督=この後の作品だがザマスターということが頭によぎり、サイコパスのようなダニエルとイーライの闘いがすごいのだが、結局石油、金儲け、今のアメリカ的資本主義の型についてより、宗教神の啓示と自分の関係、宗教への盲信と二世問題、詳しいことは言わずわずかな情報料を現金でせしめたポールは宗教二世というか家庭内宗教盲信活動が逃れるためわずかな金を逃走資金としてせしめたのではないか。ダニエルとイーライの讒言対決。
hwという子どもをめぐる葛藤。
なんでも自分独り占め誰も信じないダニエル、最後の自宅のボーリングレーンでの顔芸、、、なかなかすごい迫力と、クソぶり。
長いのですが、人のダメなところをこれでもかと見せてくれる、そしてhwが小さな時も大人になっても、間違いというときには強大なダニエルに立ち向かい殴りかかる様が、人間の良いところを思い出させてくれる。
【狂的山師の実態が暴かれる時・・。】
■20世紀初頭のアメリカ。
石油発掘による一攫千金を狙うダニエル・プレインヴュー(ダニエル・デイ・ルイス)は、様々な手段を講じて、莫大な油田を掘り当て、富と権力を手にする。
しかし、油田の大事故で見せかけの息子が聴力を失ったことをきっかけに、プレインヴューは自ら周囲との関係を閉ざし孤立していく。
<感想>
・虚業と言ってもよいダニエル・プレインヴューの、手段無き富を得るための行動。血のつながりもない子供を息子と称して使う様。
・それを怪しんだイーライ牧師(ポール・ダノ)へのダニエル・プレインヴューへの容赦行為。
ー そして、呟く”全ては終わった‥”と言う言葉。
<狂人的石油王を演じたダニエル・デイ=ルイスはアカデミー賞主演男優賞を受賞。不安感を煽る独特な音楽を手掛けたのはレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドで、この後もこのタッグは続くのであるが、今作の音楽及びダニエル・デイ=ルイスの怪演は、心に残る。>
面倒くさいオヤジの意味不明な長〜い映画
i'm finished。ズーンと響く。
傾斜掘さっーーーーく!!!!!!!!
ダニエル・デイ・ルイス
世界観が分からなかった
全編通して、高尚過ぎるのか、伝わらず。長い割に史実でもないし、エンタメ性もない。主人公は金のために石油を掘るが愛する妻や家族がいるわけでもなく、金を得て、何がしたいのだろう。ただ単に、相手を打ち負かす、平伏させることに執念を燃やすが、結局何がしたいのだろうか分からず、全く共感はできない。ポール・ダノは不気味さが際立つ。苦手な映画でした。
全68件中、1~20件目を表示