その名にちなんで : 映画評論・批評
2007年12月18日更新
2007年12月22日よりシャンテシネほかにてロードショー
自分の名前にまつわる物語、知っていますか?
アメリカに移住したインド人家族の30年にも渡る軌跡を描くジュンパ・ラヒリのベストセラー小説をミラ・ナイール監督が映画化した人間ドラマだ。
カルチャー・ギャップに直面しながらも家族を培っていく移民夫妻と彼らのアメリカナイズされた子供たちが恋愛や結婚、親子喧嘩、家族の死などの局面を乗り越えながら、家族の絆を徐々に堅固にしていく過程は普遍的で、見る側の共感を呼び覚ます。特に心惹かれるのは、ロシア人名を持つインド系アメリカ人である息子ゴーゴリ。文化や人種の葛藤を象徴する彼が忌み嫌う名前に隠された両親の夢と希望を知ったとき、さまざまな思いにとらわれる様が切なくも美しい。住む国や文化が変わろうとも親子の絆は決して切れることのない人生の重しのようなものと勇気にも似た気持ちも湧いてくる。映画の後、ご両親に自分の名前にまつわる物語を問うてみるのもいいかもしれない。
ところで、ここ数年の子供の名前ランキングには「さくら、真央、蓮、大輝、美咲」などスポーツ選手や芸能人、漫画の主人公にちなんだ名前がズラリ。命名理由も「ファンだった」や「かっこいいから」という程度で、もの心ついた子供のがっかりも確実と思われる。名前にまつわる物語が人生を左右することもあるのだから、ノリや流行に惑わされない、たっぷりの愛情が伝わる命名をママ予備軍には心してもらいたいもの。
(山縣みどり)