「ビートルズはキリストより人気がある」という’66年のキリスト発言の波紋は大きく、いきなりアメリカでのビートルズ排斥・不買運動・・・思いっきりレコードを割っているショッキングな映像。そして’69年のベッドインへと映画は進む。このアムステルダムのベッドインの写真は何度も見たことあるけど、ジョン・レノンがビートルズに見切りをつけ、オノ・ヨーコとの愛に走ってしまったものだと、幼い頃思っていた・・・
正直なところ、ビートルズについては音楽についてしか知らなかった。もちろんジョンが平和活動をしていたという漠然とした認識はあったのですが、この映画を見るまではそれほど偉大なほどの活動だったとは思いませんでした。70年前後にベトナム戦争反対の気運が高まっていたこともあり、そうした若者たちの流れに乗ったいたという程度の知識しか・・・
キング牧師暗殺、ブラックパンサー党、ジョン・シンクレア事件、そしてベトナム戦争泥沼化。腐りきったニクソン政権によるアメリカ帝国主義。そんなアメリカへ乗り込んで、ガンジーのように非暴力による反戦運動、世界平和への願い、そして革命。ジョンの夢はニクソンの脅威となり、やがてFBIからも徹底的にマークされるようになった。そして国外退去命令・・・それでもアメリカ永住権を得ようと奮闘するのです。
知られざるジョン・レノンの生き方。彼の呼びかけによってシンクレアは釈放されたし、反戦運動のおかげでベトナム兵やアメリカ兵だって多くが生き延びることができたように思う。そして、ジョンの平和への訴えは21世紀になっても人々の心に残る。「WAR IS OVER! IF YOU WANT IT」という言葉や名曲「イマジン」はベトナム戦争時だけではなく、世界遺産にしてもいいくらいだ。また、映画の編集も絶妙であり、ニクソン辞任もジョンが直接の原因だったように描かれているが、さすがにこれは違うだろう・・・遠因のひとつだとは思いますが、これもジョークなのかもしれません。
ピースサインはもともとはVサインとして使われていたのが60年代から平和のサインになったようです。もしかしたらジョン・レノンが最初だったのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。だけど、その指の間に葉巻を置く奴なんて許せませんよね。こうして、映画の出演者にはジョンのシンパじゃない人もいて、なかなか面白かったのですが、ノーム・チョムスキーまで登場したのには驚きでした。
’80年12月8日。ジョンが凶弾によって倒れた日には泣かなかったのに、映画では改めて彼が身近に感じられ、胸が苦しくなってしまいました。日本での公開初日が12月8日だというから、初日に観た人は大いに泣けただろうなぁ・・・