「部分的にある名シーンをことごとく殺す展開」デトロイト・メタル・シティ といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
部分的にある名シーンをことごとく殺す展開
部分的には本当に良かったんですよ。
自分の望む音楽ができずデスメタルをやらざるを得ない主人公の根岸が加藤ローサ演じる相川に遊園地で批難され「僕だってこんな音楽やりたいわけじゃないんだ…」とこぼれるように吐露したシーンは、理想と現実の狭間で葛藤する根岸に思わず感情移入してしまってとても感動しました。
しかしですね、この映画は感動的シーンの後にその感動を殺してしまうような展開が待ってる映画なんですよね。
デスメタルを毛嫌いしていた相川がステージ上で戦うクラウザー(根岸)を見てDMCのライブに魅せられていき、また自分の望む音楽と違うからとデスメタルを毛嫌いしていた根岸はデスメタルに自分の居場所を見つけるシーン。このシーンは普通に感動的です。世界的デスメタルアーティストのジャックからギターを引き継がれ、いよいよDMCのライブシーン……と思いきや根岸は下手くそなラブソングを披露する。興醒めですし、意味がわかりません。さっき「デスメタルに自分の居場所を見つける」って言ったけど、俺の勘違いでしたか。
その後、DMCの大迫力のライブが始まって大盛り上がり。そのまま映画が終われば綺麗な終わり方なのに、相川がステージ上に乱入し、「根岸くんでしょ?」と声を掛けてエンドロール。意味がわかりません。あれなんなんですか。もしも相川のキャラクターが音楽に興味のない天然系の女の子という設定であるならば百歩譲って分かりますが、相川は音楽系雑誌のライターですよね?ライブ中にステージに上がるなんて、アーティストにとっては御法度でしょ。なんであんなことをしたのかという説明が何もありません。
随所で「意味不明」「理解不能」という展開が続き、それがコメディとして機能しているならば良いのですが全く笑えないので正直見るに堪えません。
最後まで見るのがこんなに辛い映画は久々です。全体的なストーリーが非常に良いこともあって、この出来の悪さは本当に残念でなりません。