サラエボの花 : 映画評論・批評

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サラエボの花

劇場公開日 2007年12月1日
2007年11月27日更新 2007年12月1日より岩波ホールにてロードショー

静かな迫力みなぎる語り口で綴る、怒れる娘と傷だらけの母の思い

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ボスニア紛争が終結して10年余りが経っても、市民の心の傷は未だ癒えていない。同テーマの近作「あなたになら言える秘密のこと」は独りぼっちで生きる若い女性の物語だったが、この映画の主人公エスマは12歳の娘を持つシングルマザーだ。ちょっと勘のいい人ならば、娘の父親に関するエスマの秘密が何であるかは序盤のうちに察しがつく。しかし、いくら話が読めたとしても、戦争被害者の傷痕の深さまでは推し量れない。この映画はその痛みを圧倒的な説得力をもって観る者に伝えてくる。

とはいえ物語は復興が進む現代のサラエボの街なかのみで展開し、悲惨な紛争の回想シーンは一切ない。ナイトクラブで働きながら必死に生きるエスマの日常を丹念に描き、普通の生活を維持することの厳しさを表現していく。1974年生まれの女性監督の慎ましくも粘り強く、静かな迫力みなぎる語り口。エスマとクラブの用心棒との異性関係や、娘の修学旅行費をめぐるトラブルなど、ひとつひとつの逸話に重い意味と感情がこもっている。

そして娘サラに扮したルナ・ミヨビッチという子役の素晴らしさはどうだ。このふてぶてしい態度を連発して母を困らせる生意気娘の表情、そして一挙一動が実にスリリングなのだ。怒れる娘と傷だらけの母の思いが通じ合うラスト・シーンを、しっかりと見届けてほしい。これを奇跡と言わずにいられようか!

高橋諭治

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