劇場公開日 2008年4月18日

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大いなる陰謀 : 映画評論・批評

2008年4月15日更新

2008年4月18日より日劇1ほかにてロードショー

ウザイ説教と取るか、触発され何かを決断するかは、あなた次第

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なぜ世界は変わらないのか。なぜ戦争はなくならないのか。本作の脚本は、戦争をめぐる「構造」を炙り出す。憎悪の連鎖や利権争いといった大局的な視点ではない。大衆に迎合するメディアが声を大にして言わないこと。それは、戦争という“スキーム”に、メディアや知識人の無力、庶民の無関心が貢献しているという事実だ。

野心に満ちた政治家×TVジャーナリスト、軍に志願した若者×大学教授、優秀だが怠惰な大学生×大学教授という3つのセリフの応酬を通し、いまだ大義なき戦いが継続する国の実態が見えてくる。メディアと教育機関は、まさに庶民と政治の中間地点にいて、情報と知識を授ける場だ。かつては理想を抱いていたであろう記者(メリル・ストリープ)と教授(ロバート・レッドフォード)は、諦観の日々を送っている。くすぶり続ける変革の志を胸に、教授は未来を担う若者たちの啓発に懸け、記者は共和党の次期リーダーがアフガンで仕掛ける作戦のリークに乗せられまいと抗う。しかし、意義深い青春を送ろうとした教授の教え子は戦場に派遣され、資本主義に蝕まれ堕ちたメディアを前にして記者の意志は貫きがたい。

これは、怠惰な学生、いや無関心なすべての大衆に向けられた起爆装置だ。自由と正義の大義に騙されるな、犬死にするな、起て! このままじゃいけないという切迫感みなぎる監督レッドフォードの眼差しは、世界を変える者たちの出現をあきらめていない。本作をウザイ説教と取るか、触発され何かを決断するか、あなたの意識が問われている。

清水節

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