「完璧というほかない総合芸術」ブレードランナー ファイナル・カット 広谷賢次さんの映画レビュー(感想・評価)
完璧というほかない総合芸術
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内容は92年の「最終版」とほとんど変わらないが、細かい映像処理や数カットの挿入を施して完璧な形になった。特に注目してもらいたいのは、ロイ・バッティ(ルトガー・ハウアー)が果てた後に、鳩が空に飛び立つワンカット。あそこは「最終版」でも空が晴れていたために違和感があったが、ファイナルカットで完全に払拭された。
監督のリドリー・スコットが目指した「21世紀のフィルム・ノワール」に古典ホラーの「フランケンシュタイン」を絡ませて、「人はどこから来て、どこに行くのか」「魂とはどこに宿るのか」という哲学的な疑問を浮かび上がらせる脚本は見事。一流の美術、音楽、撮影、演技が無駄なく作品のなかに溶け込んでおり、「映画は総合芸術」ということを思い起こさせてくれる。それにしてもハリソン・フォードは「逃げる」姿がよく似合う。
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