アメリカン・ギャングスターのレビュー・感想・評価
全14件を表示
トニー・モンタナをデンゼルが演じたら、みんな「優しい」って言うのだろうか
リドリー・スコットが、弟トニーの盟友デンゼルを起用し、今ではすっかり、うんざりが始まりつつあったラッセル・クロウとの組み合わせで実現した、初の正統ギャング映画。
が、その豪華キャストおよびスタッフにもかかわらず、ギャング映画史にその名を残す作品となっているか、と言われるとそうでもない、非常に影の薄い作品。
本作、実話ゆえ、とんでもない密輸ルートを平気でネタバレする宣伝と評論、レビュー、そして本作の純度100%の麻薬の「入れ物」をきちんと描くことに遠慮があり、ストーリー的にも、絵的にも燃えるものがないのだ。
リドリーはなぜか好んで、ネタの割れている歴史ものや現代史を扱うが、映画的なカタルシスを一方で失って、どうもお手軽な映像化、凝るのは絵画的な映像のみ、という印象が拭えない。
ギャング映画という点では、言うまでもなくスコセッシの「グッド・フェローズ」にそっくりで、よせばいいのに、音楽の使い方までそっくり。
もっと言うと、マイケル・チミノの「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」にも。(ルメットの「プリンス・オブ・シティ」なども)
本作の最も他の作品群と差別化をしなければいけないのが、黒人による、自虐商売を、という黒人映画である、という点であるはず。
主人公フランク・ルーカスのやってることは、事業家、というより、黒人が、他人種に搾取されるぐらいなら、他人種に子供をヤク漬けにされるくらいなら、オレがやったるわ、という風にしか見えず、同種の商売仲間や商売敵にも徹底して冷酷。
おまけに、自分の身近の若者が、金が無いため出征し、死んでもつれて帰る誠意に付け込んでの麻薬ルートである。
単なる極悪人じゃねえか。頭が極悪に切れる黒人、ということ。
それをデンゼルが演じる、ということで「優しい」という、その見方になる人が多い。
しかし、その所業をみれば、その意見がどこから来るのか、さっぱりわからない。
母親すらすっかり騙されかかる、その笑顔。本作の極悪デンゼルの名演こそ、ここにある。本作の最大の欠点は、それなのにその「笑顔」を観客に誤解されている、という点。
ダメないとこや、ジュッシュ・ブローリン、アーマンド・アサンテなど、キャラ的にずいぶん面白いのがいるが、クロウのほうが大して面白くないのに長くなっているせいで、全体的に、やっぱおもろない、という結論。
これがほぼ実話とは
警察の汚職が酷すぎる。アメリカ ニューヨーク警察。それに軍が麻薬輸送していたとは滅茶苦茶な歴史、アメリカって一体・・・。前半はそういう嫌な事実を見せながら淡々と進み、退屈。徐々にアンタッチャブルのような展開で面白くはなったが、最終的には善悪協調。汚職警察が全面的に悪かったような見せ方。
デンゼル・ワシントンとラッセル・クロウが、司法取引のため対峙する時の対話が双方負けまいと強権的な会話をするところが面白かった。感情的にならず、「俺をやっつけたいなら列に並べ、順番待ちだ」なんてなかなかカッコいいセリフ。
ラッセル・クロウ演じる捜査官が足がつかない大金をネコババせずに警察に提出したことが、信じられない行動として繰り返し語られる・・・全く正しい行動なのにあまりにしつこくて逆に間違った行動みたいに見えてくる。倫理感の乏しい人が影響されなければいいが。
その真っ正直な捜査官が、女性にはだらしないとは・・・これも事実なのか?。
アメリカのスケールのデカさ
ベトナム戦争展開したスケールのデカさそのままに、
すべてがでかい。半端ない。
裏社会を仕切りながらハーレムコミュニティを守り助けたり、でかい米軍輸送機でブツを定期的に運んだり、デンゼル演じる麻薬王紳士と女癖も酒癖と悪そうだが警察官としては馬鹿正直なラッセル、が話の軸だが、
ベトナム戦争を背景に70年頃の世相をそのまま反映し、同じ悪さをしていても人種の序列があり古い考え方が蔓延り結果としてデンゼル演じるフランクの命取りとなるきっかけとなった妻はプエルトリコ人、細部にわたりいろいろな事を考えさせられる。リドリースコット監督の力技に脱帽しキャストも迫力あり、最後腐敗した警察逮捕というなんでもありの中でも思い出したように時々民主主義と正義が復活するアメリカ、日本にはない現象しか孫のスケール。johnQ を見た時同様圧倒的な他の国の追随を許さないアメリカのいろんな意味でのデカさ強さを思いしる。
教会を出たところで逮捕されるとき流れるAmazingGrace はミスマッチでなにかamazingでGraceなのかわからなかったがラスト刑期を終え出獄するデンゼルのバックに流れるパブリックエネミーはバッチリはまってかっこよい。善悪の問題とか品位の問題とかがやや単純にわかりやすくされすぎ感が少し気になるか圧巻圧倒的なアメリカンだった
裏のアメリカンドリーム
汚職が当たり前だった時代に、マフィアやギャングを敵に回してでも正義を貫くことは並大抵ではない。
正義だけを糧に成功させた稀な話。
理想的だが、ほとんどの人は欲に負けてしまうと思う。自分も含めて(笑)
段々と面白くなる
前半は思った程面白みが無く、「どーしたんだ、リドリー・スコット?」と思っていたら、マフィアの大物の屋敷で半ば見下され、1970年代当時のベトナム戦争を背景に、やがて軍を味方に率いれのし上がって行く。この男の姿を通し、泥沼に嵌って行くアメリカ国内の無力感を浮き上がらせて段々面白くなって来る。
「マフィアが100年かかって出来無かったのに、黒人に出来る訳ない。」と言わせ、当時の差別意識が殊更強かった事も伺えます。
「目立つな!」と弟達に言い聞かせていたのに、自らの小さな過ちからその存在が捜査線上に浮き上がってしまい、自分自身に怒りながら毛○のコートを焼く辺りから映画全体が、うねりを持って走りだす。そこまで待てない人には若干苦しい部分もありますね。
街中や、パーティー中でいきなり拳銃をぶっ放したりと、慎重なのに切れやすい性格を演じるデンゼル・ワシントンのキャラクターにはそれなりの説得力があります。対するラッセル・クロウは時には卑屈になる面もあるのに、芯の部分では絶対に曲げない性格。前半と後半で性格がやや変わっている感じになっているのは多少違和感を感じました。
リドリー・スコットの演出は、何となくシドニー・ルメットの『Q&A』辺りを意識している様に感じましたが果たしてどうなんでしょう?
どうでも良いのですが、最後のワンカットは要らないなぁ。
(2008年2月12日 日劇1)
悪役だが一流実業家の顔をもつ主人公
総合:80点
ストーリー:85
キャスト:80
演出:80
ビジュアル:75
音楽:65
「トレーニング デイ」で見た目も行動もかなりの悪役を演じていたデンゼル・ワシントンであるが、今回は悪役と言いつつもいつも通りの颯爽とした役回り。彼のやったことは、自ら危険を冒して未知の地に乗り込んで複雑な流通経路を省いた製造元直接仕入れ体制を確立して製品原価を下げ、高品質の製品にブランドをつけて販売し、自分のブランド価値を破壊するものを除去する。より良い物をより安く提供し、顧客と自分との両者の間に相互勝利の関係を築き繁栄する。そして仕事を離れれば良き家庭人。扱っている物が麻薬であるというだけで、やっていることは一流実業家そのものである。彼のやったことと、のし上がっていけた理由がとてもわかりやすくて、犯罪者といえども彼の行動と性格と能力には思わず共感してしまう人物であった。
ラッセル・クロウの清廉な刑事役もいい。腐敗が当たり前となっている警察内において、その信念を貫き通すことは困難なこと。ワシントンと対決し調査を続け彼を逮捕することも面白かったのだ。だがそれのみならず、その後に彼の本当の目的とそれに対するしっかりとした実績が出てきたのもすっきりとした。ワシントンほどには目立たない存在ではあったが、最後のこの身内の腐敗一掃によって拍手喝采で、私の中ではここで彼の役回りの評価が上がった。
二時間半を超える大作らしいが、テレビ版で見るとわずか2時間17分、しかもコマーシャルつき。相当に切られた場面があるようで、これでは作品を堪能したとは言い難い。いずれ機会があればレンタルか何かでノーカット版を見てみようと思う。
人間の善悪とは
映像や音楽がとてもスタイリッシュでスリリング。2時間半という長さを全く感じさせなかった。
悪人であるはずのギャングが一方では家族思いで貧しい人々を救ったりもし、また逆に正義であるはずの警察が汚職をしているという、人間の善悪の曖昧さ・矛盾を描き出して見せていた。クリーンなイメージのデンゼル・ワシントンがスラムの麻薬王役、やんちゃなイメージのラッセル・クロウが正義感の強い刑事役というギャップもまたそれを効果的に見せていたと思う。
フランクが麻薬王となるに至る過去の生い立ちの部分を省略しているのと、彼の兄弟や従兄弟たちの顔の区別がつきにくいのが難点。
人は認め合うことでしか救われない
成功の頂点で去るのは逃げではない」
終盤、サラッと過ぎていったセリフが
なぜだか、一番心に残った・・・。
「実話」だとの情報だけを仕入れ
劇場を訪れた。2時間30分を超える
大作で、集中力が持つか心配していたが、
中盤から終盤にかけては、スクリーンに
釘付けになってしまった。逆に、前半は
もう少しカットしてもよかった気がした。
「正義、正直さ」
麻薬密売人のモノ、
あまい蜜をかすめる刑事のモノ、
そして、麻薬密売人を追い詰める刑事のモノ。
各々に、己の価値観を持ち、己を正当化する。
それは、まるで掛け違えたボタンのように。
ラスト、
「お前がイタリアマフィアを認めないように、
俺もニューヨーク警察を認めない」
ボタンは、寸分なくはまり、
各々の「正義、正直さ」も合わさりあう。
クライマックスでは、
前半に蒔いていたネタが、
なるほどね~、との形で、結実します。
まるで、実話とは思えないほど、見事に。
「正義、正直さ」
時に、軽んじられるフレーズについて
考えさせられると同時に、心洗われた2時間40分でした。
銃殺、ヌードシーンの関係で、
R15になっているのでしょうが、
そんなに惨くはありません。いい作品をありがとうございました(笑顔)
ギャングの品格。
リドリー師匠の描く、ギャング映画。と聞けば、
なんだか独特な映像美に溢れたスタイリッシュなドンパチを
連想したくなるモンですが、とっても地味で品がありました。
副題として「ギャングの品格。」なんてつけたいくらい(爆)
実話がベースとなったドラマを、じっくり堪能できるので、
派手なアクションや虐殺シーンがほとんどなくても楽しめます。
実際のギャング(アメリカンなんてつくとすごく派手に思うが)
って、こんな感じだったんじゃないのかな。
もともとハーレムを牛耳っていたボスの運転手だった主人公。
そのボスの生きざまを通して学んだことを、金儲けに使ったと
いう話ですが、なにしろ頭がいいので捜査線上に浮かんでこない。
…まさか、黒人にそんなことが!?というレベルでしょうかね。
ハーレムの貧民も抱き込んで、まんまと麻薬王まで上り詰める。
で、もう一人の主人公・刑事なんですが、小汚い風貌と私生活^^;
のワリにものすごい正義感!?に溢れたヒトで、そのうえ努力家。
黙々と司法試験を受けるための勉強に励んでいたりします。
腐敗した警察内部を、ある一件で一斉に敵に回してしまった彼は、
薬漬けの相棒にも去られ、やったるで!と黒幕逮捕に燃え始める。
この二人が早々に絡むのか…と思ったら大間違いで(汗)
後半の後半、ほんとにものすごく後半戦で^^;一気に共演します。
だってデンゼルが頭いいもんだから(汗)まったく尻尾を出さず、
(ホントこれを見ていると、ハリウッドがすごくまぬけに見える)
人間、規則正しく地味に生活するのが一番!健康には早起きさ!
なんて思っちゃいますね。なんでギャング映画が健康推進を…?
いやしかし…。教えられるところがたくさんありました。
ファミリーファミリーというけれど、身内を大切にあつかう反面、
礼を軽んじる他人は平気で街中で撃ち殺す。怒鳴る。殴る。蹴る。
普段おとなしい人間ほどキレると怖い!といいますが、
デンゼルがやるとこれまたすごーく怖い(T_T)奥さんもビビるわぁ。
上り詰めた人間には恨みも多く、上手くいっていた密輸も戦争が
終結に向かうにつれ順調にいかなくなってくる。
そのあたりでそろそろ尻尾を掴み始めていたラッセル軍団(爆)に、
徐々に徐々に追い詰められていくデンゼル…。
すごく面白かったのは「地味」をモットーに掲げていた彼が、
唯一初めて大衆の面前で「派手」なコートを着てしまったこと!!
あれはどう見ても目立つわー。だってハリウッド万歳!柄ですもん。
ともあれ。。
後半、やっと二人が絡む法廷&取調室のシーン。
たったあれだけの絡み(本編に対しての)でも観応えが十分!あって
余裕綽々のデンゼルの笑みが一瞬にして変わるところ、
ラッセルが掲げていた目論見が実はなんだったか、それが判明し、
のちに警察官一斉検挙…に進むあたりでは笑みがこぼれてしまった。
もちろん賛否が分かれると思いますけどね~あのラスト。でも事実。
すべての正義が為される場所など、どこにもなかったってことか…。
完全無欠の人間がいないのと同じ…?
なんか自分の人生を見ているようですわ(^^ゞ
(正義は為されずとも大義は果たした師匠!映画界の黒幕は誰?^^;)
starじゃないのsterなの
2時間40分という長さに苦痛を感じさせない映画です。
1970年代初期のニューヨークの実在した人物のお話です。
ハーレムを仕切るギャングのボスに15年間仕えてきた運転手のフランク・ルーカス(デンゼル・ワシントン)は、ボス亡き後、誰かに使われる人生から抜け出すことを誓い、一匹狼として生きることを決意する。
ベトナム戦争の軍用機を利用して東南アジアの麻薬を密輸するという麻薬の新しいビジネス・モデルを築き上げることで暗黒街のアメリカン・ドリームを達成していく。
また、ニュージャージーの警察に所属する刑事リッチー・ロバーツ(ラッセル・クロウ)は腐敗がはびこる警察内で、孤立しながらも麻薬ルートの解明に乗り出す。
ニューヨークを中心に広がりをみせる“ブルー・マジック”という純度100%のヘロインのルートを追うのだが、なかなか新しい麻薬ルートの正体を掴む事が出来ず、更にニューヨークを仕切る悪徳刑事トルーポ(ジョシュ・ブローリン)に邪魔をされてしまう。
成功し、美女を妻にし、ファミリーを向かい入れるフランクだったが、フランク・ルーカスにも圧力を加える悪徳刑事トルーポ、他にもフランクの利権に群がる悪者達、、、命を狙う者達、、、、
ほんの気の緩みからリッチー・ロバーツ刑事に正体を掴まれるフランク、、、
そしてベトナム戦争の終結と共に、ヘロインの仕入ルートを失ってしまう、、、
焦るフランク、追いつめるリッチー、、、、
アカデミー賞候補という噂に納得の秀作でした。
フランク・ルーカス(デンゼル・ワシントン)の成功に伴う、緻密さ、優しさ、非情さ、行動力など、見応えのある内容と演技力でした。
なんだか久々に、しっかりとしたアメリカ映画を観たような気がします。
麻薬王と刑事の両方をしっかり描く為には、2時間40分という時間が必要だったのでしょう。
実話をベースにしているので、終わり方にちょっと不満は残りましたw( ̄▽ ̄;)w
映画として、あの終わり方は物足りない、、、、それまでがスリリングだっただけにね♪♪
実際の話としても、良いのかあれで!
麻薬王だぞ、殺人者なんだぞ!
まったくアメリカって国には、驚かされますね〜Y(≧σ≦)Y!!
ちなみに、「アメリカンギャングスター」のスターはstarではありません。
「American Gangster」が原題です。
つまりsterなんです。
「アメリカのギャングの一員」であって「ギャングのスター」ではないのですね(≧◯≦)ゞ
小悪党の吊し上げで満足してちゃいかんです
興味深い題材を娯楽色豊かに堅実に映画化している。それだけでも十分楽しめる。ラッセル・クロウ扮するリッチー・ロバーツという刑事の人物像も面白い。
惜しむらくはデンゼルの役作りが単調でフランク・ルーカスという人物の特異性が出せなかったこと。ここでのルーカスは他の映画でよく見るようなクレヴァーな犯罪者像の域を全く出ていない。
また、小悪党(悪徳刑事)を吊し上げて観客にカタルシスを与えようとする構成にも疑問が残る。どう考えてもルーカスの麻薬密輸と比べたらケチでチンケな罪だ。こんなすり替えでルーカスを少しでも良い方に見せようなんて所詮はカタにはまった娯楽作か。
撮影や美術にも物足りなさを感じた。
貫禄たっぷり
2大オスカー俳優が激突!…といっても意外と2人が顔をあわせている場面が少なく、長い時間をかけて2人がやっと初対面!という場面でも、賛美歌が流れる教会で…というわりとベタな演出があっても、あまりカタルシスがなく。ただ、それでもさすがリドリー・スコットにデンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウという組み合わせなだけあって、貫禄たっぷり。2時間半の長丁場ですが、それはあまり気になりませんでした。銃撃戦も迫力満点。
全14件を表示