劇場公開日 2008年2月1日

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「状況が異なれば有能な実業家だったはず」アメリカン・ギャングスター 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0状況が異なれば有能な実業家だったはず

2025年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 ベトナム戦争の状況を利用して麻薬ビジネスで頭角を現したフランクは、単なる悪人ではない。かつてのボスから多くのことを学び、周囲を家族で固め、派手な装いや行動は慎むことで足がつかないようにするといった保身の術も心得ている賢さがある。そしてかつてのボスを超えようとする野望があった。その野望には、まだ公民権運動が結実する前の社会的地位の低い黒人として育ったという劣等感だったり、幼少期に従兄弟が警察に無惨に殺された恨みだったりといった、社会に対する復讐という感情が根底にある。麻薬ビジネスという大仕事を手掛けられるスケールの大きな彼は、状況が異なればギャングではなく表社会で有能な実業家としても成功できたはずだ。そういった複雑な背景を持った彼の人物像は魅力的だった。

 本来正義を執行するべき警察が汚職に染まり腐り切っている。一方でフランクのようなギャングは彼なりのプライドを持って生きていて、ハーレムの治安の維持に貢献している等良い面がある。今作はどちらが正義でどちらが悪なのか、白黒つけない点がリアリティが高く秀逸な映画だった。

根岸 圭一
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