アメリカン・ギャングスター : インタビュー
リドリー・スコット&デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ インタビュー
■デンゼル・ワシントン
「巨匠の仕事ぶりを観察できて、映画学校で学んでいる感じだったよ」
――実際のフランク・ルーカスとはどんなことを話したのですか。
「フランクは撮影現場にいたので、ほとんど毎日顔を合わせ、あらゆることを話し合った。人生について、野球について、子育てについて、もちろんこの映画について。彼が常に僕を先導し、僕が常に質問を投げ掛ける。そして彼は、その質問すべてに答えてくれたんだ」
――70年代のニューヨーク、そしてハーレムはあなた自身、思い出があるのでは?
「僕の母はハーレムの出身だったし、僕が育ったのはニューヨーク・シティだった。確かに今回、この撮影で懐かしい顔と再会するという楽しみもあったけれど、ここで描かれる世界と僕の青春は交わってはいなかった。フランク・ルーカスの存在はこの映画に関わるまでまったく知らなかったんだ」
――映画に夢中の青春だった?
「そうかもしれないね。13歳の夏、夏季キャンプの寸劇で初めて監督をしていたくらいだから(笑)。それ以来、監督をしようなんて一度も考えたことがないのに10年くらい前から気になり始め、今は情熱さえ抱くようになった。だから、ほかの監督がどんなテクニックを使っているか、観察しているんだ」
――スコットのテクニックは役に立った?
「とてもね。リドリーがハーレムの街をもうひとりのキャラクターのように撮っているのは非常に興味深かった。撮影の手順も面白いんだ。彼は最初の8週間をラッセルだけのシーンに費やし、次の8日間で僕とラッセルの共演シーンを撮った。そして最後の8週間で僕のシーンだけを撮影したんだ。これは面白いアプローチだった。ふたりが初めて出会うシーンもそのおかげで新鮮だったし。ふーむ、これはいつか(監督として)使える手だなってね(笑)。巨匠の仕事ぶりを観察出来るわけだから、まるで毎日、映画学校で学んでいる感じだったよ」
■ラッセル・クロウ
「オレが尊敬出来るのは、何かを学べて、自由な考え方をもっている人だね」
――リッチーとフランクが実際、顔を合わせるシーンはわずかながら、とてもパワフルでした。デンゼルとどんな話し合いを?
「いや、それはリドリー(・スコット)の撮り方がよかったんだよ。彼はワンショットにつき多くて3テイクしか撮らない。それは役者の緊張感と新鮮味をキープさせるんだよ。オレがリドリーを好きな理由のひとつもそこにある」
――ほかに好きな理由は?
「リドリーは映画を金のかかるアートだと考え、とても敬意を払っている。オレはそんな彼に敬意を払っている。で、欲しい“空”を撮るためには何度も何日間もかけて撮る。そのこだわりは本当に凄い。オレはそんな彼のために働けることを誇りに思っているんだ」
――リドリーが監督だったからこの仕事を引き受けたの?
「リドリーが『70年代のハーレムで遊びたい』と言っていたというのはもちろんある。もうひとつはデンゼルがフランク・ルーカスを演じたがっていたからだ。オレとデンゼルは12年前『バーチュオシティ』で初めて共演しているんだけど、そのとき彼がスタジオの重役たちにオレを推薦してくれたからあの役をもらえたんだ。本当に嬉しかった。そのときの共演がなかったら、今回の映画は実現しなかったかもしれないなあ」
――あなたが演じたリッチーはある意味ヒーローです。あなたのヒーローの定義は?
「ヒーローというか、オレが尊敬出来るのは何かを学べて、自由な考え方をもっている人だね。そして、オレに何かを教えてくれるだけじゃなく、オレを受け入れてくれる人……それはそんなに簡単なことじゃないことはオレが一番わかってるんだ」