アメリカン・ギャングスター : インタビュー
「グラディエーター」でアカデミー賞を受賞したリドリー・スコット監督とラッセル・クロウに、デンゼル・ワシントンが加わった最強トリオが送り出す、ギャング映画「アメリカン・ギャングスター」が公開。熱い男たちの生き様を重厚に描いた本作について、映画評論家の渡辺麻紀氏がキーパーソンの3人に聞いた。(取材・文:渡辺麻紀)
リドリー・スコット監督、デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ インタビュー
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■リドリー・スコット監督
「マーティン・スコセッシの模倣にならないように意識したよ」
――この作品は最初、アントワン・フークアの企画として出発したと記憶しています。あなたに落ち着いた経緯は?
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「これは一度、頓挫した企画だった。私は随分前にスティーブン(・ザイリアン)の脚本を読んでいたんだが、それが素晴らしくて忘れられなかった。そこで『プロヴァンスの贈りもの』をやるときにプロデューサーのブライアン(・グレイザー)に連絡したら『もうダメになった』という。諦めきれなかった私は『一緒に実現させよう』と言って、どうにか完成にまでこぎ着けたのさ」
――あなたをそこまで魅了したのは何だったのですか。
「私は『ブラックホーク・ダウン』をやったときに現代史の面白さに目覚めたんだ。これも現代史であり、しかも私にとって思い出深い70年代のハーレムが舞台だった。当時私はハーレムにいて、写真を撮りまくっていたんだ。今回、参考にしたのもそのときの写真。時代考証のスーパーバイザーがついていたけど、彼より詳しいくらいでね(笑)。写真を見れば当時の匂いさえ甦ってくるんだよ」
――あなたは、どんな映画にも必ず“美”を見つけると言っていました。今回、見つけたその“美”は何でしょうか。
「やはり70年代のハーレムになるだろうね。当時のハーレムは、まるで19世紀イギリスのビクトリア朝の雰囲気が漂いながら、それでいてファニーな感じがあったんだ。それをフィルムで再現したかったんだ」
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――この手のギャング映画はたくさん作られています。新しいものにしようと意識した?
「とりわけマーティン・スコセッシの模倣にならないように意識はしたよ。彼はこのジャンルが得意だし、いい映画をたくさん作っているからね。だが、自分自身で決断し、自分の頭のなかでさまざまな動きや構成を考えて行けば自ずと模倣にはならない。説明するのは難しいが、自分のアイデアが徐々に進化して行くという感じかな」
――もう70歳なのにすっごくお元気です。そのパワーの秘訣は?
「テニスと母から受け継いだDNAのせいだろうな。私の母は亡くなる96歳までとても元気だった。弟(トニー)も同じDNAをもらっているから元気なんだよ(笑)」