13歳の夏に僕は生まれたのレビュー・感想・評価
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衝撃のラスト映像
テーマとしては、裕福な家庭に育った少年サンドロが不法移民を乗せた船に助けられ、様々な国の難民や貧しい人々と接し、世の中の価値観が変化するという、いわば少年の成長物語です。最初はボートから海に落ちてしまい、暗い海の中で漂う様は『オープン・ウォーター』を思い出すような映像でしたが、助けられたときには小さい船に100人以上乗っているかのような悲惨な密航船映像。凄すぎますよ、この船。クロアチア、モンテネグロ、クルド、アルバニア、インド、スリランカ、モロッコ、スーダンなど様々な国籍の難民が乗り合わせ、わからない言葉が飛び交うシーンでは、あたかも観客が無国籍地帯に放り出されたかのような感覚に。
裕福な家庭の少年という設定では、小市民的観点からするとこのサンドロ少年の心のほうが掴みにくい。ラドゥとアリーナの兄妹に心を許すものの決定的な繋がりに欠けているのです。自ら「信用するな」といった台詞には、彼らにこれ以上失うモノがないという投げやりな気持ちも含まれていたと思うのですが、同じ行動を取ろうとしても最後には帰る家があるサンドロには友達になるくらいの軽い気持ちだったのではないでしょうか。
しかし、この映画はなかなかいい。ぜひ裕福な少年たちに観てもらいたいものです。
世界は広い
題名通り、同じ祖国(イタリア)の景色が事件の前後で全く異なって見えるようになる。思春期の年頃と不法移民という重いテーマを絡ませて、最後まで見せる。ラストでアリーナ(ルーマニアから来た妹の方)は体を売って生きながらえていることが分かったが、兄の方の消息は分からないまま終わってしまう。
ハリウッドの娯楽映画には無いリアルな現実
『輝ける青春』の監督による密航移民を描いた社会派作品です。
『輝ける青春』は6時間を超える一大叙事詩でしたが流石にそこまで長くはありません。それでも密航船の場面を始めもっとカットしてテンポ良くした方が…と思わせるところが多くありました。
しかし『輝ける青春』に比べてこの作品における演出力は半端じゃない程上です。
何の不自由も無く育って来たおぼっちやまが初めて知った社会の現実に直面するストーリーですが、冷や水を浴びせられたりする場面を始めとしてハリウッドの娯楽映画には無いリアルな現実を突き付けられ、結論が出ず観客の想像力に委ねられる最後まで観せ切ってしまいます。
決して楽しい映画では無く、どちらかと言うと気の滅入る作品なのでお勧めはしませんが秀作と言える作品かと思います。
あ!でもこの邦題はちょっと違うんじゃないかな。
(2006月年6月4日Bunkamuraル・シネマ2)
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