「命がけ。棄民。ココシリの自然とチベタンの不毛な戦い」ココシリ redirさんの映画レビュー(感想・評価)
命がけ。棄民。ココシリの自然とチベタンの不毛な戦い
ココシリ。チベットの最後の秘境とある。そんな山奥で、義憤にかられ、チベットの土地、山を、家族や仲間を、故郷のすべてを愛するチベットの男たちが、チベットカモシカの密猟をする者らに対し、自前自腹のパトロール隊を作りカモシカを守るために戦う、実話に基づく話だそうだ。
チベットの荒涼とした風景が美しいを超え脅威しか感じられない、そこにいる事自体が危険、そこにいる事自体が自分の命や仲間の命敵の命すべてを棄てざるを得ない状況。そんな過酷な自然環境の中、騙し合いのような壮絶な闘い。長期に渡りいつ嵐や密猟者に襲われて死ぬかもしれない状況で1人見張りをやる青年。同じような見張り役であっさり殺された青年。密猟者グループを捕まえ、罰金をとり、負傷した者に金を与え治療のため仲間に病院まで送らせ、さらに密猟者を追う為旅を続け食糧がなくなると捕まえた奴らを置き去りにする。パトロール隊はチベットカモシカの保護毛皮取引撲滅のため崇高な目的で活動しているが自分ルールで展開されており、優しさと凶暴さ、正しさといかがわしさが混在している様に北京から取材にきた記者は共感と戸惑いを感じこれでは記事にできないと叫んでしまう。大量の毛皮はパトロール隊によっても困窮のあまり取引、換金されてしまう。密猟者の親玉は誰か、追い続けるも、捕まえた密猟者仲間にしてやられ、結局パトロール隊長は殺されてしまうのだ。
捕まえたマーという老人が食わせ者で、置き去りにされ棄てられる時も、なぜ密猟者のために皮剥してるか話す時も不幸な貧しい民であることをアピールするが、冒頭の殺害から逃亡、最後の隊長殺害までなかなかうまくやっているのだ、、、
見るほどに、皆、パトロール隊も、密猟側も、皆貧しい。
中国体制下で放牧遊牧出来なくなった、皮剥するしかないと漏らす。ここでは崇高な心大義を持つものも密猟するものも皆チベタンで皆自分の目的のために必死でその日その日の命を繋いでいる。出てくる者は皆棄民だ。棄民された者がさらに人を棄て殺し野垂れ死ぬ。人の命よりカモシカが大事かと問われる。おそらく自己が生きてる意味、生かされてる意味を感じる事が大事で、一期一会、道を分かれたら最後いつまた会えるか生きて会えるかわからない過酷な自然と政治の無策を、必死に何かのために生き、運命尽きるまでの刹那をよりどころにしているのだろう、、、
最後、自然保護区ができたことが知らされが、彼らは誰も生き延びてないだろうし、自然保護区はまた漢人やなんかに収奪されているのではないだろうかとどうしても思ってしまう。
チベタンたちはそれでも楽しくチベットの歌を歌い踊りチベット世界の暮らしを楽しむ。山中での酒宴、ダンスを興じるシーン、そしてここでも幾重にも収奪される存在として水商売、風俗に働くしかないチベタン女性など、
自然、風景、暮らしぶりを知るにとても貴重に作品。チベットの様々な終わることのない悲惨悲運を考えてしまうので素直な気持ちになれないが、最後の、パトロール山岳隊の集合写真にじんわり悲しみと感動、彼らの勇敢さに涙した。