「実話を元にした命懸けで自然を護る警備隊の話し」ココシリ yamappleさんの映画レビュー(感想・評価)
実話を元にした命懸けで自然を護る警備隊の話し
チベットのココシリという豊かな自然環境を守るための、私設警備隊の人たちの実話を元にした映画。
観ながら、どれだけの志を持ち、命がけでチベット人たちが乱獲からチルー(チベットカモシカ)を護ろうとしたかがわかり、物語の重さと辛さに心苦しくなりながらも、尊敬と、崇高さと、感謝と、色々なものが混ざった気持ちになった。
ストーリーは実話ベースでかなり重たい。チルーの皮が高く売れるため、密猟者の乱獲により100万頭いたチルーは1万頭まで減ってしまう。それを防ぐためのチベット人警備隊は、出てくる主役級の人たちがみんな、殺されたり、過酷な自然環境で死んだりしていく。数十人いた警備隊のうち、生きて帰還したのはわずか4名。
また、過酷な警備隊は武器も人も足りず、お金がない。皮肉なことに、チルーを護るために、密猟者が運ぼうとしたチルーの毛皮を売って、警備隊の経費にしている。それでも、警備隊の隊長であるリータイが、
「だから何だ。はじめから非合法なことは分かっている。だからと言って、法律が何をしてくれるのだ?チベットの巡礼者は、顔や手は汚れていても、魂は綺麗なままだ。」
という言葉に、ハッとさせられる。人の決めたルールにおいて、正しいというだけでは、現実の乱獲は止められない。だから、彼らは手は汚れても崇高な魂と想いを持って、警備隊の活動を続けていた。
ココシリ横断中に流砂で死んでしまうリウや、密猟の首謀者に殺されるリータイ、他にも何人か、撃たれたり、過酷な自然環境を前に死んでいく。この様子を取材した記者が主人公ガイだが、これが実話であり、これが記事として出版されたときに、世界中で大きな問題となったという。ペンは剣よりも強し。
あまりに凄まじい話だけど、この映画を観てからチルーを観たら、いろんな想いで涙が出そうな気がする。