玲玲(リンリン)の電影日記のレビュー・感想・評価
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映画1本の料金が4日分の給料。中国も高い映画料金が問題だ(70年代)
物価が高いのか給料が安いのかはわからないけど、日本だと最低賃金であっても1日働いたら3本くらいは観ることができる。1970年代の文革時代にストーリーは回想されるが、田舎ではあっても無料での野外映画上映会。キャッチコピー通りの中国版『ニュー・シネマ・パラダイス』であったけれど、フィルム技師も腕白少年も登場するがあくまでも家族愛を描いた映画でした。野外ということもあって、タバコの煙はもくもくと立ち上り、空気も乾いて音が広がっていく感じが伝わってきました。このあたりも『ニュー・シネマ・パラダイス』の雰囲気でしたが、さすがに上映中にセックスするカップルはいませんでした。
水の宅配をしている青年マオ・ダービンが映画館へ向かう途中、女性にレンガで殴られるという強烈なインパクトを持った展開で始まるのですが、彼女の過去を知るうちに、その謎を保ちながらノスタルジックな雰囲気につつまれていくのです。田舎の風景がとても大陸的で、どこまで行っても荒野が続いていそうな寂寥感の中にも暖かい家族がある。文革時代の影響なのか知らないけれども、子供たちも銃のおもちゃを常に持ち、ちょっと間違えれば殺伐とした雰囲気にもなりかねないような・・・だけど映画という娯楽のおかげで心が一つであるかのような田舎でした。
ちょっとおかしいぞと思える設定ももファンタジーとして割り切れば気になることもありませんが、聴力を失ったリンリンはちょっと可哀想すぎます。そして義弟の優しさにも泣いて、ラストにもまた泣かせるという二段攻撃。列車のアクション映画が多かったのですが、この中国映画やアルバニア映画を知っていたらもっと楽しめただろうなぁ・・・
【2006年8月映画館にて】
玲玲の流した涙
【文化大革命の子】として…美しい母親の夢を台無しにしてしまいこの世に生を受けた玲玲。
『ニュー・シネマ・パラダイス』が映画ファンから熱狂的に愛されている理由は「こうあって欲しい」とゆう願望がファンの心を捉えて離さないからに違いない。
この作品は『ニュー・シネマ…』とかなり似た展開が続きながらも子供が‘親に捨てられるのでは…’との思いが随所に色濃く反映されており、少兵との淡い恋心は兵兵への家族愛に変化したり、時には妬みの対象にもなったりする為に『ニュー・シネマ…』の‘夢の話’とは反対に随所に身に詰まされる内容です。
玲玲の流した涙は、嘗ては母親が流した涙でもあり、スクリーンの中で「何故こんな事になってしまうの…」と嘆き悲しむヒロインの涙でもあり、かなり突飛な解釈で観れば《体制批判》にも繋がっているのかも知れない。
玲玲が望遠鏡の先に見ていた‘理想の家族’…それを手に入れるまでの苦悩の姿はしっかりとこちらの瞼に焼き付いて離れない。
(2006年5月17日シアターN渋谷スクリーン2)
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