「「万物流転の世」」山猫 everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
「万物流転の世」
イタリア統一運動の最中、没落を予感するシチリア貴族や時代の波に乗る若者達を描いた作品。
映像が大変美しいです。
威厳に溢れ、家柄、しきたり、体裁、マナーを重んじる貴族の鑑のようなSalina公爵と、彼の甥で金遣いの荒いopportunistの美男子Tancrediが共に目を奪われるのは、成金で野暮なSedaraの娘Angelicaの美貌。品格も教養もない彼女ですが、魔性の魅力で貴族の心を鷲掴みし、封建主義を根底から覆す新しい時代の象徴のようでした。
「山猫や獅子が支配する時代は去り、ジャッカルや羊が取って代わる」
山猫というとピンと来ないのですが、ocelotやleopardということなら、確かに優雅で美しい生き物です。絶滅危惧種もいますね。
山猫は貴族、獅子は王族?
ジャッカルはSedaraやAngelicaといったブルジョワジー、羊はその他大勢のただ盲目的に従う民衆…という意味でしょうか。
山猫も獅子もジャッカルも羊も、みんな平等になる未来が来ると…。
紀元前よりあちらこちらから攻め込まれ、落ち着く暇のなかったシチリア。永い眠りと忘却への渇望、官能なる停滞すなわち死への憧れというのは、そういう歴史的背景から来るのだと知りました。
「現状を維持したければ変わらねばならない」
「体制全体を保つために一部の変化が必要なのだ」
「人を導きたい者に必須の己を欺く能力」
この辺の要素と作品の時代背景が、政治家ファンを惹きつけるのでしょうかね。
自分は行かざるを得なくて行ったことしかないのですが、訪伊の度に、苦手意識がどんどん増すのです(>_<)。勿論良い人も沢山いるのですが…、時折直面する非合理性等に絶句してしまいます。正直個人的には、芸術や美的センスへの尊敬だけで克服出来るものではないです。
このイタリア映画で意外にも自分の気持ちに近い台詞があって衝撃でした。
「シチリアの人間は改善を望まない。自分自身を完璧だと思っているからだ。貧困よりも虚栄心にこだわる。」
"They never want to improve. They think themselves perfect. Their vanity is greater than their misery."
そうこれ!
(高慢と見栄っ張りは同義ではないけど、シチリアに限らず)プライドの高さに見合う、生活水準と教養が伴っていない!…人に当たる確率が異様に高い…気がする…。
彼らの完璧って何なんだろ。
「公爵様のお通〜り〜」的な描写が、江戸時代みたいでした(^_^;)。砂埃にまみれながらも儀式的接待に耐える公爵一家。馬車よりエッサホイサの籠のほうが、遅い分?汚れなさそうだなぁと思いました。
Burt Lancasterの憂いを帯びた気品ある公爵姿が素敵でした。Tancrediの包帯の位置が毎回適当で残念。公爵夫人に続いて欠伸する大きなワンちゃんが良かった。
everglazeさん
コメントへの返信有難うございます。
大型犬がアラン・ドロンの袖を甘噛みしながらまとわりつくシーンも有り、つい大型犬に目線が👀 名演技でした(^^)