「第三帝国の終焉と「おとしまえ」」ヒトラー 最期の12日間 jarinkochieさんの映画レビュー(感想・評価)
第三帝国の終焉と「おとしまえ」
ヒトラー自殺前後の 組織が崩壊してゆく様子が、緊迫感を持って語られ 興味深い
ドイツ人の真面目で不器用な、そして民族的自負が生み出してしまった「総統」と「組織」の様に思われる
終末に向かって、内部も混乱し 総統が正気を維持してゆくのが、困難になりつつある様子を克明に描いている
ブルーノ・ガンツも 歴史的大罪を犯しながら、周囲の者とドイツ民衆を魅了してしまった、悪魔的人たらしを 不気味に演じている
名演だろう
ゲッベルス夫人は、美人で 子沢山なことからナチのプロパガンダに利用された(夫はDV)
夫妻はともかく、子供達を毒殺してしまったことは プロパガンダの後始末をあっさり済ませてしまう様で、哀しくもある
(後世に残る 夫のおぞましい犯罪が子供にもたらす影響をも、考えてか… )
エヴァ、ゲッべルス夫人、その他 周囲の女達は正気そうで、彼女等が 男達の暴走を止められなかった時代を感じる
総統への盲目的追従で 自殺する軍人は安直で、ともすれば宗教的ですらある
さもなければ自己中心的、このどちらかであろう
後始末をする者、連合軍との交渉にあたる者が ナチスの中にあっても、指揮系統としては まともであることが判る
現在、罪悪感と企業の思惑が絡み、大量の移民を受け入れたドイツ発の混乱が、またヨーロッパに広がるのを見ると、ユンゲの言う「目を見開いて、見る」ことの難しさを思う
エンドロールに映し出される、各々の人生の行く末も 心に残ったが、やはりヒトラーの残酷さと犬死にしたドイツ兵や一般人、そして大量の収容所の人々の悲惨な人生を想わずに 観ることは出来ない
ユダヤ人にも問題は かなり、ある
が、人々の憎悪と悪魔が結びついた時、とてつもない惨劇が起こることを 思う
そして、被害者であることを 政治利用するのも 新たなリスクであると