やさしくキスをしてのレビュー・感想・評価
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やはりこの監督一味違う
パキスタン人のDJを志す男とカトリック系の学校に勤める女性が恋をする物語
宗教や家族など旧来のシステムが別の文化と触れる為に脅かされる
そんな姿を描いた物語
カトリックのシステムの問題点なども炙り出している
異文化の交流の難しさなども感じさせるね
でも、こうやって少しづつ文化が変化していくんだろうね
そうは思っても文化の接点は物凄く相いれないよね
でも、愛情が有る限りどこかに着地点を見出せそう
そんな希望を感じさせる終わり方だった
ただの恋愛物で終わる事なくやはり社会派な映画に仕上げる
この監督の持ち味が発揮された作品だった
他人に理解を求めない唯一の恋愛映画
スコットランドのグラスゴーに住むパキスタン人の男性とアイルランド白人女性の、宗教・文化・生活習慣の障害を乗り越えようとする恋愛映画。恋の駆け引きと問題点の追求が、現実の厳しさを醸し出している。二人の繋がりがセックス以外描かれていない潔さが今日的で面白かった。また通常のラブロマンスのヒロインにあるべき理想の女性像が描かれていないのもユニーク。何故男性が家族の絆を犠牲にしてまで女性に惚れ込むのか、他者が理解に苦しむ程に魅力がない。女性の良さを知る男が映画の中で彼ひとり、また観る者にも要求しないスタイルは、ある意味リアリズム表現の限界を超えた。
自分勝手で我儘な女性とそんな白人女性の虜になったパキスタン男性の苦悩描くケン・ローチ監督の演出が、終始一貫して冷静に社会に潜む問題点を掘り起こしていく。男性の姉が、女性を家の前まで案内して、庭に安らぐパキスタン家族を見せるシークエンスが印象的。ラストは、ハッピーエンドの安易な決着をせず、ふたりの前途多難を暗示して終わる。本来ドキュメンタリーで扱うテーマを敢えて劇映画にした、脚本家ラヴァティとローチ監督の作家姿勢には感服する。
信じること。
結婚とは、自分も家族も生涯に渡って安定させることが目的の制度。
恋愛とは、感情という予測不能なものに身を任せること。
文化の違うふたりが、慣習を超えるほどの感情を持ち、未来の自分達を信じようとするストーリーに、恋愛以上の繋がりを強く感じました。
ケン・ローチは、労働者の連帯を描き続ける監督のひとりです。
この作品も根っこは、同じ。
他者を信じて他者と繋がる、そんな強い気持ちが込められています。
燃えるような・・・燃え尽きるような
「麦の穂をゆらす風」など、常に時代に抗い続けた人間を描き続けるケン・ローチ監督が、自身のキャリアにおいて初めて挑んだラブストーリー。
違和感があった。どうしても拭えない違和感があった。互いの名前も知らない二人が出会い、愛を育み、知り合っていく喜びと、それに付きまとう困難と苦しみを描き出すのがラブストーリーだと信じている人ならば、この違和感に共感していただけると思う。これは、何か。冒頭から、この物語で出会う二人は決して結ばれない。そんな、確信を予感させる要素が散りばめられているのだ。始めに、言っておく。これは、悲恋の物語である。
様々な敵を相手にしてもひるまずに戦い続け、敗れていく人間の姿を追いかけてきたケン・ローチ監督。本作でも、その姿勢を従順に貫いている。人種に、宗教に、家族に逆らい、互いを求めようと戦った。だが、その想いは報われない。
そんな様々な逆境を準備するのはラブストーリーの鉄則だが、本作の場合は若干色合いが異なっている。この男と女、恋愛に対する姿勢が同一のものではない。女は、街中で当たり前に繰り広げられている普通の恋愛の姿を求めた。だが、男は、家族も、仕事も、未来も、全てを投げ捨てた刹那の愛を求めてしまった。この修復不可能の違和感を最後まで貫くローチ監督の姿勢は、決してラブストーリーという異質の分野においても変わらない。そこが、悲しい。でも、そこが、嬉しい。
遊びのつもりで挑んだ恋は、二人の思いだけではどうにも上手く行かない。その現実を、女は鋭く直視することになる。そして、知る。この、恋は、結ばれない。
突き放した視線で語られる世界観に、冷酷な辛さを、心が痛む人がいるかもしれない。しかし、愛に苦しむであろう人に、現在苦しんでいる人に、独りきりで向き合って欲しい物語である。そして見終わった後、愛を語り合える人と一緒にもう一度観て、今自分たちが感じている幸せを噛み締めて欲しい。終わりある愛を見つめる、異質のラブストーリーを味わって欲しい。
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