劇場公開日 2022年4月23日

ほら男爵の冒険のレビュー・感想・評価

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3.51961年作…

2022年5月5日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

この時代の作品なのにストーリーのイマジネーションがすごい。そしてそれを楽しく映像化しているのもすごい。笑っちゃうくらい奇想天外な世界がこの時代の特撮技術でいい味出ているなー、と思うなー。

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peanuts

3.5ほら吹き男爵とイケメン宇宙飛行士のNTR大合戦。ゼマン作品の中でも屈指のアート感を誇る。

2022年5月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

新宿K’sシネマのカレル・ゼマン特集上映二日目1本目(総計4本目)の視聴。
最初にお断りしておくと、中盤、結構寝落ちしてしまったかもしれません(前日仕事で徹夜でして)。
なので、あまりエラそうなことは書けません……。

実写込みの特撮を独自の芸風とするファンタジー作家カレル・ゼマンにとって、『ほら吹き男爵の冒険』ほど「ドンピシャ」にはまる素材もないだろう。先日『彗星に乗って』を観ながら、このアプローチで『ほら吹き男爵』をやったら、どんなに楽しかろうと思ったものだ。

で、実際に観ると、たしかにゼマンらしいイマジネーションが炸裂した圧倒的なアート・フィルムではあったが、ストーリーは若干大味で、語り口もまあまあ冗長というか意外につながりがわかりにくく、しょうじき言えば何度も睡魔に襲われてしまった。
テンポよく、ホラを次々と繰り出していくというよりは、じっくり「絵」や「仕掛け」を見せながら、まったり進行している感じで、扱われている小ネタも、子供時代に読んだ『ほら吹き男爵の冒険』で良く覚えているエピソード(斧をとりに月に行って帰りは三日月にかけた荒縄を切ってはつないで降りてくる、異様に足が速い韋駄天や耳の良い男の大活躍、自分の髪を引っ張って馬ごと持ち上げる、目を殴って出た火花で銃を撃つetc.)は意外なくらい出てこなかった。大魚に喰われる話や砲弾に乗る話は出てきたけど、全体にはかなり「自由に」独自の解釈で創作されている感じだ。

月面から物語が始まる。
人類で初めて月に着陸した宇宙飛行士トニークは、なぜか月面に誰かの足跡が残されていることに気づく。落ちている手袋やらなにやらを拾いながら追っていくと、「ジュール・ヴェルヌ 地球から月へ 1865」のプレートの入った砲弾型宇宙船の残骸が。さらにその奥では、酒盛りをしている4人の男がいて、そのなかの古めかしい貴族姿の一人が「自己紹介させてほしい。私はシラノ・ド・ベルジュラックだ」と切り出す。残る三人はヴェルヌの『月世界旅行』で宇宙船に乗ったメンバーだ。そこにもう一人馬に乗った貴族が帰ってくる。シラノが高らかに宣う。「彼こそは、ミュンヒハウゼン男爵である」(チェコの言葉では「バロン・プラシール」と呼ばれている)。

要するに、月面旅行が実際に成功する前に月に想像のなかで渡った、物語世界における月関係者5人がこうやって月面で集い、「リアル」の月面旅行者との邂逅を寿いでいるわけである。
(ちなみに「トニーク」の名前ってスプートニクと何か関係あるのだろうか??)
一瞬、シラノって恋文代筆する話じゃなかったっけと思う人もいるだろうが、それはロスタンの戯曲の中の話。シラノ・ド・ベルジュラックは17世紀に実在した作家・剣術家(本人は同性愛者)であり、その代表作の一つが没後刊行されたSF文学の嚆矢『月世界旅行記』なのだ。

ただ、月面の5人からすると、宇宙服を着た現代人のトニークのほうが、「月面人」という扱い。
月の住人であるあなたに、ぜひ地球のすばらしさを見せてあげようという話になって、トニークはミュンヒハウゼン男爵と、6羽のペガサスが牽く船に乗って地球に帰還する。
男爵に連れられてトルコのイスタンブールでスルタンに謁見しにいくトニーク。
そこで出会った美しき囚われの姫とトニークは恋に落ちるが、姫のことは男爵もまた狙っていて……。

冒頭から「絵作り」の精巧さと美術の凝り方は、他作を凌ぐ力の入りようで、観ていてぐっと引き込まれる。とくに、イスタンブールの王宮における内壁の描写は圧倒的だ。総じてシュルレアリスティックなテイストが強め(ダリやエルンストやマグリットやシュヴァンクマイエルを思わせるような絵柄が頻出する)で、子供というよりは大人をターゲットにした作品という感が強い。
内容的にも、中盤からは、男爵が画策して王女を寝取ろうをムーヴをかけたり、また寝取られたりみたいなことをやってて、それなりにアダルティ(って言い方でいいのか?)だし、他の作品と比べても、禁断の果実と楽園の蛇が登場するとか、槍の飛び出す仕掛けに守られて大砲に変化するスルタンとか、花と花瓶とか、「フロイト的解釈」を誘うような性的なモチーフが多数ひそませてあるように思う。

とにかく、本のページをめくる体裁のスタッフクレジット、いきなり現出する雷雨と稲光、海上の巨竜と怪魚、飛び交う鳥の群れ、旅の果ての大海と崖、騎士と薔薇といった、ゼマンならではの「お馴染みの呪物」はあちこちにしっかりと刻印され、どこからどう見てもカレル・ゼマン印の映画に仕上がっている。
先に言った通り、ちょっと語り口がだるくて中盤ダレる感は否めないし、もう少し恋愛話に寄らずに有名エピソードを盛り込んでいくスタイルでも良かったような気もするが、アイディア満載、美的センス爆発のゼマンらしい逸品であった。

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じゃい