戦争のはじめかた

劇場公開日:

解説

冷戦終結間近、ドイツ駐留アメリカ陸軍基地を舞台に、規律の乱れた軍内部で巧みに立ち回る青年を描いたブラック・コメディ。ピューリッツァー賞フィクション部門にノミネートされたロバート・オコナーの小説『バッファロー・ソルジャーズ』を映画化。“なぜアメリカは戦争という同じ過ちを繰り返すのか”という問いを投げかける。主人公エルウッドには、ホアキン・フェニックス。

2001年製作/98分/イギリス・ドイツ合作
原題または英題:Buffalo Soldiers
配給:シネカノン
劇場公開日:2004年12月11日

ストーリー

1989年10月。西ドイツ、シュツットガルトのセオドア・ルーズベルト米陸軍基地。娯楽室ではまた些細なことから白人兵士と黒人兵士がケンカをはじめた。戦うべき敵のいない兵士たちはみな、有り余る暇を持て余しているのだ。第317補給大隊に所属するエルウッド(ホアキン・フェニックス)も例外ではない。が、彼は別の方法でその退屈をしのいでいる。バーマン大佐(エド・ハリス)直属の事務官という立場を最大限に利用して物資を地元商人に横流ししたり、ヘロインを密造しているのだ。ある日、仲間と出かけようとしたところを見知らぬ男に呼び止められる。エルウッドの新しい上官、リー曹長(スコット・グレン)だった。演習中、ヘロインでご機嫌なヒックスたちの乗った戦車が市街地に迷いだして暴走を始める。途中、給油所をなぎ倒して大爆発を起こすが、彼らはそのことにも気づかず走り去った。たまたま通りかかったエルウッドたちは、そこで焼け焦げた死体と新品の兵器を大量に積んだ2台のトラックを発見する。そして、その兵器を核ミサイル基地に隠すと馴染みの取引相手であるトルコを訪ね、モルヒネ303キロで手を打つことにした。エルウッドが自室に戻ると、リー曹長がMPと部屋を物色していた。どうやら目を付けられたようだ。いつものやり方で曹長を丸め込もうとするが、今回は彼の思い通りには行かない。そこで作戦を変更し、曹長の娘ロビン(アンナ・パキン)に近づくとデートの約束を取り付けた。新たに配属されたノールという上等兵が同室にやってくる。これも曹長の差し金だと知ったエルウッドは、曹長への敵対心を新たにしてデートの夜を迎える。しかし、彼はクールなロビンに本気で惹かれていくのだった。翌朝、今度は射撃訓練だと曹長が部屋に怒鳴り込んでくる。標的として用意されていたのは、なんとエルウッドのベンツだった。バーマン大佐が昇進のためにパーティを開いた。エルウッドがその手伝いをしていると、リー曹長父娘も姿を見せる。ロビンと抜け出した彼は問いただされて全てを告白、それを聞いた彼女は曹長がエルウッドを殺す気かもしれないと彼の身を案じる。ちょうどそのとき、大佐は将軍に良い印象を与えようと、新たな軍事演習を提案していた。それは自分の部隊を守備に配し、昇進のライバルであるマーシャル大佐の部隊に攻撃させるというもので、場所は盗んだ兵器が隠してある核基地だった。一方、受け渡し場所にヘロインがなかったというサード軍曹の言葉が気になっていたストーニー(レオン・ロビンソン)は、その倉庫の棚を点検しに行く。しかし、扉を開けるとそこには手榴弾が仕掛けられていた。兵器を隠した核基地で演習が行われることになり、相棒ストーニーも失ったエルウッドは、この大きな取引を中止したいとトルコに申し出る。しかし兵器を渡さねば殺すと脅され、当初の予定通りに計画を実行することを決意する。バーで作戦を練っているところに、サード軍曹がMPを引き連れてやってきた。仲間たちは店から追い出されるが、ひとり抵抗したノール(ガブリエル・マン)はMPたちに囲まれてしまう。エルウッドは彼を助けるために、新たなパートナーにしろというサードの申し入れを承諾するが、実は菜食のサードを落とし入れようと目論んでいた。核基地での軍事演習が始まり、両陣営が警戒態勢に入る。しかしバーマン大佐は裏をかかれて彼の部隊はあっという間に完敗を喫し、早々に指揮権を取り上げられてしまう。実は期限までに兵器を運び出すため演習を早く終わらせようと、エルウッドがマーシャル大佐に内通していたのだった。その晩、30キロのモルヒネが運ばれてくる。ヘロインに精製するには、朝まで6時間その温度を一定に保ち続けなければならない。エルウッドは仲間に見張りをまかせてロビンの待つプールへ向かう。そのときテレビには、ベルリンの壁崩壊に歓喜する市民の姿が映し出されていた。エルウッドがロビンとプールサイドで眠っているとノールが姿を現わすが、様子がおかしい。続けて入ってきたのはリー曹長だった。殴り倒されて朦朧とする意識の中で、曹長が「サー」と呼びかける声を混乱するエルウッド。実はノールは長官直属の監察官だった。時を同じくして、調剤室にもグリーンベレーが突入し、銃撃戦が始まる。ノールがロビンを外へ連れ出すと、さらに衝撃の事実がエルウッドに告げられる。

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映画レビュー

3.0「戦争は地獄だが、平和は退屈でしょうがない」

2023年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 元々は事件を起こしたため仕方なく兵役についたエルウッド。モルヒネを仕入れヘロインに精製して夜はヤクの売人。遊んでいるときにジャンキーが死んでも、戦死扱いに協力する上官のバーマン大佐(エド・ハリス)もすごくクール。昇進しか頭にないためか、夫人をエルウッドに寝取られている・・・  演習中にタンクを暴走させ人が死んでも、トラックを奪い武器を確保して核基地に隠したりと、やることは無茶苦茶だ。上官の娘をデートに誘って仕返しするなんてストーリーはありがちな青春ドラマのようだけど、一方の昇進を焦るバーマンがとんでもないアイデアを将軍に上申し、リー将軍はエルウッドをだんだん憎むようになる。  悲惨な核爆発こそ起こらないものの、いつ内部から爆発するかわからないほど腐っている人間関係。「最高のバカと最低のバカ」しかいない軍隊。ラストの収束へ向うプロットは規律を正す人間の賢さを訴えているようであり、スカっとしないのも事実だが、ベトナム戦争時にはもっと悪いことをやったというリーの独白が不気味だ。  戦争がいかにして起こるかという方法論よりも、平和なときでも戦争は起こっているという哲学的なことを訴えているようで、それほど感慨深いものではなかった・・・

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kossy

3.5腐りきった小悪党

2013年3月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

総合:70点 ストーリー: 70 キャスト: 75 演出: 75 ビジュアル: 70 音楽: 65  軍隊での物資の横流し、麻薬、暴力。実際にありえる話である。ベトナム戦争中でもこういったことは問題になっていたし、そういえば映画「プラトーン」でも一部これらの問題が登場していた。  だが舞台は冷戦下のドイツ駐留のアメリカ軍。大量の新兵が徴用され、戦争で監視の目が届かず規律が緩みまくっていたベトナム戦争時とは異なるはず。それでも大国の軍隊とは思えないほどの統制無しのやりたい放題。そもそも司令官からして目の前の出世しか興味がなくて内部のことに関心が無い。そんなだから登場人物たちも人生を無駄に悪さすることを謳歌している。道徳観や倫理観など存在せず、ひたすらに目の前にぶら下がる餌に食いつき続ける。  ここまで性根が腐りきっていると、もう矯正は難しいだろう。だから浄化されるのかと思うし、実際にそれを行いえそうな厳しそうな歴戦のつわものが配属される。いよいよ彼との対戦がくるのかと思いきや、彼の正体がまたとんでもない。やたらと好戦的で危険な香りが漂う。結局どいつもこいつも軍隊に巣くう悪党ばかりというのが笑える。  ラリッた兵士が戦車でガス・ステーションを破壊してもそのまま査察も入らず、部下の高級車を破壊し、銃撃戦して人もビルから落ちてもガス爆発で済んだりと、ちょっと非現実的な場面が多い。だがこの映画はそういうところはどうでもよくて、害虫のごとくどこにでも繁殖して悪さをする悪党の活躍を描きたいのだろう。そのしぶとさが面白かった。

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Cape God