ビハインド・ザ・サン

劇場公開日:

解説

ブラジル東北部の砂地に住む2つの家族の壮絶な争いを描いた悲劇。監督・共同脚本は「セントラル・ステーション」「モーターサイクル・ダイアリーズ」のウォルター・サレス。原作はアルバニアの作家、イスマイル・カダレの小説『砕かれた四月』。撮影は「セントラル・ステーション」のウォルター・カルヴァーリョ。音楽は「セントラル・ステーション」「シティ・オブ・ゴッド」のアントニオ・ピント。編集は「セントラル・ステーション」のイザベル・ラテリー。美術も「セントラル・ステーション」のカシオ・アマランテ。出演は「ラブ・アクチュアリー」のロドリゴ・サントロ、これがデビューとなるラヴィ=ラモス・ラセルダ、「傷だらけの生涯」のホセ・デュモント、「セントラル・ステーション」のリタ・アッセマニー、「私の小さな楽園」のルイス=カルロス・ヴァスコンセロス、これがデビューとなるフラヴィア=マルコ・アントニオほか。2002年ヴェネチア国際映画祭若手審査員賞受賞。

2001年製作/92分/ブラジル・フランス・スイス合作
原題または英題:Abril Despedacado
配給:ギャガ=アニープラネット
劇場公開日:2004年11月6日

ストーリー

1910年のブラジル。衰退の一途をたどるブレヴィス家と、隆盛の極みにあるフェレイラ家は、長年に渡り血で血を洗う土地争いを繰り返してきた。ブレヴィス家の二男トーニョ(ロドリゴ・サントロ)は、殺害された長男の復讐のため、フェレイラ家に報復に行く。そしてフェレイラ家の家長を殺害。だが、さらなる報復を呼ぶことを恐れたブレヴィス家の父親(ホセ・デュモント)は、その葬儀にトーニョを伴って参列し、休戦を申し入れる。そんなある日、トーニョの弟(ラヴィ=ラモス・ラセルダ)は、馬車に乗ってやってきたサーカスの曲芸師サルスチアーノ(ルイス=カルロス・ヴァスコンセロス)と火吹き女クララ(フラヴィア=マルコ・アントニオ)に道を聞かれる。彼はサルスチアーノに川魚のパクーという名をつけてもらった。まもなくして、トーニョはパクーを連れて、こっそりとサーカスを観に行く。トーニョはクララに一目惚れし、クララも彼に惹きつけられた。彼女への思いが高まるにつれ、トーニョの胸には終わりなき報復の虚しさがこみ上げる。そして彼はクララたちと遠くの町へ旅立った。だがトーニョは再び戻ってくる。そんな彼をクララが追いかけてきて、2人ははじめて結ばれる。しかしその間に、パクーがフェレイラ家に殺害されてしまった。すべてが終わったと悟ったトーニョは、一人家を出て海へ行くのだった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

第59回 ゴールデングローブ賞(2002年)

ノミネート

最優秀外国語映画賞  
詳細情報を表示

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

5.0移民の姿を描いた『terra estrangeira』(1996)...

2024年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

萌える

移民の姿を描いた『terra estrangeira』(1996)でその名を轟かせたウォルター・サレス監督。有名な作品といえば、『セントラル・ステーション』(1998)や『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004)。

本作『ビハインド・ザ・サン』は2002年、『モーターサイクル・ダイアリーズ』の2年前の作品。アルバニア文学界の大御所イスマイル・カダレの小説『砕かれた四月』(アルバニアが舞台)に触発されたサレスが、舞台をブラジル北東部に移して映画化した作品。「血の掟」がテーマとなっている。

舞台は、ブラジル北東部ペルナンブーコ州の内陸部に広がるセルタォン(荒れ果てた乾燥地帯のこと)。一つの土地を巡って何世代にも渡って争い続けている二つの家。家族は「血の掟」に支配され、名誉だけのために命を掛けて不毛な復讐をお互い繰り返し続ける。そんな運命の中で葛藤する兄弟の姿を、荒涼とした映像美で描いています。
まさにメロ・ネットやグラシリアーノ・ハーモスが描いた風景。

しかしまぁ映像が見事に美しいです。
貧しい風景なのに。

映画の原題『Abril despedacado』=「砕かれた四月」。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
月の兎

5.0次の満月、血の色が黄色に褪せるまで・・・とりあえず休戦だ。

2018年11月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 次の満月、血の色が黄色に褪せるまで・・・とりあえず休戦だ。

 暗い背景の中にはためく血に染まったシャツ、突然映し出される大写しの月、地から手が生えて出たような朽ちかかった木のブランコ、等々。これらの映像が突拍子もなく登場するが、映画に妙に合っていて溶けこんでいるのです。ブラジル映画なのに、どちらかというとヨーロッパ的な映像なのですが、荒涼とした大地である“魂の川”の乾ききった空気が漂ってくるほど臨場感がありました。しかも、かつては奴隷を使っていたが舞台である1910年には、自分たちで全ての農作業をやらねばならなくなったという没落ぶりがすごいです。

 貧しさの映像化・・・特に死にそうな牛や収穫も少なそうなサトウキビ・・・これと銃で相手を殺すという残酷さがリアルに響いてくるのです。そして正反対に美しい青い空とブランコ。ブランコ映像は、もうちょっと時間が長ければ、酔ってしまいそうになるほど画面に引きずり込まれます。時間軸まで効果をプラスして空中を旋回するサーカスの少女クララは素晴らしかった!

 あらすじを見た段階では『ロミオとジュリエット』のようなストーリーをモチーフにしてあるかと思いましたが、暴力・復讐の連鎖という国家間の戦争の縮図を表現したかのようなプロットに驚いてしまいました。復讐の繰り返しをしても結局は何も残らない。そんなメッセージをも感じ取れます。

 映画館からの帰り道、雨にたたられました。映画とそっくりな展開だったので、傘も買わず、タクシーも使わず、気持ち良く濡れてきました・・・(バカ、冬なんだってば・・・)

コメントする (0件)
共感した! 0件)
kossy