イン・ディス・ワールドのレビュー・感想・評価
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難民問題
世界で1450万人の難民。そのうち500万以上がアジアに集中し、100万人がペシャワールに住んでいる。この映画は、難民問題に真摯に取り組んだ監督の勝利だ。
実は予習無しで観てしまい、見事にだまされました。あくまでもドキュメンタリータッチにこだわった撮影のおかげで、ずっとドキュメンタリーだと思ってしまったのだ。恥ずかしながら、「ドキュメンタリーなのに人が死ぬのをだまって見過ごすのか!!」と真剣に考えてしまったり、前半部分で二人がイランからパキスタンへと引き戻された時にも映画のスタッフに怒りをも覚えたオバカさんでした。
それにしてもこの監督は現実と虚構の微妙な空間を表現するのが上手いです。『ウェルカム・トゥ・サラエボ』では、どちらかというとその両者の架け橋のせいでイマイチのめり込めませんでしたが、今作は成功しています。この映画の唯一の弱点は、ある程度裕福な難民を扱ってるということで、実際にもっと悲惨な大多数難民を上手く取り入れれば、更に素晴らしい映画になったに違いない。ジャマール少年の寒いギャグも素晴らしい・・・
リアリティと世界と少年
ナレーションや地図の演出がドキュメンタリー的で、2人の旅が実際にあった話のように感じられる。
エナヤットの、少年のような純粋さと、たまに出る大人びた表情が、自然な彼の特性と、求められる特性が、入り混じっているように思える。
ラストの故郷への電話でのジャマールの表情が、もはや少年とは噛み合わない深さを感じられ、願いが叶わない残酷さを表しているようだった。
誰かが世界から取り除かれてもこの世界は、止まらない。ジャマール個人も止まることはできず、それは生きるための手段である。
リアルな映像が全てを語る
たくましく希望にしがみつく少年の"生"の旅に視覚的な小細工やナレーションなど必要無い。
作品はただただ2人のロンドンまでの道筋を淡々と映し出す。
「百聞は一見にしかず」、伝えたいことはドキュメンタリータッチの映像が全て語る。
フィクションでありかながらも圧倒的に事実に近い難民の現実をありのままに映すことで、この作品は映画として、伝える道具として大きな力を持つ。
自分たちに何が出来るか分からなくても、ただ知ることしか出来なくても、無関心よりはずっと意味のあることだ。
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