H.G.ウェルズのSF月世界探検のレビュー・感想・評価
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懐古趣味ではなく、今観ても楽しい作品。映像もリマスターでキレイ。
無重力空間のロケットから月着陸船が切り離され、ゆっくりと月面に向かう。底面のロケット噴射で減速しながら、本体から突き出た細い4本の脚で月面に着陸。
1964年にこの作品が作られたことに驚嘆する。なんせアポロの月着陸のずっと前なのだ(調べたらアポロ11号の月着陸が1969年でした)。アポロ計画の情報はどれくらいオープンになっていたのだろう。当時は米ソで熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていたと聞く。米ソの共同プロジェクトなんて夢のまた夢だが、映画ではアメリカ、イギリス、ソ連の宇宙飛行士が同じ母船に乗っていた。一体何年時代を先取りしていたんだろう。
レイ・ハリーハウゼンの特撮特集で鑑賞したのだが、残念ながら特撮マニアではないので「あの時代にこの映像はヤバい」と言った感動はない。しかしながら、科学に裏付けられた未来予想と、それにリアリティを持たせる映像は素晴らしい。やはりSFは原作ありきだ。
原作はジュール・ヴェルヌと並び称されるSFの巨人H.G.ウェルズ。前述の月面着陸は映画独自のストーリーだが、その後の怒涛の展開はウェルズによるもの。圧巻だ。
バック・トゥ・ザ・フューチャーのドクの原型のような博士が出てくるのも楽しい。
物語の結末も科学的、アルマゲドンなんかよりもずっとリアリティがあった(ここは映画オリジナルらしいが)。機会があれば観るべき一本。
ハリハウゼンの特撮技術
19世紀末、借金まみれのベッドフォードは恋人のケイトと一緒に郊外に移り住むが、近所の科学者カボールの研究に巻き込まれることになった。カボールの研究は重力を遮り、塗ると宙に浮くカボナイトという金属の発明。それを船に塗って月旅行に行こうというものだった。
宇宙船は地球から逃げるようにして発進。ちょっとしたことでケイトも乗り込むことになり、3人の月旅行となった。月に着陸するやいなや地下に文明らしきものがあり、彼らは月の住人セレナイトと遭遇。セレナイトはむしろ友好的で、ベッドフォードだけが好戦的なくらい。文明はかなり進んでいて、地球語を理解しようとするほどだ。
ハリハウゼンの特撮技術もさることながら、地球人について考えさせる内容。セレナイトの王(?)は地球に関心があり、カボールに色々と尋ねるなか、“戦争”について興味を持つ。外敵はほとんど存在せず、巨大なイモムシが居るくらいの月地底世界。好戦的な態度を取るベッドフォードについても罰を与えず、とにかく地球人に興味を持ち続けていたのだ。そしてカボール博士はセレナイトに興味を持ち、1人月に残る・・・
老人ベッドフォードの話が終わり、テレビでは月着陸の画面。カボールは?セレナイトはどうなったのだ?と思っていると、地球から持ち込まれたウィルスかなにかでセレナイトは絶滅した後だったというオチ。シュールさは弱いが、色々考えさせる映画だったことにびっくり。
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