「よく分からぬまま圧倒さる」ヴェルクマイスター・ハーモニー La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
よく分からぬまま圧倒さる
毎回、「一体何の映画なんだ」と混乱させられるものの、心をざわつかせる長回しの映像がいつしか脳裏に焼き付けられるタル・ベーラの2000年の作品が、スクリーンでリバイバルです。
広場に突如出現したクジラの巨大オブジェと人々の心の裏側を煽る男。そして、その言葉で目覚めたかのように暴徒化する大衆。それぞれが何を意味するのかは今回もやはりよく分かりません。しかし、タル・ベーラらしいモノクロ・長回しの映像は困惑とザワザワ感を抱かせたまま観る者を圧倒します。
それは、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」の風評に振り回された関東大震災の暴徒の様にも、フェイク情報に踊らさられる現代のSNS空間の様にも見えます。
そして、終盤の10~15分間にわたる大規模破壊行動の長回しでは、「これ、絶対に失敗できないお金の掛かった一発撮りだよな」と別の緊張感にも晒されたのでした。
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