劇場公開日 2024年2月24日

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「破壊とヴァイオレンスに満ちた漆黒の黙示録」ヴェルクマイスター・ハーモニー 大岸弦さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0破壊とヴァイオレンスに満ちた漆黒の黙示録

2024年3月19日
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鑑賞方法:映画館

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ヴェルクマイスター・ハーモニー 4K
神戸市内にある映画館「シネ・リーブル神戸」にて鑑賞 2024年3月5日(火)
パンフレット入手
破壊とヴァイオレンスに満ちた、漆黒の黙示録

雪も降らず、霜のほかには何も覆うものがない、ハンガリーの田舎町。いつものように、夜の場末の酒場に、飲んだくれ達が集まっている。そこに現れたデルジ・ヤーノシュは、彼らを太陽系の惑星に見立てると、配置し踊り出す。ある者は太陽とし中心で回転させ、ある者は地球とし、太陽の周りをまわるように回転させる。ある者は月とし、地球の回りを回るように回転させる。同時にみんな踊りだす。
ヤーノシュは天文学を趣味に持つ郵便配達である。革職人の工房に部屋を借りている。仕事と家の往復の中、老音楽家エステルの世話をするのが日課となっている。エステルは、ピアノのある部屋で口述の記録を続けている。それは、ヴェルクマイスターという18世紀の音楽家への批判のようにも聞こえる。
そんなある夜、街角に一枚の張り紙が
「夢のよう!自然界の驚異!世界一巨大なクジラ!ゲストスター・プリンス」
そして夜の街を、巨大なトラックがゆっくり通りすぎてゆく。
エステル夫人がヤーノシュを訪ねてくる。「風紀を正す運動に協力するように、エストルを説得して」彼女は何かに取り憑かれているかのようだ。
広場には何かが来ているという噂を耳にしヤーノシュは広場に向かう。そこにはトラックとそれを取り囲むように、数え切れないほどの住人たちがいた。トラックの荷台が開く。木戸銭を払い、乗り込むヤーノシュ。そこで目にしたのはクジラだった。不気味に光るクジラの目。ヤーノシュはそれに魅了される。また、潜りこんだトラックの中で目にするゲストスター、プリンスの影。
彼らの目的は何なのか?どこから来て、どこに向かうのか?
そんなヤーノシュをよそに街中の何かが歪み始める。夜の街のいたるところで炎上が上がり、爆発が起こり、民衆が集まる。街中に"破壊"が充満する。群衆が向かったのは病院だった。そこでヤーノシュが見たものは・・・
また夜が明けた。ヤーノシュは、破壊されつくした街を徘徊する。ヘリコプターに追跡されるヤーノシュ。なぜ?どうして?
エステルが、病院のヤーノシュを見舞っている。ことばが消えたヤーノシュ。
エステルは広場に向かう。そこには、あのクジラだけが横たわっていた。
その目ですべてを見ていたかのように。

監督 タル・ベーラ

大岸弦