フォロウィングのレビュー・感想・評価
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タイトルなし(ネタバレ)
時系列再整理版も同時収録のDVDで鑑賞。
監督・脚本はクリストファー・ノーラン。
長編デビュー作で、製作・撮影・編集も兼務しています。
90年代末の英国ロンドン。
作家志望だが現在は無職の青年ビル(ジェレミー・セオボルド)。
生来の好奇心も手伝い、創作のネタを得るため、しばしば通りすがりの人々の後をフォロウ・尾けている。
ただし、相手の住居や職業がわかった時点で、尾行を中止するのを常としていた。
そんなある日、身なりのいい青年(アレックス・ハウ)を見つけて尾行したところ、カフェで尾行がバレてしまう。
男はコッブと名乗り、不法侵入をして、他人の私生活を覗くのが趣味だ、ついでに小物を盗んで換金している、興味があれば同行しないか、と誘われ・・・
という物語で、冒頭、警察の取調室らしきところでビルが尋問されるシーンからはじまり、コッブから誘われてある部屋に侵入するまでは、いくつかのインサートショットで時間は前後するものの、おおむね時系列どおり。
こののち二軒目、三軒目と侵入を繰り返すが、このあたりから時系列が組み替えられていきます。
ビルがブロンドの美女(ルーシー・ラッセル)と出逢ったあたりからは、ビルの身なりも立派になり、彼の風貌から時系列のどの辺に位置するエピソードかが分かる仕組みになっているので、観ていて、それほど混乱することはありません。
ブロンド美女は暗黒街のボスの情婦ということも判明し・・・
と後半は、時系列組み換えによって、どんでん返しの連続。
いや、こんなにどんでん返しがなくてもいいんじゃない?と思うほど。
モノクロ画面の撮影も巧みで、登場人物のキャラクターも描き分けが出来ており、クリストファー・ノーラン作品では上位に位置する出来だと思いましたが、これほど時系列組み換えは不要なのでは?とも思った次第。
なお、エンディングで群衆に消えるコッブは、のちの『バットマン(ダークナイト)』の原型ともいえるでしょう。
<追記>
つづいて、時系列順に再整理されたクロノロジカル版。
冒頭、ビルの警察での取り調べののち、ビルがコッブと出逢うあたりまではオリジナル版とほぼ同じ。
すぐに一軒目の住人とレストランですれ違い、押し込み強盗であることがバレるのではないかとビビったビルが、身なりを整え、そして三軒目、ブロンド美女の部屋へ侵入。
早々に美女の正体が(観客に)判明するあたりから、事件に巻き込まれた主人公が、さらに泥沼にはまり・・・しかし、事件にはさらに裏の裏がある、と正統派ハードボイルドの雰囲気。
この時系列再整理でもどんでん返しがいくつもあるので、物語の先が読めないというのは同じ。
オリジナル版を時系列順に再整理しただけで新たなシーンなどは追加されていないので、場面場面のつなぎがぎこちないのが難点だけれど、どちらかというとこちらの方が個人的には好み。
ノーラン監督渾身のデビュー作
作家志望の青年ビルは尾行(フォロウィング)が日課。ネタ探しの人間観察で始めたとするが、一人一回限りとか女性を暗がりでつけないとか自身にルールを課すあたりがノーラン監督らしい。
ある日コッブという男に尾行を気付かれて腐れ縁が始まる。どちらも作家志望だとするが「尾行なんていかにも初心者、他人を知りたいならてっとり早く家を探るのが一番」とのたまうコップに引きこまれるビルでした。
人は覗きやストーカーまでは行かないものの、他人の私生活に関心がある筈と言う前提でのつかみと展開。コッブがやってることは空き巣だが金目のものは盗まない、「ガラクタも無くなって初めてその価値に気付くのさ」と屁理屈まがいの泥棒哲学まで語るから妙に納得させられるノーランマジック。
このまま引っ張るのかと思ったらブロンド女が絡んで二転三転、人は見たものを真実ととらえがち、裏にそんな謀略があったとは・・・。
人間の心の闇を描き続けるノーラン監督の長編デビュー作、特典の監督インタビューで知ったのだが、予算の無いことから様々な手法が編み出されたのだから苦労のしがいがありましたね。
先ず、撮影機材、カラーフィルムは高いし良好な発色にはそれなりの照明も必要、モノクロにすることでノワール調を出したかったと逆手にとれる。スタッフも専業ではないのでスケジュール調整が大変、その日、その時でロケ場所を決め脚本も変えるという離れ業、従って繋がり重視のシーケンス撮りは止めて時系列を壊している、これはミステリーには好都合の難解性を醸し出す・・。登場人物も絞った方が深みが増すしギャラも節約と脚本、監督、製作と一人何役もやったノーラン監督渾身のデビュー作。
個人的には、映画好きだから人間が嫌いではないのだろうが昨今は年のせいか人間関係の煩わしさが先にたつし、監督の頭の良さは認めるもののノーラン作品は策を弄しすぎで一回見ただけでは分かりにくいところがやはり難点かな・・。
デビュー作から時系列がシャッフル
ノーランはデビュー作からノーランだった
徹底して人間の本性を暴きだす
悪いのはどいつだ
メメントで一躍その名を馳せたクリストファーノーランがその3年前に作り上げたインディームービー。
監督、脚本、製作、撮影、編集の5役をクリストファーノーランがこなすブラック采配で、たった4人のキャスト、たった6000ドル(多く見積もっても100万円以下?)の製作費で評価、興行収入ともに好記録をマークし、各映画祭でヒッチコックが再来したとも噂されたほどの作品だったらしい。
キャストに有名俳優を起用することなく、プロットさえ良ければ映画は面白くなるといった極論を体現したような内容。
のちのメメントにもみられた時系列をシャッフルし、徐々に物語の概要と謎が明かされていくといった展開。
ただモノクロの映像と前述の無名キャストの採用の件もあってか、一回見ただけではおそらく理解出来ない笑。
現行で世界最高峰の映画監督の1人であるクリストファーノーランの処女作といった意味ではファンは押さえておくべき一本ではないだろうか。
低予算なのにさすが。
歯車を回す大工場のような都市は、人を本質的に無個性にし、温順に生きることを強いる。
そんな社会の中で、主人公は自分は社会的成功者ではないけれど「まっとうな人間」だと思っている。
そして、自分の「平凡さ」「実直さ」「好奇心」を言い訳にして、日常の延長にある犯行を重ねる。
理想像のような男コッブは、インテリな傲慢さで主人公を支配し、容赦なく破滅へと導く。
社会に自我を巻き取られることと、強い者にたやすく利用される弱さは、根っこが同じかもしれない。
ドストエフスキーの「分身」を連想した。
ヒッチコック映画のような作品
犯罪の美学
知性派監督の挑戦状。
数年ぶりに鑑賞。
「インセプション」までを観て思ったのですが
ノーラン作品は“どうだ、ついて来れるかい?”という
ある種の自信やナルシズムを感じます。
ただ、それが鼻についたり観客を置き去りにするのではなく、
そのさじ加減が絶妙であるがゆえに
私たちの想像力を刺激して
“次の作品を一日でも早く見たい”、
そんな風に思わせるのではないでしょうか。
今作はタランティーノにより
“すでに使い古されたかのような時間軸をずらす手法”を
とっています。
それが観客を混乱させます。
白黒映像で、しかも似たような場面が続くため
状況が分かりづらく物語についていくのに必死です。
フィルムノワールを撮りたかっただけではない、そう私は感じました。
集中力が途切れれば興味を失う観客も出てくるのに
ノーラン監督はあえて挑戦しています。
まるで“ついてこれる奴だけ付いてこい”と言っているかのように。
そしてラスト。ご褒美が待ってます。
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