フォロウィングのレビュー・感想・評価
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実に巧なつくりあがりのクリストファー・ノーランの初長編作品
ビルとコッブと女、基本この3人で話が進行していきますが、
全てコッブの手の上で踊らされていた・・というオチが素晴らしかったです。
ノーランらしく、割と冒頭から時間軸の入れ替えをすることで
「え?これってどういうこと? 今? 過去? 未来?」と色々想像しちゃうんですね。
劇中のキャラクターはコッブが敷いたレールの上を走らされている感じですが、
私たち観客もまた、まんまとノーランに踊らされているのだと思いました。
こういう話は珍しくないですし、驚きもないのですが、
まずもってそこに気づかない自分は、鑑賞中、実に映画に入り込めましたし、楽しめました。
本作を25年前に初長編としてつくっているノーランは、やはり只者ではありませんでしたね。
今まさに、そのことをノーラン自身が物語っていると思います。
本作をリアルタイムで観ていたら、自分はどんな感想を持ったのだろう?と想像を巡らせるものの
今ほど「面白い」と感じたかは微妙です。
なぜなら、ノーラン作品を知っているからこそ楽しめた!ということも、少なからずあっただろうと思うためです。
とは言え、面白い!
それでいいじゃないかと思いました。
面白く空恐ろしい「ビル」
暇を持て余していた男が考え付いたのは、街で見かけ気になった誰かを尾行することだった。
しかしそれがバレてしまう。しらを切ったが男は鋭い勘を駆使して主人公ビルのことを次々言い当てる。
男の名はコッブ 泥棒だった。
この裏主役とも言うべきコッブこそがこの物語の主軸。コッブに遊ばれるように事件に巻き込まれていく主人公の視点で描かれている。
コッブのそもそもの目的は彼の影武者を作ることだ。すべての証拠をビルに押し付けるための巧妙な手口を使う。
そしてとことんビルを馬鹿にしている。缶ビールを振ってから渡すのはイギリスジョークだろうか。下に見た人間に対する常套行為だろう。
ビルが話していることにもすべて裏工作が存在する。
そして事前調査はMI6並みに徹底している。
そもそもビルは他人の「言葉」など一切信用しない。必ず裏を取る。
ビルは、馬鹿にしているコッブが女に泥棒のことを話したことをきっかけに、この街でしたことすべてを速やかに始末をつけると決めたのだろう。
屋上でのことから物語が一気に加速する。
コッブはこれら一連の出来事を警察官に打ち明けるが、そもそもすべて仕組まれているので、コッブという人物の存在が警察によって確認できない。
何から何まですべてがビルの単独犯行を示す証拠しかない。
そして最後に女までも殺されてしまう。
ビルは女の元を訪ねた後、すぐに警察へ出向いたのかどうかわからないが、コッブは入れ替わるようにビルのアパートに侵入して現金すべてを盗んだのだろう。
視聴者は主人公ビルと一体化して出来事の様子を見るが、すべてコッブに騙されていたということになる。加えて時系列が前後することでわかりにくくなっている。
モノクロフィルムが「ビルの夢」のような効果を出し、嘘であって欲しいと願うビルの心理状態と呼応する。同時に去ってゆくコッブという誰にも知られていない存在がまるで影のように感じられる。
ある種痛快でもあるこの作品は見事だった。
伝統と革新、創造と破壊
クリストファー・ノーランを父親=イギリス人、母親=アメリカ人双方の気質を兼ね備えた映画監督と評する人が多いと聞くが、本当ににそうなのだろうか。伝統を重んじながら進取の気象に富む気質は、英国人の国民性そのものだからだ。そうでなければ、ビートルズにプログレッシブ・ロック、パンクがイギリスで生まれることはなかったと思うのである。
本長篇デビュー作にそのイギリス人特有の個性をあてはめてみようとするならば、モノクロ&スタンダード→伝統、時系列のいりくり→革新ということになるのだろう。とある別の映画で、ためしにタランティーノの『パルプフィクション』を時系列のどおりに並べ変えてみたら面白くもなんともなかった、という話を聞いたことがある。本作においてその時系列シャッフルが無ければ、おそらく自称作家である貧乏男の“狂気”が観客にうまく伝わってこなかっただろう。
最新作『オッペンハイマー』の中でノーランは、革新的な技術=原爆が目の前にあった時、それを使わずにはいられなくなる科学者の本能を描き出した。それは、自らに課した掟を破って同作品に初めてCGを使ってしまった“言い訳”のようにも思えるのだ。元来新しいものには目のないノーランが、頑なに守り続けてきた伝統を自ら破ってしまったからである。
一見すると、コッブなる人物に殺人窃盗の罪をなすりつけられた男の悲劇のように思える本作。しかし、ノーランにしては珍しくストーリー・ロジックが所々で破綻している、突っ込み処が散見されるのである。まるで、(部屋に飾られたモンローのブロマイドや『罪と罰』の“老婆殺し”から思いついた)売れない作家が書いた三文小説のように...警察が云うように、はなっからコッブは主人公の頭の中にしか存在しない“想像上の人物”だったのではないだろうか。
貧乏に耐えきれず、他人の跡をつけ回しては留守中空巣に入り盗みを繰り返していた男が、小説風にでっち上げた架空の人物、それがコッブだったのではないだろうか。つまり、時系列を破壊した物語の構成そのものがミスリードになっているのだ。そう考えると、映画ラストのオチを含めすべての辻褄があってくるノーランらしい、非常に緻密なシナリオといえるのかもしれない。伝統と革新、創造と破壊。2つに引き裂かれたアイデンティティを感じとるべき映画監督なのかもしれませんね。
すでにして、ノーラン節全開
Amazon Prime Videoで鑑賞(HDレストア版,字幕)。
クリストファー・ノーラン監督の映画が大好きですが、観たことの無かったデビュー作をアマプラで待望の鑑賞です。
デビュー作なのにすでにしてノーラン節が炸裂し、複雑時系列での伏線回収が見事だしどんでん返しも素晴らしかった。
今では考えられない短尺な分、凝縮されたノーラン監督のエッセンスを十二分に浴びることが出来、最高の気分です。
~レビュー1800本目~
時間軸があちゃこちゃになる。
仕掛けまくり
高密度な映画
時間使いの達人
クリストファーノーランの長編デビュー作面白いとの評判なのでサービスデーを利用して見た。クリストファー・ノーランは時間使いの達人だなと思いました。
結論から言うと面白かったです。
話は時系列的に並べられてない、時間が行ったり来たり、途中から何でこの人の容姿は変わったの?ここの部屋ってと…どうなってるのと思いながら見ていて、後最後にそれが明かされる。
上映前、劇場のホールで流されてた予告の最後に「騙されるな」のコピーを見てたのですが、想定外の内容に私は、騙されました。
また、音の使い方もいつも楽しまされます。観客をイラつかせるような音の使い方にオッペンハイマーの足音に通じるのではないかと考えました。
この作品の頃にはきっとメメントはもとより、インセプション、TENETなの構想も既に持っていたのかなと考えてしまいます。
ところで、クリストファーノーランは、ジャックニコルソンが好きなんでしょうか、主人公の部屋に、叩き割ったドアの隙間から覗く写真や主人公?の部屋に貼られたバットマンのマーク(ジョーカーは、ジャックニコルソン)個人的には気になりました。この映画の制作時、まさか自分がバットマンを撮るとは思ってなかったのではないでしょうか。
そして、次回作はスパイ・スリラー風SFドラマとのこと、もう期待大でしょう。
今から楽しみです。
ノーラン監督作品をより探求する手がかりとして観るもよし、これを導入部にするもよし、な一作
モノクロームでざらざらした映像に時代を感じますが、よくよく考えれば1998年公開作なので、カラーでの撮影が当たり前の状況のはず。「フィルムノワール的作品なんだから、フィルムもモノクロームでしょ」というノーラン監督のこだわりが主な理由、らしいんだけど、フィルム代を少しでも節約しようとした可能性も。というのも、ノーラン監督は本作を、のちのち重厚で大規模作品を手掛けるようになる経歴からは想像もつかないほどの低予算、少人数スタッフで作り上げたためです。
時間軸を操作することで次々と現れる謎、意表を突く結末など、ノーラン作品の特徴ともいうべき要素は、すで長編初監督作でもある本作にも随所に見出すことができるんだけど、彼の才気煥発ぶりを実感する一方で、なんとなく制限のかかった予算でどれだけ面白い映画を作り出すか、という試行錯誤の結果編み出した技であるかのようにも感じたり。
さすがに本作の後継が続々登場したことを知っている観客の視点では、本作の仕掛けに全くの真新しさを見出すことは困難ですが、しかし多くの観客の意表を突くことは間違いなく、「このトリックは100%見破れない」という惹句も誇張ではありませんでした。
本作以来久しぶりにモノクロームフィルムでの撮影も取り入れたという(しかもそのために特注のフィルムまで開発した!)、『オッペンハイマー』と劇場で見比べてみる、という体験ができるのも、今現在ならでは。
上映時間は約70分と以降の作品と比較して非常に短く、しかも話は濃密かつ面白いので、本作をノーラン作品の導入部として観ることもおすすめ。
また記念上映ということでパンフレットの気合も素晴らしく、10ページにも及ぶノーラン監督インタビューは圧巻です。必読!
ノーラン監督作コンプリート
ノーラン初長編
70分でもノーランらしさが凝縮されていた
バットマンへの壮大な伏線…!
散りばめたパズルを一つ一つ拾い上げ、パチリ、パチリとはめていくような感覚。
モノクロの画面が情報を伝えすぎないからか、よりストーリーに入り込める気がする。
日常生活で時たま出会う理解し難い出来事って、その時はその違和感すら魅力に感じてしまうし、なんなら生活の中に紛れ込み、ナチュラルに寄り添ってくる。そんなモノを形にするとコッブになるんだろうな。
そしてまたコッブは、次のターゲットを目指して生活の中に溶け込んでいくのだ。
荒削りながらもメメントやTENETの始まりがここかと思うと、感慨深いものがある。
TENETか理解できなかった方は、まずはクリストファー・ノーランの理解のために、この作品からスタートすると良いと思う。
最初に見た時は気が付かなかったけど、今見るとアパートメントのドアに貼ってあったバットマンのエンブレム、ここにその種を蒔いていたんだなと、ニヤリとしてしまった。
ゴム手袋は売ってない
展開が読めず面白く鑑賞したが、オチを知って振り返ると色々モヤモヤした。
まず、脅してくるような人間の家でわざわざ人を殺すボスの迂闊さ。(あの回想も嘘?)
何よりコッブの計画の杜撰さと迂遠さと無意味さ。
コッブの目的は、“女”を始末することだった。
スケープゴートを用意するのは分かるし、偶然ビルに出会ったのも問題ない。
しかし、ビルが“女”に興味を持たなかったら?彼女のために盗みに入るほどのめり込まなかったら??
金庫破りのタイミングに男が現れたのは作為があったにせよ、ソイツはボスの部下では。
コッブはボスを裏切っていて金も奪うつもりだったのか、とも思ったが、だったら“女”を殺す理由がない。
見落としがあるかもしれないが、辻褄が合わないと思う。
『メメント』では設定や脚本と有機的に結びついていた時系列シャッフルも、本作ではあまり意味がない。
画作りはカッコよかったし、70分かつ低予算ということを踏まえれば及第点か。
ビルが途中で容姿を変えたり怪我をすることで、時間軸を分かり易くしていたのも上手かった。
コッブと“女”がグル、というところで止めて、その背景に凝ってあれば名作だったかも。
ノーランやばいな
まぁ出来過ぎな脚本で無理はあるけど…
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