「邯鄲の夢」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ レントさんの映画レビュー(感想・評価)
邯鄲の夢
1920年代のニューヨークに始まりそこから40年以上にもわたる男たちの物語を描いた大作。
アル・カポネやビトー・コルレオーネのようなマフィアが暗躍したであろう時代、同じくその禁酒法時代に栄華を極めたギャングたち。
「ゴッドファーザー」は家族の歴史を描いた物語だが、本作は男たちの友情をテーマにしており、若き少年期から老年期までを描いた内容は「スタンドバイミー」を思い起こさせる。
人種の坩堝ニューヨークで貧しいユダヤ系移民の主人公たちが日々を生き抜くには犯罪に手を染めるしかなかった。そして彼らは禁酒法時代に独特の方法でのし上がっていく。
少年期の淡い初恋から、仲間同士で育まれていく友情、そしてギャングとしてのしあがり、血で血を洗う暗黒街での抗争の日々と映画の醍醐味すべてが詰まった作品。そしていずれ訪れるであろう繫栄の後の没落。
栄枯盛衰、それこそ人生そのもの。時代の流れに乗り隆盛を極めた彼ら、それは同じく時代の流れにより終わりを迎える運命でもあった。
熱い彼らの友情はそんな時代の流れに押し流され、裏切りにより崩壊してゆく。仲間を裏切ったマックスはそんな自分をあえて殺せとかつての親友ヌードルスに言う。しかしヌードルスは手を下さない。
通り過ぎる清掃車の陰に見えなくなるマックスの姿、その姿はまるで幻であったかのように消えてしまう。
もはや人生の終わりも近い老年期に達したヌードルス。彼らの時代はいま終わりを告げようとしていた。
チャイニーズ劇場でアヘンを吸う青年期のヌードルスの姿。満面の笑みを浮かべた彼の表情で本作は幕を閉じる。これが今現在の彼の姿なのだろうか。すべては彼の夢の中の出来事であったのだろうか。
人生とは過ぎ去ってしまえばまるで走馬灯のような一瞬の出来事、それは儚い夢のようでもある。劇場で演じられる影絵芝居のごとく。
中国の古典「枕中記」。主人公の青年盧生が趙の都邯鄲で導師呂翁から栄華を得られるという枕を借りて50年の栄華に満ちた人生の夢を見る。しかし目覚めてみると粟のかゆが煮立つほどの時間も過ぎていなかったという。
人生とは過ぎ去ってしまえば儚い夢でしかない。しかしだからこそ、その過ぎ去りし思い出はヌードルスにとってはかけがえのないものだったに違いない。彼はそんな過ぎ去りし日々に思いをはせて笑みを浮かべる。
アル・カポネ、ビトー・コルレオーネ、そして本作とマフィア物を演じさせたら右に出る者はいないデニーロを満喫できる作品。そして本作でデビューを飾ったジェニファー・コネリーの美しさも堪能できた。
昔鑑賞したのは短いバージョンで今回始めて4時間近いバージョンを鑑賞できた。