ローラーとバイオリンのレビュー・感想・評価
全6件を表示
短いけど、ホッコリして、良作
この既視感は?
ん?この既視感、どこかで見たような…
んんん?あ!赤い風船!
と思ってたら…
実際、ホントに『赤い風船』の翻案映画だったらしい。
たぶんオマージュなんだろうが、あそこまでの完成度の作品の翻案というのも、なかなかのチャレンジというか、学生にありがちな、あまりに好きすぎて思わず作ってしまったというヤツ?
まさにタルコフスキーも若かったねえ〜といったような内容。
結果『赤い風船』のような切なく泣けるイノセンスも特になく、翻案元には遠く及ばないのだが。
というか、たぶん翻案を考えた時点で、
元のファンタジーな世界から逸脱して、もっとリアルな現実社会での関係性などを映そうとしたのだと思うが。
尚、もうこの時点で、この監督の独自の作家性は、鏡の多用だったり、メタファーの林檎だったり、もう諸々と既に表現されている。
しかし、学生時代のタルコフスキー君『赤い風船』好きだったのね。これはちょっと意外ではあった。
【思い出されること】
この短編は、なんか好きだ。
まあ、スコアとしては、そこそこなのだけれども、タイトルの「ローラーとバイオリン」もなんか良い。
タルコフスキーは水の表現を取り入れることで知られているが、この映画処女作の水溜りに太陽が反射して、その光がサーシャとセルゲイをゆらゆら照らす場面は、2人が瑞々しく見え、とても美しいと感じる。
サーシャとセルゲイが、それぞれ仕事と習い事の道具(つまり、ローラーとバイオリン)を通じて、心を通わせる感じもよく伝わってくるし、昔、僕自身が、ダンプとか作業車に興味津々で、こうした働く車を操る大人を尊敬の眼差しで見ていたことが思い出されるのだ。
それに、最後、サーシャは映画に行けず可哀想だったけれども、子供の時分は、親がこんな風に口うるさく介入してきて、あれこれ煩わしかったことも思い出した。
子供は、世界のどこにあっても似たようなものなのだ。
セルゲイは女性と映画に行けたようだし、まあ、大人は大人で上手くやってますよ。
水がこの時すでに、
山奥にある湖で深呼吸したような気分にさせてくれる気持ちのよい映画。A.タルコフルスキー監督の卒業制作、28歳のときの作品。
階級の異なるローラー引きの労働者とバイオリンを弾く少年の話。冒頭で流れる音楽がとても良い。そして湿ったような画面の中に美しいシーンがちりばめられている。
中でも、雨の上がった日、少年が廃屋のような場所で弾くバイオリンのシーンが圧倒的に美しく画面に引き込まれる。社会的な価値の突き抜けたところにある何かを提示してくれる。
少年は水溜りに反射した光を顔に受けながら、夏の雨を演奏する。労働者はタバコを吸おうとするけれども、ハッとして腕を下げ何かを思う。
その後のタルコフスキーの作品がもつ、らしさ、はまだ片鱗を見せるにすぎなく、
とても観やすい作品。
全6件を表示