「大人のおとぎ話」ローマの休日 toshijpさんの映画レビュー(感想・評価)
大人のおとぎ話
現実にはあり得ない夢想の世界ではあるが、可笑しくて
ロマンチックで少し切ない最高のエンターテインメント作品。
鑑賞後も心地よい余韻に浸れる良作。公開当時だけでなく
現在も人々の心を惹き付ける魅力にあふれている。
昔テレビで観た記憶があるが、当時は単に面白い映画という
だけの印象だった。今改めて鑑賞すると感情表現や脚本・
演出の見事さが際立っている。
某小国の王女アンとアメリカ人新聞記者ジョーの偶然の出会いと
その後の顛末。お互いが自分の本当の身分を明かさないまま
ローマの名所を巡ったりして大いに楽しむ。羽目を外したり
騒動に巻き込まれたりしているうちに恋心が芽生える。しかし
二人とも、自分たちが決して結ばれる事がないのを分かっている。
楽しさの後にやって来る寂しさがある。
テレビで鑑賞した時は人生経験も恋愛経験も浅かったから機微と
いうものを今ほど敏感に感じていなかったのかもしれない。
言葉に表さなくても分かる恋愛感情。住む世界が違いすぎてどれだけ
相手のことを想っていても成就しない恋。越えてはならない一線。
人生経験を重ねた今ならその切ない感情がひしひしと伝わってくる。
と言う訳で”もしも”という前提の夢物語でどの世代が観ても
面白い話だけれど、自分の人生経験に応じてより感慨深いもの
になるような、大人のおとぎ話だと思う。
言わずもがな、オードリー・ヘプバーンが王女アンに適役。
上品で知的。しかし息の詰まりそうな毎日に情緒不安定になったりも
するし、お転婆な一面も。好奇心旺盛。笑うときは無邪気な笑顔。
とにかく表情が豊か。オードリー・ヘプバーンがいるだけで眼福。
グレゴリー・ペックも上品で紳士的。ジョーは多少自己中な面も
あるが頼れそうな安心感を備えている。
この二人のおかげで、アンとジョーが親密になっても性的な匂いを
あまり漂わせない上品な映画になった。ほどよくロマンチックだった。
脚本・演出・主演の二人いずれもベスト。
映画史に残る素晴らしいラストシーンまで鑑賞者の心を虜にする
永遠の名作。
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以下は昭和中期に生まれたおっさんの昔話と断わった上で・・・
自分が幼少期から思春期にかけての頃、映画鑑賞の手段は
主に二つしかなかった。
・映画館で鑑賞(ロードショー/名画座/名作のリバイバル上映)
・テレビの映画番組=アナログ放送、ブラウン管テレビ
後に個人が録画したり作品のソフトが販売されるようになるまでは
決められた上映時間や放送時間に合わせてその場にいなければ
鑑賞できなかった。様々な高画質のデバイスを持ち鑑賞手段も
多彩な今の若い世代には想像もできないかもしれない。
テレビの映画番組は「日曜洋画劇場」に代表されるように洋画を
主に放送していた。本編の前後に解説者が登場して見所や撮影時の
エピソードを話してくれるのが毎回楽しみだった。
他に、日本だけの慣習なのか以下のような特徴があった。
・声優さんによる日本語吹き替え版
・CMのため何度も中断
・放送時間枠に収めるためテレビ局が独自に編集(カット)
・ワイド画面の映画もテレビの縦横比にトリミング
「ローマの休日」のテレビ版と映画館で観た”完全版”とで印象が
違うのは上記のことが少なからず影響しているだろう。
とは言え家庭で気軽に映画鑑賞させてもらえた事には感謝したい。
多くの過去の名作の内容を自分が知っているのはテレビの映画番組の
おかげだ。
「ローマの休日」公式サイトで告知しているように、今回の上映では
本編の前後に「日曜洋画劇場」当時の淀川長治さんの解説映像が
上映される。あの懐かしい名調子が聞けて良かった。
こんにちは😃、
共感コメントしていただきましてありがとうございました😊
ドリパスは、東京だけとまでは申しておりませんが、実際はそうです。なので、ドリパスに賭ける情熱がグッと減りました。
ブラウスの皺は、だいぶ目立っていましたよ。色々なことに気づけた大スクリーンでした。
『ミッドナイトスワン』にも共感コメントしていただきましてありがとうございました😊
同感です。初め感動し、あの場面は目を背けました。どうぞ、レビューをあげていただきたく願います。
また今後ともよろしくお願いいたします🤲