「分かるとメチャクチャ面白い」レッド・オクトーバーを追え! つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
分かるとメチャクチャ面白い
この作品を観るのは初めてではない。妻が未見だったので十年以上、二十年ぶりくらいの再視聴だ。
実は初見のときはそんなに面白いとは思わなかった。思い返してみると、話がよく分らなかったのだと思う。
昔観てイマイチだった作品を再視聴して、ものすごく面白かったということはよくある。初見のときの自分の映画力が全く足りていなかったのだ。割と最近見返した中だと「シリアナ」や「ダ・ヴィンチ・コード」「裏切りのサーカス」などがそう。
どの作品にも共通していることとして、物語が複雑であることだ。
集中力、理解力、人物認識、場合によっては政治や情勢や文化、時代背景などへの理解、こういった総合的な知識や理解力が一定に達していないと分からない映画というものはある。
この作品において重要なことは、まずキャラクター認識だ。
そして、それぞれのキャラクターの思惑をしっかり理解することがカギとなる。それら思惑は、テレビドラマやアニメのように口に出して言ってはくれない。状況的に「言えない」が正しい。
ソ連とアメリカだけではなく個人レベルでも「言えない」駆け引きが行われているのだ。そしてその組み合わせの多さが物語を複雑にする。
しかし、至るところで行なわれる駆け引きの多さこそが本作の醍醐味なのだ。
例えば、ショーン・コネリー演じる主人公ラミウス艦長が乗り込む原子力潜水艦の中だけでも、亡命を目論むラミウス、ラミウスと共に亡命しようとしている士官、何も知らない一般兵、姿の見えないソ連政府からのお目付け役、この四組はそれぞれ知っていることや思惑に違いがある。故に当然、駆け引きがある。
更に、ソ連政府、アメリカ政府、CIA長官、もう一人の主人公ジャック・ライアン、ラミウス艦長の元部下、ライアンが乗り込む米潜水艦の艦長、少なくともこれだけの数、知っていることと思惑が違う人たちがいて、駆け引きがある。
物語が進むにつれて一部の者たちが少しずつ思惑を同一にしていくわけだが、その過程が狂おしいほどに面白いのだ。
ああ、あと、戦術的な駆け引きもあるね。潜水艦バトルのパート。こちらも中々分かりにくい。
まず何をしようとして何が起こったのか、そして、なぜそんなことをするのかは、上記のキャラクター駆け引きに関係してくる。
同時に至るところで行なわれる駆け引きの多さは尋常な数ではない。
肩書きは分からないが、アメリカ高官とソ連高官が座って話すだけのシーンがある。
あの二人がアメリカ政府とソ連政府を代表しているのだが、交わされる会話に嘘しかない。
この、嘘しかない面白すぎるシーンを分かるようになるだけでもかなり楽しく観られるようになるのではないかと思う。なにせ嘘しか言ってないからね。
この二人は少々極端だが、嘘を一度も言わなかったキャラクターは、もしかして一人もいなかったんじゃないかと思うくらい、みんな嘘ばっかり。
そして誰一人として「嘘ぴょーん」とは言ってくれない。