「ベトナム帰還兵の心を描こうとした反戦映画」ランボー asukari-yさんの映画レビュー(感想・評価)
ベトナム帰還兵の心を描こうとした反戦映画
「戦場では、100万ドルの戦車を任せてくれた!しかしアメリカに帰って駐車場の係すら任せてくれない!」
クライマックスでランボーが嘆くように吐き捨てたセリフ。これだけでランボーの置かれた状況、いやベトナム帰還兵が置かれている状況が痛切に響く・・・。本作はベトナム戦争に従軍した兵士が、アメリカに帰還後冷遇を受け、その苦しみを爆発的に描いた作品です。
ストーリーとしては、ベトナム帰還兵のジョン・ランボーは仲間を尋ねたが、戦争の後遺症で亡くなったのを聞き、近くの町に立ち寄った。しかしその町の保安官はよそ者を良しとせず、その仲間も職質と言う名の虐待を始めた。最初は黙っていたが、それを受けるたびに彼はPTSDを患っていたのかフラッシュバックのように戦地のことが頭によぎる。そして我慢できなくなった彼はついに反抗に打って出る。一度はランボーを取り逃がした警察だが、後の情報から彼は只者ではないことを知る。彼はグリーン・ベレーという米軍でも屈指の部隊に配属し、その中でも最強と謳われる英雄だった・・・てな感じです。
普通に見れば、最強軍人がただ街にやってきたのに保安官から浮浪者扱いされ虐げられ、それに対しゲリラ戦で猛反抗するというアクション映画です。しかし、この映画が公開された当時のことを考慮したうえで観ると、視点がガラリと変わります。
まず、ベトナム戦争に従軍した兵士は心的外傷ストレス(PTSD)を患う人が多かったこと。次に、アメリカ国内の世論はベトナム戦争に対し反対の声が非常に大きくなっていたこと。兵士は軍人としての職務を全うするために戦地へ派遣され、心の病を患うほどにまで戦ったのに、国に帰れば大多数を占める反戦派からバッシングを受ける・・・。
理不尽。ただその一言がよぎるんです。
ランボーの行動は、それに対する怒りやったんではないでしょうか。冒頭で紹介したセリフ、まさに彼らの心を表したものではなかろうか。崖からノースタントで飛び降りるなど(!!?)派手なアクションもありますが、自分はこの物語にじんわりとくるものがあると感じたんです。ただただ火薬を詰め込むだけやない、その裏に隠された人間としての苦しみ・葛藤を、じわっと描いているのが本作の良いところ。また敵役となる保安官も、ただの悪役ではない。なんやかんやで自分の街を愛している。ゆえに過激な行動にでているわけですが、ただの勧善懲悪的な展開になっていないところも好ポイントなんです。
映画は時にその時代のことを映し出す。歴史の本を読むように。本作は、当時のアメリカを反映した映画として、面白さ以上に価値がある映画やと自分は思うんです。