「汽車に椅子なんてないよ、皆、立って乗るんだよ。」ライフ・イズ・ビューティフル shimoさんの映画レビュー(感想・評価)
汽車に椅子なんてないよ、皆、立って乗るんだよ。
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映画「ライフ・イズ・ビューティフル」(ロベルト・ベニーニ監督)から。
戦争が激化し、ナチスの収容所に送られることになったユダヤ人の家族、
その父親が幼い息子に悟られないようにする会話が胸を締め付けられた。
前半の喜劇的な展開から、驚くような悲劇を表現した後半の流れ、
鑑賞後、そのギャップの大きさに印象が強く残る作品となった気がする。
私が選んだのは、収容所でのいろいろな出来事よりも、
多くのユダヤ人が強制的に貨物車に押し込められ、
収容所に送り込まれる時、父親が息子についた嘘。
今から旅行に行くと言い出し、行き先を訊かれたにも関わらず、
「行く先は言わない、その方が楽しい」とおどけてみせる。
これから待っている悲惨な状況を、楽しい旅行に見せかける術は、
「汽車に椅子なんてないよ、皆、立って乗るんだよ」
「すごい行列だろ」「よく切符が取れたものだな」
「急がないと席がなくなる。僕らは予約客だぞ」などの台詞が示すとおり、
本当に幼い息子が信じるように徹底して騙しとおす。
その作戦は、収容所での辛い生活すら「ゲーム」と称して信じ込ませ、
自分の命を捧げても、息子にはこの体験を教えたくなかった父親として、
最後まで貫き通したその行動こそ、私たちの胸を熱くさせる。
収容所の強制的な労働を含む生活は、本人だけでも辛かったはずなのに、
息子の前では決して、その悲惨さを見せないその明るさは、
物語の前半に表現された、呆れさせるほど喜劇的な彼の性格が根底にある。
もし自分だったら彼のように、明るく振る舞えるだろうか、う〜ん・・・。
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