「最悪のリメイク」ユー・ガット・メール 判別者さんの映画レビュー(感想・評価)
最悪のリメイク
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もし「ユー・ガット・メール」がただのオリジナル作品だったら、何も文句は言わなかったでしょう。しかし、これがエルンスト・ルビッチ監督の「桃色の店(街角)」(1947)をリメイクしたものである以上、僕はルビッチのために怒り、涙せざるをえない。
いますぐにでも「違うだろーーー!!」と本作を撮った監督の耳元で怒鳴り散らしてやりたい気持ちをグッとこらえて、「では一体何が違うのか?」について、ストーリーの軸である男女の関係性を例に考えてみる。
「桃色の店」では男の側も職場に不満があったり、失業したりと生活が上手くいっていないのに対し、本作のトムハンクスはそこそこ大きな本屋の店主で何一つ不自由ない暮らしを送っている。だから犬猿の仲である男女の衝突が「桃色の店」と比べてイマイチなのだ。女の側は切羽詰まっているのに、トムハンクスは生活に余裕があるから、女はただ嫌味ったらしく映り、トムハンクスはそんな彼女をからかって遊んでいるようにしかみえない。ゆえに、二人が最後に繋がった時の感動が皆無である。
たったひとつ、男女の関係性ひとつとってもストーリーの盛り上げ方が全然違うし、「桃色の店」を観ている時に感じる胸の苦しさと観終わった後に味わえるあの多幸感は本作のどこにもなかった。どこにも、ね!!
やっと「ユー・ガット・メール」への怒りがおさまったと思ったら、今度は「桃色の店」を思い出して涙が止まらない。
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