モン・パリ(1973)
劇場公開日:1973年12月15日
解説
パリの下町モンパルナスを舞台に、男が妊娠するという“人類が月面を歩いて以来の最も重大な出来事”がまき起こすコメディ。「哀しみの終るとき」「ひきしお」に続くドヌーヴとマストロヤンニが共演する三作目。製作はレイモン・ダノン、監督・脚本は「ロバと王女」のジャック・ドゥミー、撮影はアンドレアス・ヴァインディング、音楽はミシェル・ルグランが各各担当。出演はカトリーヌ・ドヌーヴ、マルチェロ・マストロヤンニ、ミシュリーヌ・プレール、マリサ・パバン、クロード・メルキ、アンドレ・ファルコン、モーリス・ビロー、アリス・サプリッチ、レイモン・ジェローム、ミシェル・ルグランの息子のバンジャマン・ルグラン、特別出演としてミレーユ・マチューなど。
1973年製作/フランス・イタリア合作
原題または英題:L'evenement Le Plus Important Depuis Que L'homme A Marche Sur La Lune
配給:東和
劇場公開日:1973年12月15日
ストーリー
パリの下町はモンパルナスに、一組の恋人が住んでいた。男の名はマルコ・マゼッティ(M・マストロヤンニ)、自動車学校の経営者だった。女の名はイレーヌ(C・ドヌーヴ)、ひとり息子のルカ(B・ルグラン)がいる小さな美容院のマダム。彼女の輝くような金髪はお客様の憧れの的だった。いずれ正式な結婚を、とは思っていたがお金もヒマもなかった。それでも二人は充分に幸福だった。ところで、この数日間、マルコは身体の具合が悪くて悩んでいた。吐き気、目まい。折角イレーヌとルカを連れてミレーユ・マチューのリサイタルを聴きにきたというのに、また気分が悪くなるという始末だった。そんなマルコの身を気づかうイレーヌは、大きな瞳に涙を浮かべて“あなたが死んだら生きていけないわ、お願いだからお医者様に行くって約束して”と哀願する。女の涙に弱いのは男のつね。マルコは早速女医のドラビーニュ(M・プレール)のもとを訪れた。その診察の結果、なんと驚くなかれ、妊娠だという。産婦人科の権威ショーモン(R・ジェローム)先生の診察でも確認され、妊娠四ヵ月。もはや間違いはない。この日から、マルコとイレーヌの生活は一変した。世間は“人類が月の表面を歩いて以来の最も重大な出来事”に大騒ぎ。男たちは寄るとさわると赤ちゃん談議に熱中した。そんな騒ぎをよそにマルコのおなかは日ましに大きくなっていったが、はじめのうちこそイヤがっていたイレーヌも今では彼の出産が待ちどおしい。こうなれば、生まれてくる赤ちゃんのためにも正式に結婚だ。正式に籍を入れて、イレーヌに棄てられないようにしなければ、と本気で考え込むマルコだった。ある日、彼はマタニティ・ドレスのモデルを頼まれた。これから増えるかもしれない男性の妊娠にそなえて、早くも妊夫服の製造にふみきった会社からのもの。やがてパリの町中が、マルコの妊夫服姿のポスターでいっぱいになり、男性妊娠第一号のマルコはテレビや雑誌の取材に大わらはだった。彼の妊娠発見者ショーモン先生は、永年の研究が実証されて大喜び、国際会議に出席して、物質汚染によるホルモン変調説をブチまける。だが、あとは出産を待つだけのマルコに大きな心配事がふってわいた。おなかの中に赤ちゃんのいる気配がないのだ。だが、この心配は七ヵ月になって可能になったレントゲン撮影によって解決した。マルコのおなかのふくらみは単なる肥満。ショーモン先生が研究熱心なあまり間違えたのだ。とんだ人騒がせな見たて違いに、いまや恥ずかしくて町も歩けないマルコとイレーヌ。でも愛しあう二人にそれはどうでもいいこと。この赤ちゃん騒動のおかげで、彼らの結婚式がやっと決まったのだから……。真っ白なウェディング・ドレス姿が艶やかなイレーヌ、黒い正装がよく似合うマルコに誰もがうっとり見惚れていたとき、急にイレーヌの気分が悪くなった。「あたし、赤ちゃんができたみたい……」