「奇想天外とは、このこと!」未来世紀ブラジル kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
奇想天外とは、このこと!
午前十時の映画祭11にて。
昔々、私が学生の頃、新宿歌舞伎町の映画館でモンティ・パイソン3本立て(だったかな?)のオールナイト上映があった。
『バンデットQ』以降『未来世紀ブラジル』直前だったと記憶する。
当時、ちょっと映画通を気取った若造(=私)たちは、『バンデットQ』のテリー・ギリアムが、幼い頃の記憶に微かに残るモンティ・パイソンの奇っ怪なアニメーションのクリエーターだったと知って、モンティ・パイソンを伝説のムーブメントかのごとく崇めていた。
確か、次作『未来世紀ブラジル』の情報は海外から入ってきていて、若造たちの期待値が上昇していた時期だったと思う。
で、そこで観たモンティ・パイソンの内容は全く覚えていないのだが…😅
くだんの若造たちの熱狂をもって公開を迎えた『未来世紀ブラジル』たが、巷ではロバート・デ・ニーロが珍妙な役で出演していることが話題だった程度ではなかったか。
主題曲として用いられた「ブラジルの水彩画」から採用された映画のタイトル『Brazil』に特段の意味はないのだが、邦題を『未来世紀ブラジル』にしてしまったことで、意味があるかのように誤解されたフシがある。確か、「ブラジルとは南米の国のことではなく、理想郷という意味」みたいな説明があった気がする。「ブラジルの水彩画」は、ブラジルの美しさを歌い上げた(のだと思う)サンバのスタンダード曲で、日本人でも大抵聴いたことがある曲だ。リオ五輪開会式でブラジルチームの入場時に使われていたから、ブラジルでも国民的な歌なのだろう。だからと言って、「理想郷」的な意味はい…と思う。邦題をつけた配給側のこじつけだったのだろう。(記憶違いなら申し訳ない)
初観賞時は、期待に違わぬ強烈なイメージの具現化に感動すらしたし、奇想天外な小技の畳み掛けに心踊ったものだ。
ダクトの隠喩を仲間内で議論したりもした。
今回見直してみても、衝撃は色褪せていなかった。今日に至ってもギリアムのイメージ世界は真似することすらできない、圧倒的なハチャメチャさだった。
このギリアム印の映像バラエティーは、次作『バロン』にも引き継がれ、若造たちの熱狂は頂点を迎えることになる。
今回、本作が午前十時の映画祭にラインナップされたことは、正直意外ではあった。
映画史に一定の爪痕を残した作品に数えられたことは嬉しい限りだし、何より劇場でもう一度観賞できたことに感謝したい。
日本国内で昨今流行っている“悪ふざけ映画”の製作陣は、よぉ〜っく見習ってほしいと思う。
さて、その後のギリアムは『フィッシャー・キング』でも異彩を放ったが、若造たちは若造に毛が生えた者たちになろうとしていた。
そして、『12モンキーズ』でとうとう世間を振り向かせてくれたが、次世代の若造たちに熱狂することは譲って、若造に毛が生えた者たちは腕を組んで頷きながら観賞するのだった。