マディソン郡の橋のレビュー・感想・評価
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恋に年齢は関係ないが、この悲恋への決着の付け方は歳を重ねているからこそできたのだろう
午前十時の映画祭11にて。
男女の恋愛を描く映画では、二人が恋に落ちる様子を限られた尺でどのように見せるかが重要だったりする。
この映画はそこを見事に描いてみせた時点で、映画そのものの成功を決したと言えるのではないだろうか。
出会いから別れまでがたった4日間だというのは映画では珍しい設定ではないが、出会って何となく惹かれ会う1日目、互いに再開を強く望む2日目、そして結ばれるその夜までの丁寧な描写に、脚本と演出のレベルの高さが現れている。
中西部の片田舎のオバサンになりきったメリル・ストリープが、浴槽に浸かって、さっきまでここでイーストウッドがシャワーを浴びていたのだと思いを巡らすシーンが素晴らしい。恋へのときめきを「エロティック」だと表現するモノローグとともに、恍惚感すら表すストリープの表情。浴槽から見上げるシャワーヘッドから滴り落ちる雫をも色っぽく感じさせる。
スピルバーグのアンブリンとイーストウッドのマルパソの共同製作だが、もしスピルバーグが監督だったら、あんな情緒豊かな描き方はできなかっただろう。
そして、別れのシーンもまた丁寧だ。
短い時間に様々な葛藤が渦巻く熟年女の揺れ動く心を表現した脚本と、メリル・ストリープの演技の素晴らしさ。
イーストウッドが去っていったその道を、夫と子供たちが逆にたどって戻ってきたとき、ストリープが家族に笑顔を向けつつもその道を見やる。誰の姿もないその道をストリープの目線で一瞬映して、切なさを演出する。
クライマックスは雨中のすれ違いのシーンだ。車に乗り込んだ後はイーストウッドの表情を映さない。ルームミラーにペンダントをかけて見せることで、ストリープの心に永遠の愛を誓いながらも別れを受け止めたことを語りかける。
夫が運転する車の助手席で、ストリープは再び葛藤する。そして、耐えきれず涙を流すが、夫はその変化に気付くのだ。
このシーンは、数ある恋愛映画の中でも屈指の名シーンだと思う。
女は、田舎での生活を続けることを選び、一瞬で燃え上がった不倫の愛を心に留めつつも、罪のない夫を愛し続けることを誓ったのだ。
年老いて病床に伏せる夫がストリープに夢を叶えてやれなかったと詫びる会話もまた、この脚本の素晴らしいところだ。夫に寄り添い愛していると告げるストリープに決して嘘はない。
たった4日間の不倫は、環境はそのままであっても家族や町の人たちとの関わり方を変化させただろう。二度と逢うことがないイーストウッドを思い続けながらも、夫をそれまで以上に愛することができた。それが熟年の恋だったのではないだろうか。
それを、今や中年となって夫婦の微妙な問題も体験した息子と娘は確りと受け止めた。
原作の小説は世界的なベストセラーだが、あざとく泣かせる物語で、撮る人次第ではそのままの泣かせる映画で終わっただろう。
そうならなかったのは、監督クリント・イーストウッドの演出力と彼が選んだリチャード・ラグラヴェネーズの脚本、メリル・ストリープの奥深い演技の賜物だ。
自分も歳取った
生涯にたった一度の確かな愛
ベストセラー小説を映画化した恋愛巨編で中年男女の4日間の恋を描いた作品。ただの不倫映画ではない名作ならではの雰囲気を随所に感じました。
往年の名優クリント・イーストウッドとメリル・ストリープ、大御所2人の共演も素晴らしくスクリーンに引き込まれます。ラストに近づくにつれて盛り上がる展開も抜群。
(午前十時の映画祭にて鑑賞)
2021-61
屋根付き橋を渡る姿は見えない
やっぱりいい
午前十時の映画祭で観賞。
アイダホの農場の主婦フランチェスカ(メリル・ストリープ)は単調な日々を送っていたが、夫リチャードと二人の子供たちが子牛の品評会のため出かけ、4日間一人きりで過ごすこととなる。
そこへ屋根のあるローズマン橋の写真を撮りにやってきたカメラマンのロバート(クリント・イーストウッド)がやって来て、道を尋ねられた。世界各国を旅しての面白い話などから彼の魅力に惹かれたフランチェスカは、彼を夕食に招待する。ドアの締め方など細かな配慮も出来、二人はデートの末、恋に落ち、そのままベッドを共にする。
最後の夜、ロバートから、一緒に来てくれ、と言われ、フランチェスカは荷物をまとめるが、家族を思い、結局ついて行かなかった。
夫リチャードの死後、フランチェスカはロバートに連絡を取ろうとするが、会社も辞めて消息不明で連絡は取れなかった。何年か後に、弁護士を通してロバートの遺品が届く。そこには、手紙やフランチェスカが彼に手渡したネックレスとともに『永遠の4日間』という写真集が入っていた。
フランチェスカの死後、彼女の遺品のノートには「人生の全てを家族に捧げた。せめて残りの身は彼に捧げたい」という遺志が記されていた。息子と娘の兄妹はようやく母の遺志を理解し、遺灰は、ロバートの遺灰と同様、ローズマン橋の上から撒かれた。
アメリカ・アイオワ州マディソン郡でたった4日間に生涯の恋を見つけた中年男女の愛の物語。
クリント・イーストウッドとメリル・ストリープの名演技での切ない恋が素晴らしい。
久々に大画面で観賞したが、やっぱりいい。
田舎で自分が居なくなった場合の残された夫や子供達の事を考えて思いとどまるフランチェスカの表情が切なくてなんとも言えないくらい良かった。
アイダホへ行ってみたいと思っているが、まだ行けてないので、いつかロケ地巡りをしてみたい。
90年代の傑作。映画好きならマストの作品。
不倫映画だよね?
マンジャーレ、カンターレ、アモーレ
「食べて、歌って、愛し合う」ただそれだけで幸せ。イタリアにそういう言葉がある。
地の果てでも、美味しい食事と素敵な音楽、そして愛する人がいれば人生は幸せなのだろう。
旦那との日常にマンネリ化していた主婦のもとに現れたリベラルな写真家の男。家族不在の4日間にいけないと分かりながらも、ジリジリと惹かれあうふたり。最近でいうと「昼顔」のような世界である。
「不倫は文化」だとトレンディー俳優が言ったが、いつの時代も人間の根っこの部分に蔓延る、誰かを愛し愛されたいという欲求。ないものねだりで新しいもの好きの性。昨今それへの非難が目に余るものがある不倫を、切なくも美しく描いている映画。
肯定も否定も価値観は人それぞれだが、倫理と人類愛の狭間で揺れる、不倫についてのひとつの最適解がこのなかにある気がする。現代ではヒッピーの延長上に、ポリアモリーの文化も拡がる。
そしてこの作品を観て、改めて映画は時代を刻み込むものだと感じた。歴史は感じても決して色あせない。その時代その時間に生きた人たちがいるから、いつ観ても生々しい。
恋する気持ちも一緒ではないだろうか。人はいくつになっても恋したい生きものだ。
それと、やっぱり手紙の文化はいいよね。いまやどこにいてもいつでも連絡が取り合えてしまう世界。どうやってもう一度あの人に会えるのだろうか、ズキズキしながら繋がりをたぐり寄せ、その瞬間を待ちわびる感情に萌えた。
生涯に一度の恋
永遠に美しく
【男は車のバックミラーに女のペンダントを絡ませ、そぼ降る雨の中、走り去った・・。連れ合いを持つ人ならば、”何らかの感慨”を覚えるだろう作品。クリント・イーストウッド監督の力量を確認した作品でもある。】
ー 彼のベストセラーの映画化である。ー
・男:天涯孤独なカメラマン、キンケイド。 (クリント・イーストウッド)
・女:アイオワ州の片田舎で、農業を営む夫と二人の子供と平穏に暮らす、フランチェスカ。だが、今の生活は”子供の頃に夢見た生き方ではない”と気付いている。(メリル・ストリープ)
・屋根付きの橋(Covered Bridge)で二人は出会い、徐々に惹かれ合い”四日間の恋”をして、女が葛藤を克服し別れるシンプルなストーリー。
・その、ストーリーをキンケイドとフランチェスカを描く”1965年の秋の四日間”をメインに
フランチェスカの子供たちが成人した”1989年(既に、フランチェスカは亡くなっており葬儀の場面が中心)”の風景を効果的に挟みながら、物語は描かれる。
・当時、特に既婚の女性達の間で物語は読まれ、映画化された。(物語は一応、読んだ・・。余り心には響かなかった。)
・だが、私は、上記の2大スターの姿が観たくて、劇場に足を運んだ。
・感想は、
”成程・・、分かり易いシンプルな受け入れられやすい物語をほぼ原作どおりに制作したな。”
というものと、
”優れた俳優の佇まい、身に纏う雰囲気というものは、凄いものだな・・。そして、力量のある監督が撮る映画と、小説は別物になるのだな・・。”
というものであった。
<今作鑑賞後、原作のある映画を観る際には、”原作に引っ張られすぎないように”鑑賞するスタイルが身についた作品。>
『4日間』~ 情念の女
これは大人のラブストーリーである。しかも大ぴらな不倫もの。
フランチェスカ( メリル・ストリープ )は遺体を火葬し、散骨すること、生前に記したノートを息子、娘が読むこと等を遺言していた。ストーリーはこの二人がノートを音読していく形式で展開する。
家族が4日間、家を開けることになり、フランチェスカは暇になるだけでなく、この異郷での
うつろな心に空しさを感じる。そこへカメラマンのロバート ( クリントン・イーストウッド ) がトラックで乗り入れて道を訪ねる。フランチェスカは丁寧に説明し、心ときめく。何の気兼ねもなくロバートのトラックに同乗し、屋根付き橋まで案内する。そこで享楽の時を過ごす。また彼を食事に家へ招く。少し無防備と思えるが、こういう事は60年代のアメリカでは普通にあったのであろう。自然の流れとして、親密度が加速して情事へと移行するのに時間はかからなかった。フランチェスカは自己のうちにうちに秘めていた " 女 " としての情欲に目覚める。肌と肌を触れあっていた二人は一線を超えてしまう。彼女は夫にない魅力に惹かれたのかもしれない。意見のすれ違いが一時あったにせよ、二人は分ちがたい仲になっていた。だがロバートが駆け落ちを促したが、彼女は家庭と家族を背に負っていることを知る故に、踏みとどまる。最後の日、ロバートは去る。家族が帰ってきたからとはいえ、彼女の心はロバートに就縛されたまま。フランチェスカの生涯で最も情念の炎に焼きつくされた4日間であったといえる。
恐怖、人妻不倫推奨映画。 夫と子供がいない間に、ふと訪れた男に欲情...
恐怖、人妻不倫推奨映画。
夫と子供がいない間に、ふと訪れた男に欲情する。純愛を装っているが、こんなの日常に不満を抱く人妻の夢見物語だよね。それが証拠に男は女を一生一途に想い続ける。あるか!現実ならそんな男は単なる遊び人でしかない。
そう、決して人妻は悪者にはならず、私に満足しつつ死んでゆくのだ。ほぼ胸糞と言っていい(笑)
受け入れるのか!子供たち。私なら絶対墓場まで持っていけ、と怒るだろう。
なんとも哀れなのは生涯付き合わされた夫である。この夫も彼女に謝意を述べつつ死んでいくのだ。なんと女に都合のいい話。
これ見て夢を見ている人妻たちよ、忠告しておこう。鉄槌を食らうぞ!(笑)
イーストウッド、ちょっと歳行き過ぎ。メリルもちょっと大きすぎ。イーストウッド、これは自分以外を主演にして欲しかったかな。そんなにメリルがよかったか(笑)
『4日間 』~ 情念の女
これは大人のラブストーリーである。しかも大ぴらな不倫もの。
フランチェスカ( メリル・ストリープ )は遺体を火葬し、散骨すること、生前に記したノートを息子、娘が読むこと等を遺言していた。ストーリーはこの二人がノートを音読していく形式で展開する。
家族が4日間、家を開けることになり、フランチェスカは暇になるだけでなく、この異郷での
うつろな心に空しさを感じる。そこへカメラマンのロバート ( クリントン・イーストウッド ) がトラックで乗り入れて道を訪ねる。フランチェスカは丁寧に説明し、心ときめく。何の気兼ねもなくロバートのトラックに同乗し、屋根付き橋まで案内する。そこで享楽の時を過ごす。また彼を食事に家へ招く。少し無防備と思えるが、こういう事は60年代のアメリカでは普通にあったのであろう。自然の流れとして、親密度が加速して情事へと移行するのに時間はかからなかった。フランチェスカは自己のうちにうちに秘めていた " 女 " としての情欲に目覚める。肌と肌を触れあっていた二人は一線を超えてしまう。彼女は夫にない魅力に惹かれたのかもしれない。意見のすれ違いが一時あったにせよ、二人は分ちがたい仲になっていた。だがロバートが駆け落ちを促したが、彼女は家庭と家族を背に負っていることを知る故に、踏みとどまる。最後の日、ロバートは去る。家族が帰ってきたからとはいえ、彼女の心はロバートに就縛されたまま。フランチェスカの生涯で最も情念の炎に焼きつくされた4日間であったといえる。
全66件中、21~40件目を表示