「痛快」ペイルライダー 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
痛快
シェーン(1953)のアレンジ+リメイクで傑出した映画が東西にある。東は遙かなる山の呼び声(1980)で西は本作だと思う。わたしはこれをダビングしたVHSで繰り返し見た。亭主が荒っぽい奴を拾ってきたと思ったらクレリック襟なのでプリーチャーと呼ばれる。いっけん西部劇だがキリスト教の神話を翻案したファンタジーとしてつくられた。だが、その気配はほとんどない。もし気配がある──とすれば、ヒーローの活躍に、危うさがまったくないところ。やられそう、とか、いったんやられるとか、形勢不利がまるでない。ようするにヒーローが無敵。この方法は観衆の安心につながる。後年イコライザーを見たときペイルライダーを思い浮かべた。ぜったいに大丈夫なヒーロー像ってのは、あんがい珍しい。はずである。
繰り返し見たシーンは雑貨屋の店先に売られていた白木の棍棒で与太者たちを伸すところ。「パコーン」と(音がするようで)爽快だった。いっぱいあるがもうひとつあげるとラストちかく。街に乗り込んで最終決戦をする直前、亭主はプリーチャーの心遣いでわざと置いてきぼり(馬を逃がされ)にされ、悪漢は全員プリーチャーがやっつけた──と思いきや、さいごの一人が銃口を向けている。そいつを亭主が撃って、終わる。
Long walk.(だいぶ歩いたな)(馬をうしなっていたから歩いて街にやってきた──ので)。マイケルモリアーティがyepと答える。pは発音しなかった。なんども見た。語り尽くせない。黙示録の四騎士が元にあるそうだがどこまでも痛快な西部劇になっている。ペイルライダーやほかの数本の映画を思い出すときVHSの断捨離を後悔する。ことがある。
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