劇場公開日 1980年4月26日

「憧れと嫌悪と」ヘアー あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0憧れと嫌悪と

2018年8月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

男性の長髪ヘアー
今ではメタルロックのバンドマンぐらいしかいない
つまり、それはメタルロックの記号だ
しかし50年昔は、社会通念に反抗する若者たるを主張するための記号だったのだ
それが本作のテーマでありタイトル名なのだ
オリジナルのミュージカルから、10年後の映画化だから、79年のこの頃には長髪ヘアーの持つ意味はサーファーの記号になっていた
もはや社会通念への反抗なんてどこにもなかった
本当のサーファーですらなくディスコでモテる為のサーファー風の長髪サラサラヘアーであって陸サーファーだった
本作は当時を懐かしんで作られたものだ
それ以上の意味は何も無い

そもそも本作を見れば分かる通り、社会通念への反抗?そんなものは初めから在りもしなかったのだ
単なる無軌道、無責任、甘え、モラトリアムの時代だったのだ
単なる反抗期のヒステリーだ
麻薬、フリーセックス、男女の共同生活……
本作を観ていてヒッピー達の行動や言動に呆れ腹が立ってくる
こんなことが許された時代だったのだ

本作に登場する主要な人々は今はもう70代だ
彼らは社会を混沌とさせ、米国を麻薬戦争の中に放り込んだ、社会をユルユルにした世代だ
今がこうなってしまった責任がある世代だ
そのような激しい嫌悪の視線で観てしまう

しかし、憧れだったのだ
自由と平和、ラブ&ピース
音楽、ダンス、自由な恋愛はクラクラするほど眩しく、事にこの時代の音楽には憧れがあった
冒頭とエンディングにかかる曲アクエリアスは68年の世界的ヒットで日本でも商店街で流れる程にヒットしたのだ
彼らがいなければもっと息苦しい世界だったろうことは疑いようもない

しかし、半世紀を経て今の若者達には同じ事は許されないのだ
そんな余裕は今の社会には許されていない、残されていない
まかり間違えばマッドマックスの世界が直ぐ壁の向こう側にあるのだから

今70代になった彼らはこの現代のありさまと現代の若者達の姿を見て何を思うのか

彼らはキレる老人にいまなっている
高齢の左翼老人なのだ
彼らの名前は団塊の世代だ

あき240