ブルックリン横丁のレビュー・感想・評価
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親として必要なこと
家事や教育に日頃から口うるさい母親ケイティよりも、優しくて愉快な父親ジョニーや伯母の方が、子供たちに人気があるのは当然のことだ。だが母親のケイティの口うるささは、親として成さねばならない面倒なことを彼女が一身に引き受けている以上、当然の部分もある。逆に父親のジョニーが優しいのは、そういった面倒なことを母親に押し付けて、自分は口うるさく言う必要が無いからでもある。言い換えれば、母親は嫌われ役を買って出て、父親は美味しいとこどりしている様にも見える。
だが、一見すると駄目なジョニーや伯母(ケイティの姉)の言動には、教育の本質を捉えている部分もある。例えば伯母の「厳しいだけじゃ駄目」というケイティへの忠告は、親の視点ばかりで子供の視点を忘れた妹に対する、深い意味が込もった言葉だった。ケイティには、表面的にはこの言葉の意味が理解できても、腑に落ちてはいなかったはずだ。だが、ジョニーの死により、自分が父親と母親の役割を両方担わなければならない立場になってみて、ケイティはようやくこの伯母の言葉の意味を本当に理解したのだろう。自分は忙しさを言い訳にして、娘の作文すら読んでいなかった。今までの自分は、子供たちに対して一方通行な接し方をしていたのだと。彼女は親として本当に大切なことを学んだのだった。
私見では、厳しい教育って一定以上は意味を成さないような気がする。厳しい教育が意味を成すのって、教育を受ける側が教育者に尊敬の念を持ち、その厳しさから学ぶ意思があるという条件付きなのではないだろうか。そして、教育を受ける側のキャパシティや成長意欲も人それぞれなので、厳しさが必要な度合いも人によって変わってくると言える。その、相手が教育を受け入れる下地を作るのが、ジョニーのように子供(相手)の視点を持った日頃のコミュニケーションだと言える。これが無いと一方通行なやり取りになりがちで、厳しい教育もあまり意味を成さないように思う。
福山雅治主演の『そして父になる』という邦画があるけれど、テーマ的にはそれの母親版みたいな映画だなと思った。あと、前回観たときはそんなに印象に残らなかった今作だが、多分前回観たときより成長したのか、家族の絆を丁寧に描いた感動作だと感じる鑑賞となった。今作が『波止場』のエリア・カザン監督なのも知り、彼の他の作品にも興味が出てきた。
アニー・ローリー
舞台演出家として評価されたカザン監督の
1945年の映画デビュー作品
原作はドイツ系のベティ・スミスの小説
20世紀初頭にブルックリンで暮らす
アイルランド移民2世の家庭と
そこの娘フランシー・ノーランの成長が描かれる
(原作者自身の姿が投影されている模様)
カザンもギリシャ移民の子供で苦労したようだが
彼やスミスのアイルランド系への見方
(歴史や文化、暮らしぶり)も感じられて面白かった
新世界へ夢をつないだアイルランド移民の現実
(底辺からのスタート)とそれが引き起こす亀裂
大陸横断鉄道の建設に従事したことは有名で
I've been working on the railroad
なんて歌い飛ばすしかなかった境遇が
父親の姿に重なります
ラストは学校を卒業した
はしっこく こましゃくれた子供たちが
新しい命とともに
次のステージに移ったことを暗示していました
俳優たちが皆、いい感じでしたが
ほんとにアル中だったジェームズ・ダンの演技が
やっぱり真に迫っていて
その傷つきやすさと痛みが感じられました
リアリティのある映像の中に
監督の骨太なメッセージと力量が感じられます
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