豚小屋(1969)
劇場公開日:1970年10月24日
解説
人肉を喰う飢えた若者と、豚とのセックスの果てに豚に喰われてしまう若者。この二つの話が、同時進行のかたちで描かれるという、ユニークな構成をもった作品。監督・脚本は、「王女メディア」のピエル・パオロ・パゾリーニ、撮影は「世にも怪奇な物語」のトニーノ・デリ・コリと「天使の詩」のアルマンド・ナンヌッティ、音楽は「続さすらいの一匹狼」のベネデット・ギリア、衣裳はダニノ・ドナティがそれぞれ担当。出演は「めざめ」のピエール・クレマンティ、「夜霧の恋人たち」のジャン・ピエール・レオー、「バルタザールどこへ行く」のアンヌ・ヴィアゼムスキー、「バーバレラ」のウーゴ・トニャッティ、「アポロンの地獄」のフランコ・チッティ、「女王蜂」の監督であるマルコ・フェレーリ、ほかにアルベルト・リオネロなど。
1969年製作/イタリア
原題または英題:Portile
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1970年10月24日
ストーリー
いつの時代のことかわからない。荒涼とした火山灰地の高地に、ひとりの若者(P・クレマンティ)がいた。飢え、やせこけたその若者は、蝶や蛇にむしゃぶりついていた。火縄銃と兜をひろい、歩きつづけていた若者は、やがて兵士の一団と出会った。その軍勢が通りすぎて行った時、どこからか口笛がきこえてきた。若者はその口笛を吹く若い兵士の前に、立ちはだかった。兵士は恐怖におののき、逃げ出した。若者はその後を追い、二人は銃をうち、剣を抜いた。だが突然、兵士は剣を捨て、うずくまってしまった。若者は当然のように、その兵士を殺した。しばらく後、若者の周辺には、原型をとどめない肉片がちらばり、若者は無表情のまま口を動かしていた。いつの間にか、この若者のそばに、人肉を喰う一人の中年男(F・チッティ)がいるようになった。ある日、この二人のそばを囚人をのせた荷馬車が通りかかった。二人は警護の兵士を殺し、囚人女たちを仲間に引き入れ、人肉を喰う集団をつくっていった。数日後、一人の女がこの人肉集団の餌食となったが、その下男の通報で討伐隊が組織され、彼等は捕えられた。処刑の日、泣き叫ぶ仲間たちが次々と狼の餌食にされるため、杭にしばりつけられていくのをみながら、若者は十字架に接吻するのを拒否し、つぶやいた。「おれは、父を殺し、人肉を喰った。歓びにふるえた。」現代、西ドイツのボン。ユリアン(J・P・レオ)は、大実業家クロツ(A・リオネッロ)の一人息子であり、イーダ(A・ピアゼムスキー)という美人の婚約者をもちながら、何故かあらゆる興味を失い、自分の秘密の城にとじこもっていた。ある日、久しぶりにイーダが、クロツ家の大邸宅を訪ねたが、ユリアンは結婚の話をわざとさけた。またある日、クロツを、腹心のハンス(M・フェレーリ)が訪れ、意外な情報をもってきた。それはエッセンなどでクロツと同窓だったヒルトが、現在クロツの政敵であり、事業のライバルであるヘルディツェ(U・トニヤッツィ)と同一人物である、ということだった。彼は整形手術をしたのだった。そこへ、折しも当のヘルディツェがやって来た。再会を祝した二人だが、ヘルディツェは意外な事実をクロツに告げた。「君の息子は、豚とセックスをしているんだ!」。数日後、イーダが別れを告げに来たが、ユリアンは平然としていた。しばらく後、クロツ家の大広間で、クロツとヘルディツェの企業合弁の祝賀パーティが開かれたが、ユリアンはそこから抜け出し、豚小屋へ向った。パーティが最高潮に達した時、農夫たちが面会を求めて来た。ヘルディツェが彼らと会った。農夫たちは、ユリアンが豚に喰われてしまった、と話した。そこで、現場に何も残っていないことを確かめたヘルディツェは、唇に指をあてて言った。「よし! では、誰にも何にもしゃべるんじゃないぞ!」
スタッフ・キャスト
- 監督
- ピエル・パオロ・パゾリーニ
- 脚本
- ピエル・パオロ・パゾリーニ
- 撮影
- トニーノ・デリ・コリ
- アルマンド・ナンヌッツィ
- 音楽
- ベネデット・ギリア
- 衣装デザイン
- ダニロ・ドナティ