不思議惑星キン・ザ・ザのレビュー・感想・評価
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ガラクタのような惑星で
「この不快な砂の惑星に来た最初の人類だ」
作中の台詞(字幕から)の一言ですが、この台詞が作品の概要全てを表しているように思える。ガラクタのような惑星で奇妙な風習に支配された異星人、そこに訪れた地球人二人も加えて、何の魅力も無い登場人物達。嘘つきとハッタリとでまかせの連鎖。そこから抽出された純粋無垢な友情が輝かしい。そんな映画でしょうか。廃材を組み立てて作られた異世界ぶりが面白い。低予算映画かと思ったら、エキストラを集めて作った大規模シーンもちゃんとある。オカルト映画に見えて、始まりから結末まで伏線も判りやすく意外と綺麗な構成で見応えがあった。異世界での心細さにもめげず、駆け引きに挑む主役達にもハラハラさせられる。
ただ、異文化で表すことで、「お前達の習慣や日常はどうでも良いことだ」という痛烈な皮肉を感じる。それを面白いと思えるかどうか。アルファ星での経緯はエコロジストにチクリと言いたかったんだろうか。
ともすれば、不快とも思えるデザインであればこそ、純粋な何かが絞り出されたかのような、そんな映画だと言えなくもありませんでした。
クセになる珍味
自国を風刺する場合、国によってはなるべく歪曲しなければならない。粛清されてしまうから。
現代でも中国などは規制が厳しい。日本のようにエロ、グロ、ドラッグなどの規制ではない。言論の自由が規制されるのだ。
最近観た映画だと、ベトナム映画の「走れロム」が規制されて中々上映できなかったときいた。古いところだとスペイン映画の「ミツバチのささやき」などもある。
昔から今でも政権や国への批判が難しいところもあるのだ。それがソビエト連邦ならば?ちょっと想像しただけでもヤバそうだと分かる。
そこで作られたのが本作「不思議惑星キン・ザ・ザ」であるが、その隠し方がぶっ飛んでる。何をどう考えたらこの作品になるのか。
高校の文化祭でももう少しいいもの作れそうなほどのチープなセット。わけのわからない物語。そして、わけのわからないキャラクターと、わけのわからない風習。
これらはすべてソビエトの風刺であるが、一番最初に言う「資本主義国か?」のセリフだけで躱しきる強引さもある。
わけのわからない星でわけのわからないことを見せられて、ソビエトでヒットしたことを考えても当時のソビエト連邦の人には丸わかりのソビエトへの皮肉を誤魔化しきった手腕。そして何より、そんなことがわからなくても一定の娯楽性を有していることに驚く。
もちろん、爆笑の傑作、とまではいかないが、上等なクセになる珍味なのだ。
現代のロシア人監督アンドレイ・ズビャギンツェフの作品(「裁かれるは善人のみ」など)を観ても思うのだが、国や政府を批判していても、母国を愛しているのだなと伝わってくる。批判の先に愛がチラチラ見えるのだ。
本当に嫌なら国を出ればいいのにそうしないわけだし、規制を受けても自国で映画を作ろうとする愛国心があるんだな。もちろん本作の監督であるゲオルギー・ダネリヤのことだ。
邦画で国や政府への批判的な作品だと、愛国心など欠片も感じなくて、ただ破壊したいだけなんだなと考えてしまうが、この点において本作は全く違って好感がもてる。
近々観る予定の「クー!キン・ザ・ザ」も楽しみだ。まだ観ていないので断言できないが、ソビエト連邦からロシアに乗り換え再構築したある種のセルフリメイクだ。
この想いは、ただ「クー!」のポーズが見たいだけかもしれんが。
大丈夫なの?——ソビエト親父たちの昆虫演技
製作されたソビエト連邦本国で人気爆発したナンセンスSF映画。
【ストーリー】
キン・ザ・ザと呼ばれる惑星に瞬間移動させられた二人の男が、その数まばらな現地人とまったり交流しつつ、地球へ帰る手段を模索する。
ロシア映画そのものが異世界交流に近い文化の差があるんですが、ギャグとなると、最初はどこで笑っていいのか見当もつきません。
それでもロシア人のおっちゃんたちが昆虫の求愛行動みたいなポーズしながら「クー!」とさけぶ序盤から、二人の鼻にちいさいカウベルみたいなのをつけられて意思の疎通ができるようになった中盤、そしてやっと話が展開する終盤へと、理解がすすむたびにこの作品への愛もジワジワ高まってきます。
最初は困惑しかなかったんですが、時間とともにロシアンギャグがジワジワしみ込んできて、後半はなにやられても変なツボに入って笑ってしまう状態に。
「もうなんなのこれ、こんな変な映像で笑いたくない!」
と抵抗するも、負けてしまうヘンテコさ。
ナンセンスさがきもちよくなってくる開放感は、砂漠という舞台ゆえかも。
ロシアの街並みで同じやり取りされたら息苦しいだけですけど、空の広い空間だと何だかウホッと楽しくなってくる。
80〜90年代まで貧困と抑圧に耐えていた旧ソ連人たちも、この黄土色の画面に何らかの救いを見出したのかも。
なんてかなり失敬な見解をいじくり回してみたりしてました。
もうとにかく世界観が異常すぎて、俳優の演技について細かく語る気力もわきません。
ストーリーもナンセンスだから何かの欲求を満足させてはくれません。
それでも、こんな変な映画なのに、世界観だけは強固に作られてます。そこがいい。
テンションの低いもの悲しさと、乾いた妙なおかしみが全編に横溢してます。
吉田戦車とか好きな人には理解できるかなあ。
映画に知性や理知を求める人は、楽しめないかもしれません。
この映画を誰と見たいか、とか、誰に薦めればいいのか、とかはまったく思いつきません。
あなたが映画ファンで、トイレに流しても惜しくない2時間15分が空いたなら、自分試しにどうぞ。
なんだこの推薦文。
ソビエト連邦末期の空気感をまとった良作
全くのSFながら、描かれている内容は、階級によって統治された国家と人種間差別のカリカチュア。そこに、道徳感、家族愛、同志としての友情の芽生え、虐げられたられた者のしたたかさ、ロシア人の誇りなどをブランドして、レトロフューチャーな味付けを施したカルトムービー。
ソビエト連邦という国の中で、このような映画が作られたことに驚いたが、制作年代をみると、まさに「ペレストロイカとグラスノスチ」の時代。社会主義の行き詰まりを感じつつ、資本主義への懐疑と羨望の入り混じりがうかがえるセリフも出てくるなど、この映画が生まれた当時の空気感が味わえる。
カルトムービーといっても、内容にはこれといった破綻はなく、出てくる造形物の一つ一つもチープでありつつクオリティが高くて見飽きない。
きっとこの作品に影響を受けたのかなと思われる映画も、いくつか思い浮かんで楽しかった。
世界観を飲み込めれば、全編楽しく見られる良作。
コメディなのか?
本気でやって結果コメディなのか、元からコメディを作ろうと思ってるのか、いろいろと分からなくなってくる作品。ところ変われば価値観も大きく変わるので、旧ソ連では面白いのかもしれないけど、資本主義社会でではなかなか出てこない発想だと思う
不思議な世界観がたまらないのだけど、長い
とにかく長いし、耐えられなくもなる。が、クセになる。
異文化だなぁ
クー!
絶対やりたくなるご挨拶やね。
忽然と現れたどう見ても地球人なんだけど異星人の持つ空間移動装置で、いきなりキン・ザ・ザ星雲の砂漠の星プリュクに飛ばされてしまったエンジニアのマシコフとバイオリン弾き?のゲデバンの二人が、プリュクに住むチャトル人とパッツ人の二人に拾われるところから話は始まる。
小太りのチャトル人ウエフと大柄なパッツ人ビーの二人はどう見ても普通の地球人のおじさん、しかも見た目も同じような感じなのだが、支配階級のチャトル人と被支配階級のパッツ人の立ち位置。何故が地球人はパッツ人と同じ扱いに。しかもチャトル人かパッツ人かを調べるのは、ショボい通信機のようなもので、人に向けてボタンを押してオレンジ色ならパッツ人、緑色ならチャトル人、見た目じゃ全然分からんが、彼らに言わせれば明白らしい。
こんな感じで、支配する側、される側、更にその上に位置する公安的立ち位置のエツィロップそれぞれに独特のルールがあって、エツィロップに至ってはその横暴さが際立ってる。
まあ、早い話が当時のソ連のロシア人とそれ以外の人、更に権力側の人間の縦構造を宇宙人になぞらえて描いているのだが、そのルールがいちいちトンチキで、よくこんな訳わからんルールを思いつくなと感心。芸をするなら檻に入る、パッツ人は鼻に鈴を付けなきゃいけない、マッチ棒が法外な金額で取引され、地球で言う金並みに価値が高い、などなど。
これらのルールにいちいちアホらしいなぁと思いつつも笑い、だけど何となく友情っぽい絆で地球人二人とプリュクの二人が結ばれそうになりつつ…も、やっぱり最終的には相容れなかったり、あっさり裏切られたり。
この辺の信用できなさ、薄情さもなんとなくかの国の特徴なのかもなぁと思ったりしながら観た。
しかし、この映画が製作されたのがソ連の崩壊末期、作風はなーんとなく政府やその他諸々を批判しているような作りになっていて、もしかしたら今のロシアよりも自由だったりして、なんて考えてみた。
歴史は繰り返される。一周回って元通りなのかな、この世の中は。
映画としては、違和感をいっぱい楽しむ、笑い飛ばす。
世界観は唯一無二で私は面白いと思った。
観ないと損する映画
いろいろとすごい映画でした。
・物語 奥さんに買い物を言いつけられて街にでた主人公のおっさん。見知らぬ若いグルジア人に宇宙人を名乗る奇妙な人がいると声をかけられ、ひょんなことから不思議な惑星に飛ばされ、地球に帰還するために命がけの旅をする~という感じで始まりますが、いきなり爆笑しちゃいました。役者と一緒にポカんとしてたと思います、自分も。一瞬にして観客と一体化、共有化させるこの導入の仕方はすごいと思いました。まあ、それからその惑星の人たち、身なりはまあアレなんですけど、不思議な科学力に知力ももっているというすごい設定ですけど、妙に説得力があるんですよねえ。なんだろ、あれ。
・残念なところ
1)冒頭、ロシア語の文字に訳語が一切ないのでなんのことやらわかりません。ロシア語難しいw
2)画面の繫ぎ合わせが雑。
3)ギミックが残念、だが、それもまたこの映画の味
さて、彼らはキン・ザ・ザから地球に帰ってこれたのでしょうか?ぜひ、映画館でお確かめ下さい!
ソ連云々を抜きにして、面白いものは面白いです。観てよかった。
ランプに向かってクー!
ロシア映画やべー、2時間ちょっとなのに体感4時間には感じる、もうちょっと盛り上がりとかないんか
しかしなぜか面白いいつまでも見ていられる教育番組ででも流れそうなBGMのピポパポ音もクセになる
最後もなんとなくほっこりするハッピーエンド
1部と2部の繋ぎの所で、地球に戻ったバイオリン弾きが砂とかを鑑定に~云々はどういうこと?
これは凄い!!
なんだこれはの世界。明らかにタルコフスキーの影響下にある。グルジアのSFと言うのは初めて見た。凄いデザインと寓意と時間概念。立派なSFであり立派な社会風刺。低予算SFの鏡。こういうのを見たらハリウッド映画って何・って思ってしまう。映画界のスプートニクと言って良い。今年一番の傑作。
15年間気になり続けた映画は思いがけぬ良作だった。
本作の存在を知ったのは1986年。スクリーンだったかロードショーだったかの付録で「SF.ファンタジー.怪奇作品図鑑」的な小冊子を入手。目的はその小冊子だったので、本誌自体を購入したのか小冊子だけを古本屋で買ったのかは忘れた。
内容はかなり濃く、第二次大戦後くらいからの秀逸な作品は一通り網羅してあったように思う。
その冊子に載っていたのが「不思議惑星キン・ザ・ザ」だ。紹介文も非常にユニークで、鋼鉄のカーテンの向こうにあるロシアンムービーに強く心惹かれた。
しかし、結局初めて観られたのは2001年。(89年に日本公開したの、当時気付かんかったw)
15年間、ずっと「観たい!」と思い続けていた摩訶不思議なハズの映画は思いがけぬ良作であった。
知ったきっかけがきっかけだったので、てっきりロシアSF古典作品かと思ったら86年の作品だったのね。小冊子での扱いは正規ラインナップではなく、おそらく「海外新作ちょっと変な映画」を紹介するコラムのような頁だったのだな。
86年と言えばまさにチェルノブイリ事故の年。ゴルビーのペレストロイカ、グラスノスチを毎日耳にした頃だ。
ハンガリー・オーストリア国境には鉄条網がまだあったし、ベルリンの壁は壊れていなかったし、ソ連は崩壊していなかった。
60年以上も続いたソ連共産党の一党独裁。政府と党の事実上の一体化。下部組織は上部組織に従わねばならない徹底した階級差別。鉄の規律と軍事力による統制。
それらに対する痛烈な批判が本作には込められている。ここまで滑稽に描いているのは、そうでなければ当局の検閲・規制を潜り抜けられないからだ。
まぁ、初回鑑賞時はそんな世界情勢にばかり意識が向いていたが、それから更に20年後。
2021年、アニメ版と共に再鑑賞して他の観点も見えてきた。(あらやだ。35年も経つって事?w)
主演のスタニスラフ・リュブシン(Stanislav Andreyevich Lyubshin)
カッコいいじゃないかぁ!
いや、観ているうちにどんどん惹かれていって「彼なら007も出来そうだな?」と思いました。
彼は当時53歳。うむ、86〜89年に観ていたなら私も「おじさん」と思っただろうな、多分w
(※映画.comのキャスト欄、間違ってますよ〜!スタニスラフとユーリー、逆になってるよー!)
貪欲なウエフとビーに愛想を尽かしつつも、どこか憎めない2人を決して見捨てないマシコフ。漢(おとこ)だよ〜。あなた、カッコいいよ〜。
今回、アニメ→実写と連投で観た為、マシコフもゲデバンもアニメ版キャラクターより遥かに好感度が高かった。
アニメよりも、ずっと深みのある作品に仕上がっていると思う。
かなり好きな映画かもしれない、と改めて思った。
【"ママ、ママ、どうしよう・・。変なSF映画を観ちゃったよ!”奇作、怪作。不思議な映画。旧ソヴィエト連邦の全体主義をアイロニックに描いた作品でもある。】
- フライヤーによると、今作が公開されたのは1986年とあるので、ゴルビー(友達じゃないんだから・・。ゴルバチョフさんね。)がペレストロイカ政策を展開し始めた頃である。
ゲオルギー・ダネリヤ監督が今作を製作していた際には、ソヴィエト連邦の全体主義は揺らいでいなかったのだろう・・、と勝手に推測する。ー
◆感想
1.マシコフと、ゲデバンがキン・ザ・ザ星雲の惑星ブリュクに移動してしまい、そこで見たもの。
・ヒエラルキーが、明確に描かれている。
チャトル人が、ブリュクでは支配者層であり、バッツ人は被支配者層である。
そして、権力を振るうエツィロップ達。
更に、人々は”PJ様”を崇拝している。
ー 鉱山のような、地下で大勢のバッツ人達が働かされている。”PJ様”を崇拝しながら・・。ー
2.ウエフ(チャトル人)とビー(バッツ人)が乗っている梵鐘のような形の、ボロッチイ宇宙船。
ー ウエフ(チャトル人)とビー(バッツ人)の不思議な関係性。ー
3.ブリュク星の人達の言葉や、変なポーズや小物。
・クー(キュー意外の全ての表現)
・キュー(公言可能な罵声語)
ー 劇中でも、テロップで流れるが、軽く脱力する・・。ー
・媚び諂うときには、鼻に鈴みたいなツァークを装着し、両手を翼みたいに広げて、腰を低くする・・。
ー ここも、度々劇中で描かれるが、脱力・・。
ゲオルギー・ダネリヤ監督、人種差別描写で、全体主義をおちょくりまくってます・・。ー
4.ヌルーイ、スコア。
・ほにゃほにゃした音楽。時折”クー・・”と合いの手が入る・・。
ー 可なり、脱力する・・。ー
<色んな映画を観てきたが、実に不思議な映画である。
フライヤーによると、1570万人が観た!とあるが、多いんだか、少ないんだか・・。
何しろ、ソヴィエトですからねえ・・。
そして、連続して、2013年に公開された、今作のアニメヴァージョンも観てしまったのである・・。”クー!”>
<2021年8月29日 刈谷日劇にて観賞>
やじきた的な
長編コントを見るメンタルで気軽に観れる作品。
文化の違いでネタがよくわからないのはよくあることですが、そういうのを調べつつ何度もみるのもよいかもしれませんね。
家でみるのに向いてるんじゃないでしょうか。通しだと長いし
なんてシュール
低予算全開の映画、ワープとかいきなりだし笑
結構昔の作品なのね、知らなかったよ。
宇宙人が変なおっさんだったり小汚いのに妙に憎めなかったりする。
色々社会風刺的な内容みたいだがそんなの気にしなくてもまあまあ楽しめる。
ラストはなんだかちょっと寂しさと、条件反射的に出るクー
がよくわからないけど何かよかった。
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