「幻想的ロマンティシズムの美しさを極めた詩人ジャン・コクトーの映像の魔術」美女と野獣(1946) Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
幻想的ロマンティシズムの美しさを極めた詩人ジャン・コクトーの映像の魔術
詩人ジャン・コクトーを初めて知ったのは、17歳の時に偶然鑑賞することが出来た「オルフェ」だった。詩人が映画を撮るとイマジネーション豊かな映像の世界が繰り広げられて、凡人には想像できない表現があるのかと度肝を抜かれ、大変なショックを受けた。それからコクトーの詩集を一冊買って読んでみたら、ほとんど理解できずに読み終わってしまった。これは無理と想い、映画監督のコクトーだけにしようと決めたのだが、作品数は少なくその機会も限られて疎遠になる。
ただ、「オルフェ」とこの「美女と野獣」の二作品だけでも、ジャン・コクトーの偉大さは私にも理解できるのが、負け惜しみ含めて嬉しい。
童話の物語を大人の為の映画にした、この作品の幻想的ロマンティシズムを何と表現しよう。計算尽くされた照明、凝った配置の調度品などの舞台装置の完璧さ、そして撮影技術を駆使した映像美の拘りと、すべてが美しさのために創造されている。こんな映画を作れるのは、過去にも現在にもいない。詩人コクトーが映画を監督してくれたことに、ただただ感謝するしかない。
1986年 7月18日
コメントありがとうございます。また、多くの共感まで頂き恐縮です。色んなお国柄を見られるのも、映画の醍醐味ですね。
色々なレビューを拝見しましたが、文章の構成力はもちろんの事、最適な映画や監督、俳優の名前をさっと出されるGustavさんの鑑賞数と記憶力に圧倒されてしまいました。
先日禁じられた遊びを見た時に、ポーレットとミシェルのやり取りを見ながら、この作品のベルと野獣に近いものを感じました。これが淀川さん曰くの、「フランス人女性はジャリにして男のあしらいを知っている、こわい」と言うやつかなと少しおかしくなりました。