「年をとって初めてその良さが理解できた」ピアノ・レッスン(1993) nayutaさんの映画レビュー(感想・評価)
年をとって初めてその良さが理解できた
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映画館で、初めてこの映画を観たのは18歳の時。あの時は何とも言えぬ後味の悪さというか、ダークな映画を観てしまったという感想だけが残った。
今改めてこの映画を観ると、エイダと彼女を取り巻く悲惨な環境、ピアノへの狂気的な依存、ベインズとの許されざる恋、自分を理解しない(できない?)夫への虚無な感情、全てが静かな波のように押し寄せてくる。
だが後半、あれだけ人形のように押し殺してきたエイダの感情が、周囲を巻き込みながら大きく揺れ動く。その感情に、ただただ引き込まれていく。
あのメロディーも最高にいい。エイダの感情の緩急によって、静かであったり、力強く響いたり…。初めて聴いた時から、大好きでずっと頭に残っている。
ラストのシーン、エイダがやっと、初めて柔らかな笑顔をベインズに向ける。エイダと共に辛い時間を過ごしてきた気分になっていたので、幸せそうなその笑顔を見て、私も幸福感に包まれた。
不倫は勿論よくないけれど、これは不倫という簡単な言葉では括れない映画だと、私は思っている。
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