「演出とカメラが凄い」巴里の屋根の下 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
演出とカメラが凄い
初めは映画の雰囲気になかなか入り込めなかった。スリにも居場所があって皆と共存してる街なのかあとぼんやり思ったり、バッグの口が開いたまま、嫌な男フレッドにつきまとわれてるのに煮え切らないポーラは馬鹿なのか?と思ったり・・・。
でも途中から闇と光と影の映像と音の使い方が凄い!と気がついた。アパルトマンには色んな人が住んでいる。その様子をアパルトマンのバルコニーを下から上へと映して私達に教えてくれる。アルベールとポーラが初めて共に歩くシーンは、夜の石畳とそこを歩く二人の足元と靴をひたすら映すだけ。いっときの二人だけの世界が目の前に広がる。セリフがあったりなかったり。なくても何を話しているか想像がつく。店の中に人物がいてもドアが閉まっていれば外のカメラは彼らだけ映して声は聞こえない。当たり前のことなのに新鮮だった。
「結婚するんだ!」のアルベールの声に盲目のアコーディオン弾きはすぐに結婚式の音楽を弾く。アルベールはポーラを迎えるために彼女用の美しい室内履き、花束、果物、バゲットを買ってくる。それらが一気に彼の部屋の床に散らばる。床のそれらはだんだんと朽ち、ネズミに食われてしまう、その経緯を少しずつ映すことでアルベールの不在が迫る。
フレッドとアルベールの決闘場面ではナイフの格選びシーンにすごく笑えた。お洒落なユーモア!誰が見てもハンサムで若いルイがポーラに選ばれたのは半分わかりつつも、アルベールの方が男気あって女たらしでなくてずっといいんだよと、まだ子どものポーラに言ってやりたかった。最初のシーンと最後のシーンがシンメトリーで、昔の邦画をなんとなく思い出した。
全然知らない映画なのに歌だけは知っていた。
