バトルランナーのレビュー・感想・評価
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ディストピア×デスゲーム×TVショー(早すぎた)
「ブレードランナー」というSF映画がある。
年端も行かぬ子供の頃、多分親が借りてきたその作品を観て、子供心に衝撃を受けた記憶が朧げながらあった。
大人になり、改めてあの映画に向き合おうと思いDVD借りてみたら、素晴らしかった。
素晴らしかったけど、記憶と全然違う別の映画だった。
「では当時観たアレは何だったんだ」と調べたら、「バトルランナー」という紛らわしいタイトルのB級アクションだった。
ネットの評価は「ブレードランナー」ほどではなかった。「全身タイツのシュワちゃんが闘うダサい映画」。
激しい羞恥心が沸き起こり、当時の衝撃は黒歴史として封じ込めた。ずっと忘れていた。
そして十数年経ったある日、偶然にもCSで遭遇した。
評判通り、概ねダサかった。
パスワードを盗み見るだけであっさり脱獄できる刑務所。
行列を待たせるだけで通過できる空港ゲート。
主人公を追う殺し屋(ストーカー)の「サブゼロ」は日本人で体型ほぼ力士なのに武器はホッケースティック。
電気を操るストーカー「ダイナモ」の乗るバギーの見た目がほぼミニ四駆。
生存者に贈られる楽園生活は、犯罪者への恩赦としてアリなのか?etc…
設定もセキュリティもガバガバ。呆れたし笑った。
しかし同時に、子供の頃の記憶が蘇った。
冒頭で仲間の首がチョーカーの爆弾で吹き飛ばされる残酷描写に泣きそうになったこと。
TVショーは楽しく面白いはずなのに、その実態が理不尽な公開処刑で戸惑ったこと。
遊園地のジェットコースターのような楽しい乗り物の筈なのに、目的地が明らかな死地で不快だったこと。
そんな残酷な番組なのに、一般視聴者がみんな笑顔で夢中になっている様に混乱したこと。
そして、それらの理不尽の根源が、悪人や犯罪者ではない物語をうまく咀嚼できなかったこと。
当時「権力の腐敗」も「格差」も「報道倫理」も知らず、ヒーローものやリアリティショーを無批判で受け入れていた無知な子供にとっては、このような映画でも十分ショッキングだったのだろう。きっとあの時、少なからず世の中に対して新たな視点を得たのではないか。まあ10年近く「ブレードランナー」とごっちゃになってたのだけど。
とはいえ「1984年」的な監視社会ディストピアや、後の「トゥルーマン・ショー」や「ハンガーゲーム」などに連なる「歪められたTVショー」というモチーフ自体は普遍的で、現代でも通用するのではないかと思う。
内容がかなり違う原作小説(スティーブン・キング作!)もあることだし、もし本格的なリメイクがあるなら観てみたい。ひとまず原作を読むことにしよう。
あと「メタルギアソリッド3」に登場する中ボス、「ザ・フューリー」のルーツを期せず発見できたのがなにより大収穫でした。というかストーカー達全員にMGSの中ボス感があって、ダサいのに愛着湧いた。ダイナモ推し。
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