ノスタルジア
劇場公開日 1984年3月31日
解説
ロシアの巨匠アンドレイ・タルコフスキーが、イタリアで撮りあげた長編劇映画第6作。自殺した音楽家の足跡をたどってイタリアを訪れたロシア人詩人の旅を圧倒的映像美で描き、1983年・第36回カンヌ国際映画祭で監督賞と国際映画批評家連盟賞を受賞した。18世紀ロシアの音楽家パヴェル・サスノフスキーの足跡を追う旅を続けるロシアの詩人アンドレイは、通訳の女性エウジェニアを連れてイタリアのトスカーナ地方にやって来る。アンドレイは病に冒されており、旅は間もなく終わりを迎えようとしていた。ある朝アンドレイは、周囲から狂人扱いされている老人ドメニコと出会う。世界の終末を信じるドメニコはアンドレイに1本のロウソクを託し、その火を消さずに広場を渡るよう依頼する。
1983年製作/126分/イタリア・ソ連合作
原題:Nostalgia
配給:フランス映画社
スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る
2022年5月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
2022年5月20日
映画 #ノスタルジア (1983年)鑑賞
ソ連を離れ“亡命者”となったタルコフスキーの初の異国での作品であり、祖国を失ってさまよう彼の心情が如実に出た、哀しく重厚で、イマジネーションに溢れた映像詩
というのを知らないとよく分からないと思いました
2021年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
【あらすじ】
旧ソ連の詩人アンドレイがイタリアを旅する物語。
祖国に残した妻や子供への郷愁の念に苛まれながら、詩人として国家の弾圧や検閲と闘い、肉体と精神を疲弊していくアンドレイ。
そんな中、信仰により世界を救おうとするドメニコに出会い、彼に一つの願いを託される。
【感想】
美しい映像と情念深いカメラワークに引き込まれるタルコフスキーの芸術性に満ちた作品でした。
過去への郷愁と現実への諦観が交錯した世界観を生み出し、その精神世界を読み解く難解なストーリーですが、ラストに向けて信念を貫く二人の男の姿は強烈な印象を残すものでした。
ブログの方では、ネタバレありで個人感想の詳細とネット上での評判等を纏めています。
興味を持って頂けたら、プロフィールから見て頂けると嬉しいです。
タルコフスキー作品のなかで、最も映像が美しい映画だと思う。
この圧倒的映像美は絵画表現のようでもある。
そして、もう一つ重要なのは、タルコフスキーの水表現について、この作品で解が与えられたことだと思う。
序盤で映し出される絵は「懐妊の聖母(マドンナ・デル・パルト)」だ。
ルネサンス初期のピエロ・デラ・フランチェスカの作品だ。
マリアの顔が、言い方は悪いが、憮然としているように見えるのが印象的だ。
フィレンツェのサンマルコ美術館にあるフラ・アンジェリコの「受胎告知」のマリアは、戸惑いながらも、処女であり妊婦であり、母になる優しい予感もしたが、こちらは、大きくなったお腹を突き出して「なんか、神様の子供、身籠ったみたいよ」と不貞腐れているようにさえ見える。
妊娠を告げられ、戸惑いもあったが、希望もあった。しかし、お腹が膨らむにつれて、どうも何かがおかしいと疑問を持つようになった感じだ。
自分の祖国に対する希望が次第次第に薄れていく感じと重なるものを感じたのだろうか。
既に言われて久しいことだが、この作品のアンドレイはタルコフスキー自身のことだ。
そして、僕は、ドメニコはタルコフスキーの心なのだと思う。
アンドレイとドメニコの会話は、自問自答のような気がするのだ。
温泉は祖国。
温泉の湯煙は、何かを隠しているもののたとえなのだろうか。
この作品でも滴る水の音や、屋内にも降り注ぐ雨など水の表現は多い。
ドメニコは演説の中で、水は根源なのだという。
水は、万物を育み、人間が生きていくためには必ず必要なもの、拠り所になるものだ。そして、時には、悲しみなども洗い流し、浄化し、宗教的な意味も持っているように思う。
蠟燭の火は、きっと情熱だ。
ドメニコの最後の演説はタルコフスキーの心の叫びだろう。
ピラミッドは完成させることが目的ではなく、続けることが重要なのだ。
だが、ドメニコは焼身自殺し、人々はこれを傍観し、歓喜の歌が流れる。
タルコフスキーの心が死んでしまったのだろうか。
そして、ドメニコに指示された通り、アンドレイが温泉に駆けつけると、既に、温泉は枯れてしまっていた。
何かを隠すように覆っていた湯煙もほとんどなくなってしまっている。
希望はついえたのか。
そうした希望のない場所で、情熱を燃やしても、役には立たないと言いたいのだろうか。
だが、枯れた温泉ではあるが、なんとか蝋燭の火を灯すことが出来たことは、希望が潰えていないことを表しているのではないか。何も、希望はタルコフスキーだけではないと言っているようにも思える。
そして「1+1=1」は何を指し示すのか。
誰が考えても解を導き出すことが出来ない数式は、タルコフスキーのどうすることも出来ない気持ちなのかもしれない。
この作品の後、タルコフスキーは亡命する。
タルコフスキーは、ノスタルジアになるのだ。
2021年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
オープニングから絵画的な美しい霧の田園風景に圧倒される。モノトーンに近い彩度を落とした映像から教会の祈りのシーン。次はセピア調の映像と、見事なまでのコントラスト。
しかし、ストーリーもよくわからないし、詩的な表現にも全くのめり込めない。それを補って余りあるくらいの映像表現だけで充分満足なのです。ベートーベンの楽曲を中心とした重厚さも感じられますが、モノトーン映像部分での心情描写が光ります。
焼死するシーンにも度肝を抜かれ、その後ライターの火を触りながら逡巡する老人の姿。すべて絵画的。母の思い出に捧げると書かれたエンディングにもレクイエムを感じさせます。
すべての映画レビューを見る(全23件)