尼僧ヨアンナのレビュー・感想・評価
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様式美で描かれた抑制された愛情表現
幾何学的な様式美で、尼僧院にいる悪魔に憑かれた美しき尼僧・その尼僧の悪魔祓いをしようとする神父を描いたイエジー・カヴァレロヴィッチ監督の傑作。
カヴァレロヴィッチ監督は、抑制された教義に反抗するかたちで「男女の愛」=「聖職服を着ている男女の愛」を本作で描いている。
異性との愛を制約されている尼僧ヨアンナ(ルツィーナ・ヴィンニツカ)とスーリン神父(ミェチスワフ・ヴォイト)は「愛」について語るが、信仰が本当の愛の壁になっている。
そうした尼僧ヨアンナに憑りついた「悪魔」が、スーリン神父との男女の愛し合う口実を与えており、その口実=悪魔のおかげで愛し合うことができるあたりは意味深いものであったと思う。
そして、悪魔に憑りつかれた尼僧ヨアンナと接吻したスーリン神父が「悪魔は私に乗りうつった……と愛するヨアンナに伝えてくれ」とは、不思議な感覚の愛情表現。
本作の様式美を象徴しているのは、尼僧たちが一斉に「十字架の様」に床に伏せたのを俯瞰で撮った場面。こういうシーンを観ると「映画」を感じる。
ある宿屋、そこから遠くに見える尼僧院、その間の火刑台のある荒野、これだけの場所での出来事を描いている映画だが、過去に火刑とされた神父の話や映画で描かれた現在の物語、そして未来に余韻を残した顛末……一連の物語を映像美で描き切った傑作である。
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