謎の完全殺人

劇場公開日:

解説

心霊現象を利用して大量殺人をたくらむ犯人と警部補の戦いを描く。製作はマーディ・ラスタム、監督は俳優のレイ・ダントン、脚本はダントンとグレイドン・クラーク、マイケル・エンジェルの共同、音楽はウィリアム・クラフトが各々担当。出演はジム・ハットン、ポール・バーク、ジュリー・アダムス、ネビル・ブランドなど。

1975年製作/アメリカ
原題または英題:The Kirlian Force
配給:日本ヘラルド
劇場公開日:1975年12月6日

ストーリー

精神病患者エミリオがある晩、ドラゴンの像が彫られ宝石が埋めこまれている不思議な形をしたメダリオンを凝視していた。翌日、エミリオは発作的に病棟から飛び降り、自殺した。そして妖しい光を放つメダリオンは病舎で唯一の仲間だったアーノルド・マスターズ(ジム・ハットン)が受けとった。エミリオの死を契機に不可解な殺人事件が続発した。法定精神鑑定員ポール・テーラー博士が片手に猟銃を持って死に、しかもその猟銃から発射された弾丸が額に命中していた。次に看護婦のマーサーがシャワーの蛇口から噴き出した熱湯を浴びて死んだ。数時間のうちに発生した2つの奇妙な殺人事件をかかえたジェフ・モーガン警部(ポール・バーク)は、部下のソーワッシュを現場に向かわせたが、その車は自動的にスピードをあげ、そのまま谷底に転落してしまった。モーガン警部補は3つの事件が偶然ではなく、何らかの脈絡があると考えた。そして今朝精神病院から釈放されたアーノルド・マスターズのことが頭に浮かんだ。彼は溺愛する母の病気を治してやろうと医師に相談したが手術代が払えず拒否された。その医師が何者かに殺されたとき彼は無実の罪をきせられ、潔白を主張すると今度は精神病院に強制入院させられた。病院にいる間、看護婦の不行届きで母が死に、家が不動産屋に買われていた。テーラー博士はアーノルドの精神異常を立証した人、マーサーは彼の母に付き添っていた看護婦、ソーワッシュは彼を逮捕した刑事だ。モーガンは色めきたち、部下にアーノルドを監視させるとともに、次の殺人を防ぐためにアーノルドの裁判に立ち合った人のリストアップした。しかし、またしても殺人が発生した。今度の犠牲者はアーノルドの家を買収した不動産屋のサンダースだった。モーガンはアーノルドの精神担当医だったスコット女史(ジュリー・アダムス)と共にアーノルドを訪ねた。アーノルドは死人のように深く眠っていたが眼をさますと、叫んだ。「レモノウスキーの店で特売がある」。3人はしまったと思ったが既に遅く、肉屋のレモノウスキーは肉裁断機で切りきざまれていた。アーノルドが再び深い眠りに入ると、モーガンは検死官に調査させた。彼は死亡状態にあった。モーガンはすぐアーノルドの死体を火葬場に運び、棺に火をつけた。その頃、スコットと心理学者のグブナー博士はメダリオンに全ての謎があると思い、アーノルドの家でそれを探索していた。スコットが2階の一室に入ると、そこにはアーノルドがいた。スコットに母の幻影を見たアーノルドは彼女に襲いかかった。しかし分離された肉体が焼かれていたためにくずれ折れ、そのまま動かなくなってしまった。それはメダリオンによって肉体と精神が分離したために起こった不可解な事件だった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0派手さは無いが、ラストも含めて気持ち悪さは堪能できます

2024年5月25日
PCから投稿
鑑賞方法:その他、TV地上波

サスペンスものっぽいが、ホラー系といえばホラー系か?(当時の宣材では”オカルト”)

刑事たちが連続的に起こる殺人の謎解きをする訳ですが、観ている側としては「コロンボ」状態で、犯人もその動機も、”謎”もほぼ初めから知ってる状態で展開します。

劇中の音楽も必要最小限に抑えられ、全編通して割と静かに進む印象。
日本では、ジム・ハットン主演になっていましたが、本来は警部役のポール・バークが主演なのを、知名度的にあまりに知られていなさすぎたのでこのような扱いになったのでしょう。
主人公の主治医という立場の、相手女優のジュリー・アダムスはこの当時の当作の監督レイ・ダントン夫人です。
レイ・ダントン自身も俳優ですが、活躍は主にTV畑にしてのキャリア。

ジム・ハットン氏は親しみの持てる好印象な優しい顔つきの青年俳優という感じですが、本作では犯罪の疑いの嫌疑をかけられて(冤罪)精神病院に収監されてしまい、その間に病気で危険な状態であった母親を死なせる結果になってしまったことから、それに関わった一連の連中に復讐を切望する青年アーノルド、という暗い役(犯人)を演じています。

女医役のジュリー・アダムスと警部役のポール・バークがあっさりベッド・インしてしまう展開に、何となく安っぽさを感じ得ませんでしたが一応、そこに絡んで青年アーノルドの女医への想いが明らかにされるという展開上のこと故のようですが。

あと、ネヴィル・ブランド氏も出ています。

我が国での劇場公開は、首都圏では「新宿プラザ劇場」という都内でも有数の大スクリーン劇場で1975年12月公開の年末映画でした。
我が国での公開時の原題は『The Kirlian Force』になっていますが、後で『Psychic Killer』に改題されてますね。

しかし、そんなに”超大作”でもなかったのに、なぜか?
1974年7月公開の『エクソシスト』から1年超えてますが、その後の余韻をかっての狙いだったことが考えられますが、タイトルが「完全殺人」じゃあなんだかオカルトっぽいインパクトに欠けてスリラーか犯罪モノのように受けとられますね?

因みに同館では約一年後の1976年10月から『オーメン』が公開され、当時鑑賞していますが、こちらは大スクリーン劇場に相応しく大ヒットとなりました。
ある意味、『謎の完全殺人』も”悪魔”モノでは無いが、犠牲者が次々と趣向を変えた色々な手法で殺されていく、という点においてはこの『オーメン』に先んじているとも言えるかも。

逆に、更に2年後の1978年の大作映画だった『恐怖の魔力/メドゥーサ・タッチ』(The Medusa Touch)は、映画誌などで紹介がなされていて公開を期待したにもかかわらず、何故か未公開の憂き目に。(『オーメン』主演のリー・レミック繋がりもあったのに。)
オカルト+超能力+デザスター、パニック・スペクタクルと人気要素をてんこ盛りにしたような構成で、演技派系の俳優を取り揃えた豪華作品だったのに、「なんで?」となりました。
海外での評判が芳しくなかったようで、8年以上と制作から随分と後になってTV放映されてました。
素晴らしい作品でもなかったものの、劇場スクリーンに映えるようなそれなりに見所はあったので、当時はもっとショボい映画もやったりしていたくらいだったから観たかった。
『謎の完全殺人』よりは遥かに大スケールの国際規模作品だったんですけどねぇ.....
(恐らく、権利料が相当な額だったのでは無いかと推察される。)

因みにジムは、’80年頃から活躍したティモシー・ハットンのお父ちゃんなんですが、そうした息子の活躍を見る前の1979年6月に、45歳の若さで肝臓癌で亡くなっています。
その前の1975年のパイロット版とそれに続く1975年〜1976年のテレビシリーズ『エラリー・クイーン』で主演の探偵エラリー・クイーンを演じましたが、日本での放送は無かったと思います。
参考までに、このシリーズは『コロンボ』制作コンビであるリチャード・レビンソンとウィリアム・リンクによるもので、同じNBCから放送されて時期も被っていますが、『エラリー・クイーン』は23話のみで終了しています。
1975年のパイロット版では、シリーズ版のエルマー・バーンスタイン氏のとは違い、テーマ曲に「NBCミステリームービー」枠だったようで『コロンボ』と同じマンシーニ氏のあれが使われてました。

ジム・ハットンは結構好きだったのに、活躍の機会にあまり恵まれないうちに早死にされてしまい残念で、あまりにも早かった死が悲しかった。
それゆえ、ティモシー・ハットンが出てきた時には感無量に。

母親の仇のようにみなした相手に”特殊能力”で復讐を遂げていくという、悲しい背景の犯人がその能力がアダとなって滅ぼされる、という展開のオチはちょっと(人道的に?)強引ですが、結果的に最後の犠牲者が出る寸前に阻止できたという結果で、良しとするしか無いのでしょう。

その前に”メダリオン”(公開時にそう呼称していた)を取り上げることができてたらもっと良かったのでは?、と思いましたが.....

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アンディ・ロビンソン