劇場公開日 1994年10月22日

「身の丈に合った役を/分不相応な努力は迷惑」ナイトメアー・ビフォア・クリスマス 雨丘もびりさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0身の丈に合った役を/分不相応な努力は迷惑

2020年12月29日
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「ディズニーのアニメータだったころ、ぼくはうるんだデカい目の狐なんか描きたくもなかった!それで、眼球の無いキャラクタでも豊かに感情表現できる方法を考えた。外見が不気味で怖ろしくても、内面はそうじゃないキャラクタを産み出すことに熱中していた。」

そーよ!古今東西すべての犬キャラが束になっても、ゼロの魅力の足元にも及ばないわッ!脚、無いしw。

一番好きなのはブギー親分!声低い人めっちゃ好き。
ただの麻の袋なのにすげーコワい、アイデアの勝利!
中の人もそっくし(褒)。めっちゃ歌巧い。たまんねーっす。一緒に踊りたい。

未だ色あせないオープニング曲の魅力。否、すべての曲が素晴らしい。

原案は1982年にまとまる。
「シザーハンズ」「バットマン」の成功を受けて、原案の版権を所持するディズニーがバートンの申し入れを快諾し、1991年7月から製作開始。
「バットマンリターンズ」の監督を務めながらのバートンは製作にまわり、盟友ヘンリー=セリックに監督を依頼。
とはいえバートンの強い制御下で進められたプロジェクトで、脚本/音楽/演出/編集はバートンの厳しい注文に基付いている。
完成まで約3年。出来上がりにかなり満足しているとか。

【身の丈に合った役を務めよう】
【分不相応な努力は迷惑なだけ】
まぁ卑屈なテーマの映画ですこと、と苦笑いしたけど、バートンが愛読するロアルド=ダールの児童文学を何冊か読むうちに、源流を見つけた気分。

かなりイビツな物語でバランスも悪い。おはなしのまとまりは「コープスブライド」の方が精度高いと思う。
それでも、私の考え方、人格に強~い影響を及ぼしてる映画なので、愛憎ない交ぜに抱く思い入れ深い一本。
初めて見たのいつだったかな.....モノゴコロ付いたときには、この映画は私と共にあった。

私もクリスマスやりたいけどね、可能性を試して、もっと皆に広く影響を及ぼせるキャラになりたいけどね、無理だったし。
サンタクロースが羨ましかったけど、あのポジションも完璧に幸せなわけじゃないって知った。
だから、ま、オバケは黙々とハロウィンやってろって。
飽きても続けてれば何か見えてくるって。
面白がってくれる人も居るって。
そういう、冷笑的な"励ましのメッセージ"が、私にはとっても馴染むんだ。

ツギハギ人形サリーは、女の多面性をつなぎ合わせて一つの人格としてまとめようとするバートンの思想的実験なんだとか。やっぱナチュラルに女性不審だよねw。ま、否定はしますまい。うふふ。

ドイツ表現主義の影響は疑う余地も無いけど、私はゴッホ的な美術感で組み上げられた世界だなと感じる。
主体が熱烈に凝視・関与することで、デフォルメされる世界。パースが狂い、大地がうねり、木々はうずを巻き、現実が変容する。マニエリスムみたいでもあるけど、退廃性よりは作家の興味が強烈だから。
ジャックの独善的な解釈で狂わされる世界。手酷いしっぺ返しを喰らうところまで、まんまゴッホ。

.....残念だけど日本語版がよろしくない。
市村正親さんは素晴らしいし、町長の大平透さんも最高。ブギー親分の小林アトムさんはミスキャスト(T□T)ナゼニ~。
何より、吹替え台本のトンデモ意訳が酷い。
ジャックは町のリーダーであって、"支配者"じゃないでしょ。なんでヨケイな文言入れっかなぁ(噴)、興ざめすんだよね。台無し、ガッカリ!
語感もださいしね。時代のせいかしら。
原語版での鑑賞をおすすめっ!。

雨丘もびり